第6話 開戦!!

目の前のスクリーンにはドリームタウンの外の景色――そして選手たちが映っていた。しかしこれは現在の映像ではなく、直前に取られた映像だ。


並んでみるとただでさえチビな姉が一際小さく見える。蓮華は固唾を飲んで映像を見ていた。



『現在選手たちは準備をしております。準備が終わるまで、選手紹介ムービーをご覧下さい』


超人気アナウンサー『凛川 夢子りんかわゆめこ』の声で映像が始まる。


「……変なところで金かけてんなぁ」


廻楽の趣味を感じる人選。それは置いといてだ――ここから大事な選手紹介の映像が流れ始めた。




『エントリーナンバー1。伝説の秘技「蛇龍拳」と伝説の極技「金剛拳」!!相反する2つを合わせた若き天才――[鉄蛇]龍名 合金!!』


――龍名合金。黒い髪をオールバックにしている男。

身長 181cm

体重 89kg



「鍛えたなぁ合金。体重が7キロも増えてる」

「貴方のご飯が美味しいからよ♡」

「えへへ……」


照れくさそうに頭を搔いている。


「ふん。馬鹿みたいに肉を付けおって」

「あれでは脱力しても意味なかろう」

「文句言うなよ老害ども。孫の嫁を褒めてやることもできねぇのか?」

「「あぁ!?」」




『エントリーナンバー2。ヘラクレスとは俺のこと!!生物として必要以上の筋肉を兼ね備えた人間戦車!!――[巨神]エルヴィス・ホール!!』


――エルヴィス・ホール。鋭く研がれたモヒカンの男。

身長 209cm

体重 181kg



「エルヴィス……」

「大丈夫だ。なんせ私たちの子だぞ。世界一の力持ちが負けるわけないだろ?」




『エントリーナンバー3。ロシアが産んだ怪物!!もはやその力は神話の域に達した!!――[ロシアの嵐]アルショム・スミルノフ!!』


――アルショム・スミルノフ。黄色の髪を坊主にした男。

身長 195cm

体重 95kg



「行けアルショムよ。我が祖国のために」

「祖国が絡むと最強……ですからね。アイツは」




『エントリーナンバー4。顔よし!体よし!頭よし!もはやお前は何を持ち得ないんだ!!――[完全体]オ・イジュン!!』


――オ・イジュン。マッシュヘアをした男。

身長 183cm

体重 68kg



「顔は大会最強……だな」

「『強さ』もだろ?」

「はは――違いないな」




『エントリーナンバー5。史上最悪!?数々の拳法家をあの世へ導いてきた地獄からの使者――[殺し屋]魘魅!!』


――魘魅。オレンジ色の長髪をたなびかせている男。

身長 182cm

体重 86kg



「酷い言われようだな」

「事実だから仕方ない」

「これも我ら一族が中国を支配するため」

「今回の大会は踏み台にさせてもらおう――」




『エントリーナンバー6。1日1万本の正拳を打ってきた男!!その強さはまさしく最強!!――[武神]冥王 神技!!』


――冥王神技。白髪が混ざっている髪をライオンのように逆立てている男。

身長 187cm

体重 94kg



「師範の体調は?」

「これ以上ないほど絶好調だ」

「――なら優勝は師範だな」




『エントリーナンバー7。現代社会の異端児!?野生に魅入られた森の番人!!――[野生人]イデア!!』


――イデア。整えられていない不精な長髪をした男。

身長 185cm

体重 102kg



「暴れろイデア……そして全てをぶち壊せ……!!」




『エントリーナンバー8。もはや素手ではなく凶器!!全てを切り裂く斬撃使い――[鎌鼬]クシィ・ラム!!』


――クシィ・ラム。髪を斜めに流した男。

身長 180cm

体重 70kg



「お兄ちゃん勝てるかなぁ……周りみんな強そうだよ……?」

「馬鹿言え。アイツが俺らの期待を裏切ったことがあるか?」

「――ない!」

「そうだ。だからあいつは最強なんだ!」




『エントリーナンバー9。蹴ってよし!殴ってよし!もはやこの俺には死角なし!!――[鉄人]ブレイク・ブレスレット!!』


――ブレイク・ブレスレット。ツーブロックの銀髪の男。

身長 189cm

体重 87kg



「最強……か。こいつに良く似合う言葉だな」




『エントリーナンバー10。元寇の再来!!次に神風を吹かせるのはこの俺だ!!――[二代目雷電]鳳凰ほうおう!!』


――鳳凰。相撲特有のちょんまげをした男。

身長 203cm

体重 161kg



「ぶちかませ鳳凰!!優勝したら死ぬくらいちゃんこ鍋を食わしてやるよ!!」




『エントリーナンバー11。齢80歳!?だからどうした!!こちとら生涯現役だ!!――[生きる伝説]栗原 葉流!!』


