第2章〜恋の中にある死角は下心〜⑦
放たれた矢は、28メートル先の的の中央付近に、見事に突き刺さった。
「おぉ〜」
彼自身も、
ただ、彼らが初手の的中の余韻に浸る間もなく、競技は進む。
五人一組のグループの最後の
ふたたび、息を呑むように見つめる
二度目の的中をその目で確認すると、今度は、
弓から発せられる
最初の二本に続き、三本目と四本目の矢も見事に的中させた
さらに、その右足を踏み出して退場口へ向かう
退場口の手前、弓の上部にあたる
その後、身体の向きを変えた彼女は、最後は右足で敷居をまたいで退場していった。
「
武道場前のフロアでは、
「
周囲の妨げにならないような声量で、
「観覧ありがとう。二人の前で、どうにか恥をかかずに済んだようだ」
やや砕けた調子で語る口調からも、彼女の意識がプレッシャーから解き放たれていることが感じられた。
「四本全部が的に当たるなんてスゴイですね!」
「ありがとう、
このあとの予定まで、まだ時間に余裕があった二人に、その誘いを断る理由はない。
彼らは、上級生の誘いに応じて、指定された
そんな彼らとすれ違うように、肌が白く美しいブロンドをまとったサングラス姿の女性が、武道場のフロアに入ってきた。
「オー! ジャポネノキュウドウジョウハ、ファンタスティックデスネ〜!」
白のTシャツとジーンズというラフな姿ではあるが、それだけに、本人のスタイルの良さは隠しきれない。
(スゴいスタイルだな……やっぱり、外国のヒトは、色々とスゴい……)
「イテテテテ!」
思わず声を上げる彼に、張り付いたような笑顔で、目は笑っていない
「ナ・ニ・を・見・て・る・の・か・な? 針本くん?」
と、耳たぶをつかんだまま、声を掛けてくる。
武道場の内装に珍しさを感じているのか、スマホのカメラで、パシャパシャと写真を取り続ける女性を視界から外し、
「い、いや……外国の女の人が、こんな場所に居るなんて、珍しいと思ったから……」
と、必死になって理由を答える。
そんな騒動をよそに、袴姿のままの
「ご婦人、場内では、まだ
「オー! スクーシー! ワタシ、マナー違反デスネ〜。気ヲツケマス!」
ブロンドの女性は、
「グラッチェ! ご対応に感謝する」
どうやって相手の言語を判断したのか、
「キミたちも、お静かに頼むよ」
と、苦笑しながら、やんわりと注意する。
「はい……」
「すみません……」
身を縮めながら、謝罪する二人の返事にうなずくと、生徒会長は言葉を続ける。
「では、二人とも、ロアロアという店で待っておいてくれ。市役所通りの道沿いにある店だから、すぐにわかると思う」
「わかりました」
と、声を揃えて返事をしてから、武道場をあとにする。
スポーツセンターまでの来た行きの道のりとは違い、ズンズンと無言で駅までの坂道を歩いていく
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