第2話 衝動が止められない

 小学生の頃の私はチック症だったかもしれない。「かもしれない」というのは、当時実際に診断された訳ではなく、今お世話になっている精神科医に昔の話をした際にチック症だった可能性は高いね。と言われただけなので確かな話とは言えないので、この話を参考に「自分もそうかも…」と不安に思わないようにしていただきたい。

 

 ある時から気がつくと、顔を力いっぱいクシャッと一見変顔とも捉えられる顔をしたり、瞬きが止められなかったり、関節という関節を曲げたり叩いたり、急に力を込めてその場にしゃがみ込んだり、「あっあっ」「んっんっ」と発音したりといった、傍から見たら不思議な行動が多かった。これらは自らやろうとしてやっているのではなく衝動的に起きていたのだが、母は娘が外で笑い者にされないか不安で見つけ次第しつこく叱った。私もやりたくてやっているのでは無いのだが、母に叱られるのが嫌で必死に我慢しようとするのだがどうしても止められない。むしろ我慢するとイライラが募り余計に症状が悪化した。

 けれどもいつからだろう。記憶は全く無いのだが不思議な行動はピッタリ止まっており、あれはなんだったのだろうと疑問が残る。


 しかし、完全に行動が消えたかと思えばそうでは無い。大人になってから急に激しい瞬きが止められなくなってしまった。最初はドライアイかと思い眼科に行ったのだが異常が無く、精神科医に何気なく相談したところ、チック症かもしれないけれど今は病名や症状を気にせず過ごしましょう。とアドバイスをもらい、人目を気にしてしまうことはあるがそこまで神経質にならないよう心がけている。


 あんなに私の不思議な行動を抑え込もうとしていた母だが、10年ほど前から咳払いが止まらない。普通に会話していても咳払いを頻繁に挟むため会話がスムーズに進まないことがある。咳払いもチック症の症状の一つと聞いたことがあるが、私は医者でも専門家でもないのでそうと決めつけず(喉の病気かもしれないので)、「最近咳が出てるから風邪でも引いてるの?」「喉が辛そうだから、薬か喉飴買ってこようか?」と、あくまで心配している体で伝えたのだが、本人は全く自覚がないようで「どこも具合なんて悪くないわよ!」と拒否されてしまった。こう言われてしまった以上これ以上強く言えないし、本人は困っている様子でもないので今は見守っている。


 

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