――栗原葉流。白髪の男。

身長 159cm

体重 42kg



「体……持ちますかね」

「いつ死んでもおかしくないからな……」

「――なに弱気になってんだ!!」

「え……?」

「これから見るのは伝説の終止符じゃない――伝説の始まりだ!!」




『エントリーナンバー12。人間を44人ぶっ倒した!!目の前に立ったなら恐竜すらKOしてやる!!――[炎の男]フランシス・パターソン!!』


――フランシス・パターソン。スキンヘッドの男。

身長 186cm

体重 85kg



「魅せてやれフランシス。本物のボクシングってやつを――!!」




『エントリーナンバー13。現代最強は!?人間最強は!?霊長類最強は!?生物最強は!?答えは全てこの男!!――[魅せる男]フエル・トリコ!!』


――フエル・トリコ。パンチパーマのようなくせっ毛の緑髪ロングヘアの男。

身長 193cm

体重 102kg



「「「「「「フエル様ーー♡♡♡」」」」」」




『エントリーナンバー14。魅せる拳法?ふざけるな!!実戦こそが中国拳法の本領発揮だ!!――[舞い散る花弁]楊 詠春!!』


――楊詠春。三つ編みを後ろに垂らした男。

身長 177cm

体重 96kg



「師範……お願いします……!!」

「我らの友の……仇を……!!」




『エントリーナンバー15。立ち技最強とは俺だ!!祖国タイでは神と同格で語られるほどの強さ――[ムエタイの神]ブラカーン・バックサック!!』


――ブラカーン・バックサック。七三分けの黒髪の男。

身長 190cm

体重 81kg



「パパー!頑張れー!」

「見ときなアート!パパが最強になる瞬間を!!」




『エントリーナンバー16。一度絡まったら最後!!誰も抜け出せない蟻地獄の擬人化!!――[メビウスの輪]フィクソン・ジェラシー!!』


――フィクソン・ジェラシー。ドレッドヘアーの男。

身長 178cm

体重 84kg



「こんな遊び。さっさと終わらせてくれよ」

「いやいや続いた方がいい。この美味いポップコーンが食い放題だからな。ジュースも美味しいし」




『エントリーナンバー17。裏格闘家の最高峰!!バーリトゥードなんでもありならばこの男に勝る者なし!!――[帝王]紅 剛毅!!』


――紅剛毅。赤髪の刈り上げの男。

身長 171cm

体重 70kg



「最高峰……最強、の間違いね」




『エントリーナンバー18。エジプトを暗躍する影の貴公子!!殺人術なら右に出る者なし!!――[死の魔術師]ファライ!!』


――ファライ。絹のような黒い長髪をした男。

身長 183cm

体重 71kg



「勝て……絶対に勝てファライ!!」

「燃えてますねぇ――まぁの命令だから仕方ないか」




『エントリーナンバー19。戦場を生身一つで生き抜いた軍神!!相手が人型なら神様だってぶっ倒してみせる!!――[戦人]グレゴリー・ウィンレイ!!』


――グレゴリー・ウィンレイ。茶髪を坊主にした男。

身長 195cm

体重 110kg



「あいつにとってこんなものは子供の遊戯……すぐに決着はつくだろう」




『エントリーナンバー20。天を穿つ最小の矛!!全てを薙ぎ倒す様はまるで小さな巨人!!――[韋駄天]黒木 花音!!』


――黒木花音。長い髪を巻き直し、馬の尾のように揺らりと揺らめかせている。

身長 154cm

体重 44kg



「姉ちゃん……」

「蓮華さん――師範が負けるイメージが湧きますか?」

「え……?」

「今まで見た相手に師範が負けるイメージが湧きますか?」


考える。考える。考えるが――湧かない。蓮華の頭には花音が負けるイメージが出てこなかった。


「湧かない……」

「そうです。師範は負けません。師範は――最強なんです!」

「最強……そうだよな。姉ちゃんは――最強だ!!」






『以上20名で行う壮絶なバトルロイヤル!!優勝するのは果たして誰かぁ!?』


まるでサウナにでも入ってるのかと錯覚するほどの熱気。せっかくの冷たいドリンクが暖まろうと、この熱気を下げることはできない。ボルテージを抑えることなどできるはずがない。


これより始まるのは『最強』を決める戦い。誰しもが一度は憧れる『最強』を決める戦いなのだ。これから始まる戦いは、例え火山が噴火しようとも目を背けられない。背けてはいけないものだ。


画面の暗闇は一層増す。流れることない無言の音楽から――暗闇が明ける。


迦神杯バトルロイヤル。開始の合図――。

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