第2章〜恋の中にある死角は下心〜⑮
保健医の
上級生の
それになにより、入学式からこれまで、お世話になりっぱなしだった彼女から頼られた、ということに、
文化系クラブの部室が並ぶ校舎に移動し、演劇部の部室のドアをノックすると、中から「は〜い」という声がして扉が開かれる。
部室では、ドアを開けてくれた中に招き入れてくれた
「男子が部室に来るのって、何年ぶりだろ?」
「去年は、こんなことなかったですよ!」
「
「このまま、演劇部に勧誘しましょうよ!」
「先輩たち、はしゃぎすぎですよ!
下級生の
「は〜い、ごめんなさ〜い」
と謝罪し、形ばかりの反省の態度を示す。
「
「実際、私たちが一年のときに居た菊池先輩が卒業してから、もう二年以上、男子の部員は入部してないからね〜」
と、ため息をつく。
「劇中で男性役を増やすためにも、そろそろ、男子に入部してほしいですよね〜」
二年生の
「あの……保健室の
すると、彼を部室に呼んだ
先輩部員たちが囲んでいるテーブルには、台本らしき紙の束が置かれていて、
「来月、演劇部が公演するお芝居の台本が完成したんだけど、登場人物として描いている少年の心理描写に、ちょっと自信がなくて……『男の子の気持ちは、男子に聞くのが一番だ』って先輩たちが言うから、
彼女がさらに付け加えたところによると、昨日の喫茶店での生徒会長と
「やっぱり、少年の心理は、男子に聞かないとね〜」
ニマニマと笑みを浮かべながら語る高橋部長の表情には、やや不安を感じたものの、前日から良い雰囲気で話すことができているという手応えを感じている
「お役に立てるかはわかりませんが、ボクで良ければ……」
と、彼女たちの依頼を快く引き受けることにする。
「心強い味方ができて、良かったね〜
二年生部員の
「先輩たちが、どんな想像をしてるか知りませんけど、そういうことはありませんから。第一、
最後は、ジト目で自分を睨むように問いかける隣のクラスの委員長の言葉に対して、
「いや、だから、アレはそういう意味で、あのヒトを見てたんじゃなくて、ただ、こんな場所に外国のヒトが居るなんて珍しいと思ってただけなんだって!」
「ふ〜ん、どうなんだか……」
男子生徒の必死な弁明をにべもなくあしらう
「ほほう〜、コレはコレは……」
と、ニマニマと笑いながら観察する。
「解説の今井さん、どう思われますか?」
高橋部長が話しを振ると、同じく三年の今井副部長が冷静な口調で応じる。
「男子に対しては、感情を表に出さずに対応してきた
「解説ありがとうございます。これからの二人の言動は、要注目ですね! 現場からは、以上です」
即興で始まった二人の寸劇に対し、下級生が、やや憤慨したような声をあげる。
「演劇部だからって、急に
「先輩、スポーツの実況や解説なら、『現場からは、以上です』なんて言わないですよ。もう少し、設定を練り込んでください」
と、ダメ出しを行う。
上級生の即興劇にも臆せずモノ申した一年生に、演劇部員たちは少し驚いた表情を見せたあと、フフフと不敵な笑みをもらすのだった。
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