起き上がれろくでなし、目の前の映画を見ろ
波止場 悠希
起き上がれろくでなし、目の前の映画を見ろ
生き死にの反動を持ちシネマを見うつくしきものの墓残す
名画座のロビーで本を読む人の暗い面持ち消灯に似て
君の目はキャメラにも似た精確さ瞳にうつるすべては名画
声色が変わるほどには言の葉がもつれもつれてアフレコにして
繰り返しVHS巻き戻しすり切れ気味の恋の哀しさ
君が持つレフ板光り陽のもとに誤魔化していたこころも透けて
二割引あちこちにある花を買い白黒の世をパートカラーに
君歩くゴジラみたいな劇伴が怒る心にそっと花束
恋の音リップシンクが合わなくて今このときを再編集して
死ねばいいせりふかまこと分からずにあの日逃したマチネのシネマ
のあこがれ 編 集しては 省み て 何度 も香る しゃなりと、君が
あの頃の雨と恋とを盗まれてディゾルブしつつ記憶は乾いて
レイトショー客席がらんぽつねんと世界は僕の手の中に
懐かしいSFを観た千年紀
死に際のトレンチコートの遺言は「畳んでしまい、リメイク無しで」
そこここに端役をもらい生きながらそれでも草は萌えて花咲く
リュミエール叫んでみても暗がりに誰も立たないエンドロールだ
終映後魔法が解けるそれまでに勇気をおくれ西部の風よ
空想は空一面にgullが飛びロングショットで弾けてしまえ
映画の欣求が鳴り響き僕らはいつであれ銀幕を見つける
起き上がれろくでなし、目の前の映画を見ろ 波止場 悠希 @grabit
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