【1章完結】頑張ってダンジョン攻略したけど失敗した俺……婚約破棄とチーム追放と名家放逐を食らったけど凄まじいスキルの女の子に俺のスキルかけたら最強なのがわかって元パーティーを壊滅させたボスを蹂躙した件

蒼井星空

第1章 トリプルコンボからの大逆転

第1話 婚約破棄とチーム追放と名家放逐

「四鳳院皇一さん、私、九条絵梨華はあなたとの婚約を破棄しますわ」


世界にダンジョンが出現し、人々が魔力を持ってから半年。


俺は実家の財力を駆使して装備をかき集め、ダンジョン攻略に勤しんでいた。

最初にダンジョンに突入した人々の多くはモンスターに破れ、軍隊ですら壊滅したというのに、月日の流れとは恐ろしいもので、今では多くの人がダンジョン攻略に向かっている。


アフリカの哀れな民、一部の独裁国家の徴集兵などによる無謀な突撃の結果得られた情報によるダンジョン攻略という負の歴史の上に成り立っているので素直に称えることはできないがな……。


しかし人類はわずか半年でダンジョンを攻略する術とまでは言わないまでも、武器やアイテムを使った攻略の取っ掛かりを得てきた。


そんな中でこの俺、四鳳院皇一は実家の財力を活用して傭兵を使った攻略を進めてきた。

婚約者である九条絵梨華と共に。


しかし2週間前、無謀な突撃を実行してしまったことで金を使って世界中から集めた総勢200名からなる俺達の攻略部隊は壊滅した。



そんな最悪のタイミングで、ダンジョンが現れて以来、太平洋の真ん中に浮いていた巨大な板が起動し、なんとそこに表示されたのは世界ランキング……


意味がわからなかったが、どうやら個人の強さを表示するものらしい。

ダンジョン登場直後に設立されたダンジョン協会が発行するダンジョンカードに記録された個人の能力や戦闘スキルによって決められるそのランキングが世界のすべてを変えてしまったんだ。


「くっ、なぜだ?」

「なぜ?あなたのランキングですわ。まさか世界36,473,529位……笑ってしまうような残念な戦闘力のあなたと一緒にいたら私まで笑われてしまいますわ」

「くっ……」


そう……俺の順位は低かった。

だいたい世界人口50億人ちょっとのうち2%くらいがダンジョン探索者として登録している現状で考えると、全体の3分の1くらいとはいえ、世界18位だった絵梨華や、部隊の隊長を任せている世界13位の弟の四鳳院竜司とは比べ物にならない……

というかお前たち、強すぎじゃね?


今の世界が量より質を重視した攻略に移っていっているという状況も俺にとっては逆風だ。

俺のスキルはなにせ多くの人を巻き込まないと活きてこない。


「そういうとこで、幸い四鳳院のおじさまもあなたとの婚約を破棄して、竜司と婚約することを認めてくださっているから、大きな問題にはならないわ」

絵梨華はゴミを見るような目で俺を見下しながら、説明は義務だから仕方なくと言わんばかりの抑揚のない声で淡々と語る。



そんな絵梨華の後ろから肩を抱いている嫌らしい笑顔を張り付けた男が俺の弟だ。

「悪いな兄さん。この四鳳院には似合わない粗野な兄さんがここにいれた理由はダンジョン探索の可能性があったから。それがなくなった今、後継者の地位も僕が貰うことになった。とっとと出ていってくれ」


くそっ……



完全に潰しに来やがった。

トボトボと出ていく俺をよそ目に抱き合う2人……


「おい、たらたらせずに早く出ていけよ!」

竜司の声に『死ね』としか思えなかったが、俺にはどうする力もない……。





□一方その頃ダンジョン協会本部にて


「四鳳院と九条は攻略を続けるようだな」

高級な革張りの椅子に腰掛けた男が呟く。


その声に近くに立っていた女性が反応する。

「そうみたい。まぁ世界ランキングの効果が大きかったですね。13位と18位……世界でも最強クラスの戦力がいるチームだと知ってしまったら辞める選択肢はないでしょう」

腰よりも長い黒髪を垂れ流した細身の女性は、少しあどけなさの残る顔を男に向ける。


「おかげであの男が追い出されたようだな」

「すでに確保に向かわせています。彼のスキルが予想通りなら……」



□文字通り確保された四鳳院皇一


なんだ……

何があった……

ここはどこだ?

目が見えない……。

なぜ俺は目隠しされた上に縛られて転がされてるんだ?

なんか喋れないし……これ猿轡か?

しかもなんかあそこがスースーするんだが……えっ?なにこれ?



「えっと、すみません。部下が何か勘違いしたようでして」

女の声がする。

えっと、予想できる俺の状態からしてめちゃくちゃ恥ずかしいんだけど、ねぇちょっとまって何してくれてんの君の部下は?


「ふごーふごー」

くそっ、喋れねぇよ!


「えっ?なんですか?ごめんなさい、凝視できないし近寄りたくないんですがなんですか?」

恥ずかしそうに言うんじゃねぇよ!お前のせいだろ!


「ふごーふごー」

だから、喋れねぇよ!


「勘弁してください。せめてうつ伏せになって!そんなもの見せないで!」

うるせぇよ!なに慌てた声出してんだよ!


「ふごーふごー」

部下が勘違いしたなら早く解けよ!


そこへ渋いおじさんの声が割り込んできた。

「ちょっとすまん、何やってるんだ?可哀想で見てられないから毛布でもかけてあげて」

おぉ、優しい人だ。お願いします。

ん?誰かかけてくれた。あとは目隠しと猿轡を取ってください。


「ちょっとそれ私のブランケット、そんなとこにかけないでくださいよ!もうやだぁ……」

えーと、それは今俺の腰のあたりにかけてくれたやつかな?

うん、この女の人の声からして若そうだし、うん、俺も嫌だよ。何やってんだよ……




そのあと、女の人の泣き声が聞こえる中でようやく拘束から開放された……

まずパンツよこせよ。

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