第2章〜恋の中にある死角は下心〜⑭
週が明けた月曜日の放課後――――――。
「なるほど……私の助言がどれだけ効果を発揮したかは別にして、ともかく、無事に帰ってこられたようで、何よりだ」
養護教諭の
「しかし、気になることがあるな……
懸念するような口ぶりの
「すいません……真中さんや
「そうか……まあ、仮に、リリムたちをつけ狙う存在が近くにいたとしても、簡単に尻尾を掴ませるような相手ではないだろう。キミが責任を感じる必要はない」
養護教諭のその言葉に、
ただ、やはり、前日に色々なことを語り合った二人の女子生徒の身たちが、危険にさらされているということは、彼としても気にせずにはいられない出来事ではある。
「あの……もし、ハンターの人たちがあらわれたら、どう対処すれば良いんでしょうか? リリムの人たちにも、なるべく穏便に暮らしててほしいと思っているんですけど……」
「おっ、どうした? リリムたちへの対抗策として、
自分の言葉を受けて、少しばかり茶化すように返答してくる
「いえ……昨日、話していて
「そうか、そうか……そうして、相手のことが理解できただけでも、彼女の誘いを受けた甲斐があったな。どうだ、
彼女の言う二つ目の案というのは、『リリムたちを自分に惚れさせて魂を奪う気を失わせること』だ。
どこまで本気なのかはわからないが、さっきとは異なり、真顔でたずねてくる養護教諭の言葉を男子生徒は、
「いやいやいや! だから、それだけは無理ですし、無茶ですって!」
と、すぐに否定して、その可能性を打ち消そうとする。
「そうか? 私としては悪くないアイデアだと思うのだがな……実際、生徒会長の
「会長さん、今日は色々と貴重な経験が楽しかったです。ありがとうございました」
「こちらこそ、ありがとう針本くん。かねてからの自分の夢が叶ったうえに、まさか、こんなに嬉しいプレゼントまでもらえるなんて、思わなかった。ただな……」
「?」
「せっかく、こうして話せる仲になったんだ。私の要望のついでと言ってはなんだが、その『会長さん』という他人行儀な呼び方を変えてはくれないだろうか?」
「え〜っと、それでは、なんと呼べばよいですか?
「いや、こうして、二人で語り合うときは、ファースト・ネームで呼んでくれて構わない」
「そう……ですか。会長さんが、そう言うなら……
「キミのことも、
と、たずねてきた。
「ボクの方は、なんと呼んでもらっても、一向に構わないですよ」
彼が、そう返答すると、上級生の女子生徒は、より一層、嬉しそうな表情で語る。
「それでは、キミのことをファースト・ネームで呼ばせてもらうことにしよう。これから、よろしくな、
彼は、異性の表情の変化や機微について、敏感な方ではないのだが、この時の
そんな記憶を頭の片隅で思い出していると、
「そうだ! 今日は、
と、声を上げたのにつられて、彼の意識は、保健医との会話に戻った。
「なんですか? ボクに、伝えたいことって……」
「一つは、出張のこと。今週末から、研修会に参加するため、私は首都圏の方に
そう言って、
そこには、スマートフォンの電話番号が書かれていた。
「わかりました。これが、一つ目ということは、他にもあるんですか?」
メモを確認した彼の問いかけに、「あぁ」とうなずいた養護教諭は、二つ目の伝達事項を伝える。
「もう一つは、
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