第2章〜恋の中にある死角は下心〜⑯
脚本チェックに対する演劇部メンバー全員の期待がということもあり、
今日は、このあとの活動の予定がないという
花屋敷駅に続く学院専用の通学路は、下校時間より少し遅めの時間のためか、生徒の姿はまばらだった。
「仲良く帰るんだよ〜!」
という上級生部員たちの言葉を受け流した彼女に、
「なんだか、先輩たちに変な気を遣われてるみたいなんだけど……ボクが演劇部に来て迷惑じゃなかった?」
と、恐る恐るたずねる。すると、彼女は、
「どうして、そうなるの? 私が、
と、意外そうな表情で答えを返してきた。
「でも、なんだか、
「それは、悪く考えすぎ……さっき、先輩たちも言ってたけど、演劇部に男子が来ることが珍しいから、みんな、あんな風に変なテンションになっちゃっただけだよ。こっちこそ、ゴメンね。脚本チェックをお願いする立場なのに、変なことに巻き込んじゃって……」
「いや、ボクの方は全然!」
そう返答した
(
と言いたくなる気持ちを抑えて、相手に変に思われないように、少し話題を変えようと考える。
「でも、
「あぁ、演劇部の先輩たちは、中等部の頃から一緒に活動しているから、それなりに付き合いが長いんだ。みんな活動に熱心で良い先輩たちなんだけど……今日みたいに、たまに外部の人が来ると、はしゃいじゃうのが困ったところかな……」
苦笑しながら返答する
二人は、そんな会話を続けながら、学院生専用の改札口を通り抜け、花屋敷駅のプラットホームに到着する。
「ボクの家は、
「私も同じだよ! シンちゃん……
「そうなんだ! 偶然だね!! じゃあ、もう少し話しを聞かせてもらって良い?」
(どうして、
と疑問に感じつつも、彼女と会話を続けられる嬉しさから、自分の中の些細な疑念を脇に置くことにして、別のことをたずねる。
「今回、コピーをもらった台本のあらすじを教えてくれないかな? あらかじめ、内容を把握している方が、指摘をしやすいと思うから……」
彼の質問に、
「今回の劇『わたしの
「へぇ、面白そうな内容だね!」
「でしょう! 先輩たちも、気に入ってくれているんだ。実は、ネットフリックスで配信されてる海外の映画を参考にしてるんだけどね!」
「『マイ・フェア・レディ』は、下町の花売り娘が、上品な言葉と衣装を着飾ることで、上流階級の仲間入りをするっていう女子の密かな願望を叶える部分があると思うんだけど……男子には、そういう感じの上昇志向ってあるのかな? っていうのが、どうしても、気になるんだよね……」
「そっか……」
と、相槌を打ちつつ、
(なるほど……たしかに、多くの男子にとっての向上心としては、少しズレている感じもするな……
ただ、彼には、他にも気になることがあった。
「ねぇ、
「そ、そんなことはないですのだ……」
と、おかしな敬語で返答する。
「いや、その反応、めちゃくちゃ怪しいから!」
「みなさま、間もなく2号線に電車が到着します。危険ですので、黄色い点字ブロックの内側にお下がりください」
その声に合わせて、
「ほらほら、危険ですので、点字ブロックの内側にお下がりください」
と言って、肩を掴もうとする
そして、ホームに滑り込んできた列車に乗車し、緑色のフカフカした座席に座ると、
「冗談だよ、ホントに普通の男の子の意見が聞きたいだけだからさ……お願い、協力して!」
と言ってから、両手を顔の前でパチンと合わせる。
普段は、感情をあまり表に出さないタイプの
「わかったよ、
と、返答する。すると、彼女は、
「本当にありがとう! ねぇ、もし良かったら、二人きりで会って、感想やアドバイスを聞かせてくれない?」
と、彼が予想もしなかった申し出をしてきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます