第1章〜初恋の味は少し苦くて、とびきり甘い〜②
彼が、女子との会話が苦手な理由は、引っ越してくる前の中学生時代、友人の付き合いで参加した他校の女子とのコンパのような集まりで、こんなことがあったからだ。
「このあいだ京都に行ったんだけど、たい焼き屋さんがあってさ。あ、
ダラダラとオチが見えない話しを続ける他校の女子のトークを、最後まで我慢して聞いていた
「その話し、オチはまずまずだけど、前半の部分、いらなくない?」
と、彼女の語り口を論評するような発言をしてしまった。
そして、その瞬間、ムスッとした相手に、
「はぁ? 私のトークを採点してなんて、頼んでないんですけど?」
と、痛烈なカウンター・パンチを喰らい、以後、その会合は盛り上がらないままお開きとなり、終了後の帰宅時には男子一同からも、冷たい視線を浴びることになってしまった。
(女子も『人志◯本のすべらない話』が好きなら、ちょっとは、トークに必要な緩急とか、
こうした考えが、
(とにかく、穏便に……女子との会話は、作り笑いで乗り切ろう……)
中学生時代の失敗以来、そう考えるに至った彼だが、新たに迎えた高校生活は、
◆
「ねぇ、
高等部の入学式が行われた翌日のこと――――――。
新しいクラスでの生徒自己紹介が終わり、『探索オリエンテーション』という学校の施設案内を兼ねた校内見学を控えた休み時間、
緩やかなロングヘアーは綺麗にカラーリングされていて、その髪の艶に負けない整った容姿が目を引くその相手は、彼の所属する1年2組の中でも、クラスの中心的立ち位置になりそうな存在だった。
「え〜っと……
クラスメートとはいえ、相変わらず少し他人行儀な話し方で応対する
「なんだよ〜、よそよそしいな〜。それと、アタシのことは、ケイコって呼んでくれって、自己紹介のときにも、話したつもりなんだけどな〜」
自分の席からは少し離れた位置にある
自己紹介時に本人が言うには、
「中等部からの進学組の子は知ってると思うけど、希望の
とのことであった。
そのことを頭の片隅で思い出しながら、
「ケ、ケイコさん、わかったよ。時間は、どれくらい掛かりそう?」
「そんなにかしこまらないでよ。
そう言い残して、陽キャラの女子が立ち去ると、彼女に代わって、二人の男子生徒が語り掛けてきた。
「高等部入学二日目にして、
「僕には、一方的に話しかけられてただけにも見えたけどね……でも、彼女に興味を持ってもらえるなんて、キミにはなにか惹かれるモノがあったんじゃない?」
そんな風に声を掛けてきたのは、
二人とも、中等部からの進学組で、
「あっ……辰巳くんに、乾くん……ボクには事情がまったく
彼が困惑気味にクラスメートにたずねると、二人のうちで、やや背の高い
「こっちに聞かれても、わかるワケねぇ〜よ。それと、針本、オレたちのことは、クン付けしなくて良いぞ」
さらに、その言葉にうなずきながら、
「そうだね! 中等部のときは、男子が少なかったから、僕らとしてはキミを歓迎したいんだ。良ければ、お近づきの印に、次の時間の『探索オリエンテーション』では、施設について色々と補足説明をさせてもらおうと思う。その代わりと言ってはなんだけど……北川ちゃんが、キミにどんな用があったのか、良ければ聞かせてくれないかい?」
初めて言葉を交わす相手に対して、ちょっと、プライベートに踏み込みすぎなじゃないか――――――?
声を掛けてきた男子生徒二名に対して、
高等部への入学二日目にして、気軽に話せるクラスメートができたことは、幸運だったと言って差し支えない。
しかし、この日、初対面の
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