第20話:ラストピース
フィレスの強力な一撃により、竜王は地へと叩きつけられ、己の命の灯火を消した。
あぁ……勝ったぁぁ……疲れたぁ。
戦闘によって蓄積していた疲れがドッと押し寄せて、まるで空中から落下しているような感覚に陥る。あぁー意識がおちるぅー…………いや、これ物理的に落ちてね?
えっ!?嘘っ!なんっ!ハッ、まさか!?周囲を見渡すと仲間が気絶しながら、俺と同じように落下しているのが目に入った。……アレンの魔法によって飛べてたから、アレンが気絶したらそりゃ落ちますよねぇぇ!!!
やばいやばい!!この高さから落ちたら死ぬ!!潰れたトマトみたいにグチャって、臓器をぶちまけるっていう見せられないよ!な絵面になるって!!
助けてぇえええええええ!!!!と恥も外聞も捨てて大声で周りに救援を求む。すると傍観していた冒険者たちが俺達の真下へと集まりだし、受け止める体制に入る。……ちゃんと受け止められなかったらお前らのこと呪ってやるからな。
だが、そんな心配は杞憂だったようで無事にキャッチされる。……今まで乗ったことのあるどの絶叫マシンよりも怖かった。落ちてる最中、綺麗な川と亡くなったはずの祖母が見えた気がしたが、気のせいということにしておこう。
ユーリくん達も無事に確保されたようで、死んではなさそうだな。……体は死ぬほど痛いけど。俺を除いてパーティー全員気絶してるとかどんな珍事だよ。しかもボロボロだし。
とりあえず俺だけでも治してもらわんとな。意識はあるけど、まともに動けないんだわ。
おーい!周りに回復魔法使える人居ます〜?と呼びかけると町長が目の前に現れた。おっ、町長アンタまさか、回復魔法の使い手か?期待の眼差しで見つめていると、
「本当にありがとう!君たちはこの街を救った英雄だ!」
そう言い放った瞬間、冒険者達が急に俺たちを胴上げし始める。ちょっと!まだ体治ってないって!痛い痛い痛いっ!ってか、気絶してる奴を胴上げするのは危ないから止めなさい!
「皆!宴を始めるぞ!!!」
俺の話を聞けぇえええ!!!!!
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……夢を見ていた。父と今はもう亡くなった母と楽しく過ごしていた昔のこと。もう二度と戻れないあの日々。……過去に浸るのはこのくらいにして、そろそろ夢から覚めなければ。私は今を懸命に生きると決意したのだから。
「……ぉ……おー……おーい!」
「……ふぇっ?」
声が聞こえて、目を覚ますとヒビキさんの顔がすぐ眼前に現れた。
「おはよ。調子はどうだ?体に不調とかないか?」
「ち、ちょっ!?まっ、待ってくださいっ!近いですっ!!///」
「あっ、すまん。」
ヒビキさんが少し離れると、何があったのかを説明してくれた。どうやら、父を倒したあと、私は気絶したようで倒れた私を冒険者の皆さんが運んでくれたそうだ。
「一応、回復魔法はかけてもらったから体の傷は綺麗さっぱり治ってるはずだ。」
「そうですか。……冒険者の方には感謝を伝えなければいけませんね。」
「おっ、なら今から行こうぜ?」
「えっ?」
「ちょうど今、宴会の準備してんだよ。多分あともう少しで準備完了するはずだからそん時に感謝伝えようぜ。」
「私が参加していいのですか?……魔物である私が。」
……しかも私は今回襲ってきた竜王の娘。そんな私が参加したら気分を害してしまうかもしれない。そう思っていたのだが、ヒビキさんは私の言葉を笑い飛ばしながら言い放つ。
「何を言うかと思えばそんなことか。お前はこの街を救った英雄だ!参加することに文句を言う奴なんていねぇよ。だから安心しろ。」
「……分かりました……ありがとうございます。」
「……ところでさ。1つお願いというか提案があるんだけどさ。」
「提案?……あっ。」
初めて話した時と同じようにニヤリと笑いながら口を開く。ヒビキさんが何を言おうとしているのか。何となく分かった気がする。
「……最初にお前と話した時にも同じことを言ったが、再度言わせてもらう。……俺の仲間にならないか?」
……ヒビキさんは私の命の恩人で、私が進む道を示してくれた。その恩に報いたい。……そして何より、彼と一緒にいると楽しいのだ。……私の答えはもちろん。
「……はい。その提案喜んでお受けします。」
「よし!じゃ、宴会楽しもうぜ!」
ヒビキさんに手を引かれ、外へと連れ出される。外は以前のどんよりした空気感とはうってかわり、活気に満ち溢れたものになっていた。
これからどのような運命が私を待っているのか。それは誰にも分からないが、きっと彼と彼の仲間と一緒なら乗り越えていけるだろう。
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