第4話 ルール説明
「――――やめぃ」
――声は大きかった。マイクを使っていたから当然だ。だがマイク程度では掻き消えるほどに騒いでいたはずだった。
なのに音はピタリとやんだ。今にも戦おうとしていた花音とファライ、あと変なペイントの男もメドゥーサに睨まれたかのように動きを止めた。
声の主には強さとは違う『相手を屈服させる力』が備わっていたのだ。だから動けない。だから動かない。
「義真廻楽。君たちを集めたのはこの私だ」
いつの間にかできていた壇上。そこへ立てかけられたマイク。
今にも折れそうな腕
今にも折れそうな脚
今にも折れそうな体。
そんな体。そんな死に体で廻楽は立っている。いつでも。この場の誰でも倒すことができよう。できるはず――だ。
なのに廻楽の声は人々を従わせられるほどのオーラ、俗に言うカリスマというものを放っていた。老いてなお枯れず、むしろ成長していくモノを誰しもが感じれずにはいられなかった。
「昂る気持ちは分かる。だが少し待って欲しい。もうすぐで最高の戦いを味あわせてやる」
静まり返って数秒後。廻楽が口を開いた。
「まずはこれから戦う者たちよ、前へ」
声に言われるがまま前へと。何かを言おうとする蓮花の肩をポンと叩く。
「まぁ任せて。あんたのお姉ちゃんは超強いんだから」
「……おう」
男に女、肌の色も身長もガタイも違う20人が並んでいる。風貌も様々。歴戦の猛者のような顔や、戦いを経験したこともなさそうな幼い顔、般若のような恐ろしい顔をしている者もいる。
全員かなり強い。隣にも近くにも強い奴がいる。ワクワクするなと言う方が無理だ。ポーカーフェイスをしている周りの人達も心の中では満面の笑みを浮かべているはず。
「うむ……流石だ。我ながらよくこのメンツを集めたものだ」
闘争心をありありと見せつけられる廻楽は徐々に若返ってるように見えた。
「それでは早速ルール説明をおこなう」
指を鳴らすと黒服がゾロゾロと闘技者の前へ歩いてきた。
「今から君たちに配られる物は『迦神リング』というものだ。中に入ってからは、これを常に付けててもらう。外したらルール違反で失格。故意じゃない場合は一時中断だ」
真っ黒な腕時計のようだ。しかし重そうな見た目に反してとても軽い。これなら付けていても違和感を覚えないだろう。
腕に付けて平たい部分に触れると――目の前に青い画面が映し出される。
「そのリングにはマップ機能、ダウン判定機能、ランキング機能が付いてある。説明の関係上、先にマップ機能を説明させてもらう」
青い近未来的な画面には2つの項目が書かれてある。説明の通りにマップ、ランキングである。
マップ機能は単純明快。このショッピングモールのマップを見ることが出来る。さらに内蔵されたGPSで他選手の居場所も知ることが可能だ。
「次にダウン判定機能。これは装着者の心肺機能や脳波を観測し、ダウンもしくは気絶を判定する機能だ」
10秒間ダウンすれば敗北判定。脱落となる。ちなみに10秒カウント機能も付いているので審判要らずだ。
「ちなみに反則は1つ『殺人』だけだ。目潰しや金的、喉への攻撃も全然アリだ。存分に技を使え!」
反則は実質無し。それに嬉しさから震える者が数人。
「そして相手をダウンさせた者に1ポイントが付与される」
「……1ポイント?」
1ポイント。大会名の通りにバトルロイヤルでポイント制なのを闘技者たちは疑問に思った。
「そう。ポイントだ。相手を倒す度に1ポイントずつ付与されていく。――君たちは封筒の紙を見ただろう。疑問に思わなかったか?最低1000億というところに」
――全員が気がついた。
「そうだ――ポイントはそのまま賞金となる。1ポイントは1000億。例えば5ポイント持って優勝した場合、5000億の賞金となる!」
最低1000億。倒せば倒すほど金は増えていく。なんと夢のある話なのだろう。だがこの場にいるのは戦いに飢えた者たち。金はそこまで興味は無い――1人を除いて。
「ランキング機能はポイントの多さ順を表したものだ。ちなみにポイントが多いとマップ機能でよく目立つ。要するに狙われやすくなる。……まぁ君たちからすれば嬉しい限りだろうが」
リングの説明は終わり、残った軽い説明へと入る。
「ショッピングモール内の物は何を使っても良い。食べ物を食べてもいいし、飲み物を飲んでもいい。全てタダだ。しかし物を戦闘に使うのは禁止だ。あくまでも己の肉体と技で戦ってもらう。ただし壁や地面に叩きつける、というのはありだ」
これまたシンプルながらありがたいもの。実質食べ放題、飲み放題。そんな余裕があるのなら、だが。
「当たり前だがショッピングモールから出るのはルール違反で1発アウトだ。あと映画館も進入禁止だ」
「ルール説明はこれまで。何か質問は?」
――特にないようだ。
「――ふむ。では選手以外の者たちは黒服の誘導に従って映画館へ向かってくれ。入る時は持ってきたチケットを忘れずにな」
選手以外は映画館で大会を見るようだ。大画面で大会の様子を見る……しかもタダ……贅沢の文字に偽りは無さそうだ。
「……姉ちゃん」
門下生に介抱されながら、蓮花は人の波に飲まれていった。
「さて――」
残った20人。――次に出る言葉は誰もが分かっていた。
「――楽しい楽しい戦いの始まりだ。面白い戦いを期待しているぞ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます