第1章〜初恋の味は少し苦くて、とびきり甘い〜⑨
「いや、彼にちょっとしたテストをしていただけだ。そう怖い目で睨むな、
そして、保健医と同級生が互いにファースト・ネームで呼び合っていることに気づいた
「名前で呼んでいるということは、
と、たずねる。
「あぁ、
なるほど――――――。
入学初日に、高等部までの道案内をしてくれた彼女なら、信頼を置けるかも知れない。
まして、
そんな風に考えた
そのため、前日に続いて、お世話になることを申し訳なく思いながらも、
「
と言って、握手を求めるように、彼女に対して右手を差し出す。
だが、知り合ったばかりの同級生女子の反応は、
「
同級生女子の取り付くしまもない態度に、差し出した手を慌てて引っ込めながら、謝罪する。
「ご、ゴメン……できる限り、気をつけるようにするから……」
そう言葉にしつつも、
(あれ……? どうして、ボクは謝ってるんだ……?)
と疑問に感じ、自身の置かれた立場の理不尽さに、今さらながら、
ただ、そのことを直接、口に出すことは遠慮して、もうひとつ、自分の中で疑問に感じていることを保健室にいる二人に問うてみる。
「あの……どうして、ボクは、彼女たちのターゲットにされているんですか? 自分で言うのも虚しいけど、女子にモテるわけじゃない……というか、どっちかと言えば、ボクは女子と話すことが苦手なのに……」
おそらく、
「
恋愛経験という思春期の人間にとっては、あまり他人に触れられたくない事柄ではあるものの、自分の身に危険が及んでいることに加え、
「いや……ボクには、そういう経験は無いです」
と、正直に自身の認識を述べる。
その彼の言葉に、
ただ、そんな二人の反応を気にする様子もなく、養護教諭は、淡々と言葉を続ける。
「そうか、やはりな……最近の高校生の恋愛事情は詳しくわからんが……高校生になるまで、恋愛感情を抱いたことがないというのは、それだけ貴重な存在だと言えるかも知れない。その上で、さっき私がキミに触れたときの
落ち着き払った様子で語る
その言葉におののく男子生徒に対して、保健医は、さらに言葉を続けた。
「彼女たちは、自身がターゲットと定めた相手に対して、自分を印象付けるように、なんらかの小さなアプローチを始めることが多いらしい。まあ、一種のマーキングというヤツだな……最近では、SNSなどを通じて、ターゲットに近づくリリムも多いと聞くが……」
養護教諭が、そこまで語ると、青ざめた表情の
薄いイエロー、薄いブルー、薄いピンクと合わせて、合計四通の封筒を確認した
「私が言うのもなんだが、この学院の生徒は、ずいぶんと古典的な手段を取るんだな……」
保健医の言葉に、「それな!」と心のなかで同調した二人の生徒は、無言でうなずくしかなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます