第2章〜恋の中にある死角は下心〜⑫
下級生のストレートな質問に、
「私が、キミを求めるのは――――――そうだな、あえて言えば、最初にあった時の
「
どんなことでも、理路整然とした受け答えをすることが多い彼女としては珍しく、漠然とした返答を意外に感じた
「いや、曖昧な答えになってしまって、申し訳ないとは思うんだが……私たちリリムは、種族特有の特性が発現する時期の個体差が大きくてな。おおむね、十代のうちに能力が覚醒するものなのだが……私の場合は、能力の発現が一般より少々遅めで、つい数ヶ月前に覚醒し始めたばかりなんだ。だから、こうして、異性の
「そう、だったんですか……」
彼女の口から語られる思いがけない答えに、彼は、この生徒会長を務める上級生に対して、急に親近感のようなものが湧いてきた。
「リリムは、それぞれ、自分好みの味覚とニオイを持っていて、『ターゲットになる相手は、
そう語る
そんな彼女の様子を目の当たりにした
「あの……それは、恥ずかしいことなんかじゃないと思います! ボクも、女子と話すのは、ずっと苦手だったし……いまも、こうしてお話ししてる間も、会長さんに不愉快な想いをさせていないか、気になってるので……会長さんは、ボクと話していてつまらなかったり、イヤな想いをしていませんか?」
自身の経験を踏まえているからなのか、いつしか、彼は、必死な表情で彼女に語りかけていた。
そんな下級生男子の様子が気になったのか、上級生の女子生徒は、ふたたび、真剣な表情になったあと、テーブル越しの彼の想いを受け止め、穏やかな表情を浮かべ、微かな声でつぶやく。
「ありがとう、
その声は、目の前の男子には届かなかったのか、彼は、
「えっ? なんですか?」
と、問いただす。
「私は、こうしてキミと話しているのは、とても楽しい時間だと感じているよ。密かに抱いていた夢のとおり、素敵な時間を過ごさせてもらっている」
そんな
「ボクと話すのが楽しいってホントですか!? 女子に、そんな風に言ってもらえたのは、初めてだから……めちゃめちゃ嬉しいです!」
その瞳には、うっすらと涙すら浮かんでいる。
「そうか……私は、キミの
と言ってから、クスクスと楽しげに笑い声をあげる。
明るい表情を取り戻した生徒会長の軽いジョークに、少し慌てながら
「いや……責任とかは、考えてもらわなくても大丈夫です」
と、真面目に答える
「表情がコロコロと変わって、本当に面白いな、キミは……それより、せっかくのフレンチトーストだ。冷めないうちに食べてしまおう」
生徒会長のその言葉には、
店主が気を利かせたのか、取り分け用に提供された二枚の小皿に、二人は、ナイフとフォークで切り分けたバゲットのフレンチトーストを切り分け、すぐに最初の一切れを口に運ぶ。
バケットをほおばると、「ふわっ」「とろっ」とした食感が口に広がる。
つけ合わせのホイップクリームは、さくらんぼのリキュールを使用しているのか、チェリーの微かな甘味と香りが、ほのかにただよう。
さらに、ブルーベリーなどをぜいたくに使った特製のベリーソースは、さわやかな酸味と甘味が感じられ、バターをたっぷりと使ったトーストと、ピッタリの相性だった。
「美味しい! ホイップクリームもベリーのソースも、パンの風味とバッチリ合っていて……スゴく……スゴイです」
感激のあまり最後は語彙力が怪しくなった
「そうか……キミにも、この味を気に入ってもらえて、私も凄く嬉しい」
と、微笑んだ。
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