私いまここ

水の月 そらまめ

私いまここ



何もなく つなぐ手笑顔えがお 走り出す 喝采かっさい拍手はくしゅ 賞状しょうじょう飾る


みんな歩く 線路の上 笑い声 トンと背中 先行きは地獄


どんよりと 曇ったまなこ どくどろみず 犬も食わぬ 復讐の色


踏まれども 枯るることも 許されず 安全圏あんぜんけんで 太陽と水


足浮かせ ここから飛べば めぐる思考 あたま振っては 手首の緋色ひいろ


逢魔時おうまがとき さらうなら今 つれてって 夕日に届かぬ 一歩伸ばした手


触れるなかれ 毒を宿す身 色せる 振りかぬよう れていく実


9年 よく折れなかった また歩く 腐った体は 動かなかった


悪夢あくむ多々たた 縛られる体 体力も 気力もなく ただ朽ちる時間とき


空気はある 息も吸えるが 動けない 息苦しさは 孤独の中に


人間か 妖魔か鬼か ひとりでに 暗闇くらやみと光 全て恐ろしや


手を掴む 父母ふぼの笑顔 罪悪感 この身に価値を 見いだせはしない


手をかざす 枝のような手 臓器気絶 涙そのまま 死にぞこなった


あたたかな 卵のからは もろく 行くべき光 見ずちぢこまる


手をつかむ 熱く燃えた この心 いらないなら ちからありったけ


からやぶる 痛む古傷 ここにいる まだこの世界に まっさらな自分


黒い色 いろどってみて 削ってみた 白くはならない 私だけの色


好きになる どれ好きになる どれ選ぶ 終わらぬ足踏み ひと休み


焦るなよ ゆっくり歩め ひとりでゆけ 手は引かぬぞと 支えてくれる


動けるな 自分に確認 右左みぎひだり 上下じょうげと見た 天日てんぴたかき刻




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

私いまここ 水の月 そらまめ @mizunotuki_soramame

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画