番外編その3:今宵は宴


さてさて、宴会のお時間ですよ。この街で最も大きい建物である【ギルド】で行われるらしい。まぁ、けっこうな人数居たしな。


「そういえばお仲間と一緒に行かなくて大丈夫なんですか?」


俺の横を歩いてるフィレスがそんなこと聞いてくる。


「仲間には先に行くように言っておいたから問題なし」


今はフィレスの好感度を上げときたいからな。俺の仲間になったからには魔王を倒すまで逃がしはしない。いくら働かせても文句を言わない程度には好感度を上げときたいのだ。


「おっ、着いたぞ。」


外からでも活気溢れた声がギルドの中から聞こえてくる。正直言ってかなりうるさい。これが日本なら騒音被害で近隣トラブルになるレベル。


「あっ、ヒビキさぁ〜ん!!」


聞き馴染みのある声が耳に入る。声のした方向を向くと、ユーリくんとミナ、そしてアレンがギルドの前で待っていた。


「おん?お前らまだ入ってなかったのか?」


「……ご主人様と一緒が良かったから。」


「それにまだ新しい仲間ともまともに話せてないであるからな。」


アレンがフィレスのことを見つめる。……コイツら、もしやフィレスを仲間に誘ってるとこ盗み聞きしてやがったな?


「あ、あの……ふ、フィレスです!種族は竜で、特技は料理です!これからこのパーティーでお世話になるので何卒よろしくお願いします!」


ユーリくん達に向けて深々と頭を下げて挨拶をする。そんな仰々しくなくていい気もするが、それが彼女のいい所なのかもしれない。


「こちらこそよろしくお願いします!僕の名前はユーリです!」


「……私の名前はミナ……よろしく」


「吾輩の名前はアレン。魔法を探求する魔道士である!よろしくである!」


「よーし、自己紹介終わったな?じゃあそろそろ入るぞー。主役が遅れちゃまずいからな。」


軽い自己紹介を終えたので、早速ギルドの中へと入る。俺達を認識した瞬間、ギルドの中にいたヤツらの騒ぎ声が少しづつ消えていき、視線がこちらに集まる。


うぇ〜、この空気感嫌いなんだよなぁ。注目されたくねぇ〜。肩身狭く感じていると、俺たちの目の前に町長が現れる。


「よく来てくださいました。ヒビキさんとお仲間の方、改めてこの街を救っていただきありがとうございました。」


町長に深々と礼をされる。……いや、感謝より金よこせよ。と思ったが、決して口には出さない。雰囲気をぶち壊すからな。……それにしても、せっかくの宴会なのに俺達だけに注目が集まるのは良くないだろう。


「アンタは偉いんだから頭を上げてくれ。……あっ、じゃあ恩を感じてるなら1つお願いを聞いて貰えますか?」


「えっ?……まぁ、はい。私に出来ることなら。」


……言質確保。多少の賭けもあるが言ってみるか。


「みんなぁああー!!!!町長が食事代と酒代奢ってくれるって〜!!!!」


ギルドにいる全員に聞こえるように大声で言い放つ。もし、最初からその手はずなら大して盛り上がらんと思うが。さぁ、反応はどうだ?


「「「うおおおぉぉぉぉぉっ!!!!!」」」



巻き起こる大歓声。賭けに勝ったな!命をかけたヤツらにお金を出させるなんてそんなことしちゃ良くないもんなぁ!!


「うっ……ま、まぁ。多少痛い出費ですがっ。皆様のためなら!」


「よし!よく言った!それで男や!よっしゃ!お前らァ!宴会楽しむぞぉ!!」


「「「イェェェーーイ!!!」」」


よォーし!ってな訳で盛り上がり取り戻したし、適当に酒でも飲んで楽しみますかね。


「おっと、どこに行くのかしら?」


「……あっ?」


なんかガタイのいいオカマに囲まれたんだけど。……いや、俺は静かに酒を飲みたいんだって。そんな見るからにヤバそうな連中と絡みたくないんだって。


「一緒に飲むわよぉぉ!!」


「嫌だぁぁあああああああ!!!!!あっ、あそこにいるアレンとユーリくんが一緒に飲みたいって言ってましたっ!!」


のんびりとこちらを眺めている2人を指差して、そっちに狙いが向くように仕向ける。


「ヒビキさんっ!?」


「ちょっ!?ヒビキ殿押し付けはさすがに酷くないであるかっ!?」


「うるせぇっ!お前らを犠牲に俺は逃げるんだよっ!!!ミナ!今のうちに俺を助けっ……あれ?ミナはどこに行った!?」


周辺を見渡すと、女性陣に囲まれて尻尾などをモフモフされまくってるミナがいた。


「ご、ご主人様……た、助けっ」


あ〜、ご愁傷さま。ミナは既に犠牲となったが、まだこっちにはフィレスがいる!


「……あれ?フィレスもいないんだが?」


「あの子なら料理を作る手伝いに行ってくるって厨房に行ったわよ♪」


「えっ……ってことは?」


「観念しなさい英雄様♪」


「クソぉおおおおお!!!!!!」


その後、俺はアレンとユーリくんを身代わりにしつつ逃げ回ったが、最終的に捕まり、あれやこれをさせられてしまうのであった。

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