第2章〜恋の中にある死角は下心〜⑩
上級生と同級生、二人の女子生徒から、武道場の入り口付近で、観光客風の外国人女性に目を向けていたことを
その視線に気付いた
「済まない! 私としたことが、キミたちがコーヒーを飲み終えていたことに気が付かなかったとは……ナミさん、二人におかわりを頼む」
店主と知り合いらしい生徒会長の一言に、先に反応したのは、
「そんな……おかわりをいただくなんて、悪いですよ、会長。それに、私このあと、演劇部の打ち合わせがあるので、学院にいかないといけないので……」
彼女は、そう答えながら、チラリとテーブルに置いていたスマートフォンの待ち受け画面の時計に目を向ける。
「そうだったのか……今日は、忙しいところに、
「いえ……こちらこそ、今日は素敵なモノを見せてもらったと思います。演劇部のみんなにも、今日の会長の雄姿を伝えておきますね」
と返答して、財布に手を伸ばす。
すると、生徒会長は、下級生を制するように言った。
「いや、今日は、
「そんな……それは、申し訳ないです」
「いやいや、ココは、私の顔を立てると思って……」
二人は、そんなやり取りをしたあと、結局、
「ところで、
唐突に話しを振られたため、
「いえ、ボクは、特に予定はありませんけど……」
と、
その返答はすなわち、
そして、それは、女子との会話に苦手意識を持つ
(同じ学年の
そんな、彼の心のうちをよそに、
「それなら、キミには、もう少し付き合ってもらっても構わないかな?」
彼女の笑顔にほだされたわけではないが、いまさら、すぐに喫茶店を後にしたいとも言えず、彼は、
「はい……ボクで良ければ……」
と、遠慮がちに答える。
その返答には、
「
まるで、保護者か、実の姉にでもなったような同級生の発言に、
「ちょっと、ボクを子供あつかいしないでよ!」
だが、相手は、自身の発言は間違っていないという信念があるのか、澄ました表情で
「あら……? ちゃんと、自分の身を守れないから、そう言われるんでしょ?」
と反論して、アッサリと会話を終わらせる。
そんな下級生の会話を聞いていた
「ナミさん、追加注文は変更だ。彼のおかわりと、キリマンジャロをもう一杯。それと、名物のフレンチトーストをお願いして良いかな?」
と、オーダーを行った。カウンターからは、先ほどと同じ様に、「は〜い」という返事が返ってくる。
「会長、ごちそうさまでした。また、今度お礼をさせてください。それじゃあ、
そう言って、喫茶店をあとにする
追加オーダーした品が、テーブルに到着すると、学院では生徒会長を務める
「美味しそうなフレンチトーストですね!」
国内でポピュラーな食パンを使ったものとは異なり、バゲットを使用したトーストを目にした、
「キミは、甘いものが好きなんだな」
そして、彼女は、はにかむような表情で、
「これで、今日は私の密かな夢が二つも叶った」
と、小さくつぶやいた。
その声は、微かなものだったが、
「それは、良かったですね! 会長さんの密かな夢って、なんなんですか?」
「聞こえてしまったか……なら、隠しだてしようとしても仕方がないか……。私が密かに願っていたことは、カワイイ後輩男子に、
そして、彼女は、最後にこう付け加えた。
「キミは、リリムの私が、こんなことを言うと、意外に感じるか?」
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