第16話:竜の心、読み解いてみせよう
うむ、告白は失敗に終わったか。想定内だが中々に攻略が難しいなこのヒロイン。まぁ、他がチョロインだっただけってのはあるだろうけど。
「……助けて貰った分際なのに……非常申し訳ありません。」
あぁ、うん。問題ないよ。ちなみになんで仲間になれないのかの理由が聞きたいかな。
……ほうほう、魔物というか他の生物を理由もなく殺したくないと。なるほど、平和主義者……いや、そういう訳じゃなさそうだな。フィレスが完全に納得出来る理由を提示出来ればいけるのか。
問題は魔物を倒さなくてはいけない理由を出すこと。魔物という範囲で括ったら同胞を殺さなければならない理由を考えないといけない。……相当めんどくさいな。
……とりあえず、俺たちに同行してもらうとしよう。仲間になるんじゃなくて、同行者。それなら許容出来るんじゃないか?
「……まぁ、それなら。」
よし来た!これで猶予を確保出来た。ここから攻略再開と行こう。……ふと思った、フィレスの方の事情を詳しく知らんな。なんで傷ついてたのかとか。なんで空から落ちてきたのかとか。一応聞いてみるとするか。
「……私は━━━━━
━━━━━って感じです。」
情報量多すぎてあんまり理解できんかったけど、要約すると。
竜がいっぱい住んでる村に元々居た。
ある日なんで他生物を殺さなければならないのかと疑問に思った。
それから数年後に父の「人間の街を滅ぼしてこい」という命令が納得出来ず、背いた。
その後、父に殺されかけて必死に逃げ延びた結果、今に至ると。
……なるほど。これは復讐心を煽るスタンスでいってみるのがいいか?……いや、この子の場合、ミナと違って憎悪の気持ちが薄い。それに復讐しなければならない明確な理由を提示できないからこれは却下だな。
……あぁ〜、めんどくせぇ。……とりあえず仲間と合流するか。一旦、説明しなければ。1人で考えるよりも複数人で考えた方がどうにかなる。三人寄れば文殊の知恵とも言うし。
ということでフィレスと一緒に街を歩き回って、仲間と合流しに行く。……ってかその角と翼消せたりする?
「頑張れば引っ込められますけど……」
なら引っ込めてほしいな。魔物だとバレたらおしまいだからね。服も炎で燃え尽きてるから新しいの着ようねー!鱗を隠せるシャツと外套、スカートも長め。竜だし暑さには強いだろ。
……ちなみになんで女性用の服を持ってるのかというと、これはだいぶ前にミナの服のサイズが分かんなかった時に複数買ったやつのあまりだ。
俺は一旦部屋の外に出て、着替え終わるのを待つ。しばらく待つと扉からひょこっと顔を出したフィレスが手招きしているので部屋に戻る。
衣装チェンジしたフィレスは先程よりもお淑やかに見える。よしよし!より可愛くなったぞ!
……やっぱりこの子仲間に欲しいな。男3の女1だから、ここで女の子の割合を増やしたい。これに関しては俺の趣味の問題だが。
そうして買い物を挟みながら仲間と合流することに成功する。軽く自己紹介を始めようとしたのだが、何やら皆の様子がおかしい。
すると焦った様子のユーリくんがとんでもないことを言い始めた。
「……あ、あのヒビキさんっ!大変です!あと少しでこの街に複数のドラゴンが襲来するそうですっ!!!」
…………………………はぁっ!?
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
私がヒビキさんの要求を断ってからしばしの沈黙が流れた後、彼は笑いながら口を開いた。
「……やっぱりいきなり仲間になってくれって言われたら普通断るよねぇ。」
「……助けて貰った分際なのに……非常申し訳ありません。」
「全然問題ないよ。ちなみになんで断ったかの理由を聞いてもいい?」
「……冒険者になるってことは魔物を殺さなければならないわけですよね?……私は明確な理由がない限り誰かを殺したくないんです。」
「あ〜、そういう考えか。なるほどね。……ちなみに自分がそうしなければならないって理由があれば他の生物を殺せるの?」
「……極力したくありませんが、殺さなければならない理由があるなら私はやりますよ。」
父の命令は魔王の意思という曖昧なものだったから納得出来なかったが、しっかりとした理由があり、それが納得出来るものなら私は動けると思う。
「わかった。……じゃあさ、俺たちに少しの間同行してくれない?魔物は殺さなくていいっていう条件で。それならどう?」
「……まぁ、それなら。」
同行……彼の仲間と一緒に旅とかするのだろうか。……少し楽しみなきもちがある。村でしか生活してなかったので人間の暮らしというのは気になるのだ。
「OK!じゃあ決まりね。……あっ、そうそう!」
彼は何かを思い出したかのよう思い出したかのようにに話し始める。
「フィレスってなんで空から降ってきたの?そこら辺詳しく知りたいんだけど。」
確かに私の事についてあまり話していなかったな。私は事細かにここに至るまでの経緯を説明した。
「なるほど。大変だったんだなぁ。よし!気分上げるために街で買い物でもするか!」
「え?」
「俺の仲間とも合流したいしな。あっ、その翼と角って隠せたりする?」
「頑張れば引っ込められますけど……」
「じゃあ引っ込めてよ。……あっ、ついでにこれ着てみて。」
そういうと彼はバッグから私に丁度いいくらいのサイズの服を取り出し、私に手渡す。そして「着替え終わったら呼んで」と言い、部屋から去っていった。
私は渡された服を見つめて、呆然としていてたが、良く考えれば人前でほぼ裸体を晒していたことに気がつき、恥ずかしさで顔が真っ赤に染まる。急いで今着ている布切れと化している服を脱ぎ、渡された服に着替える。
鏡で確認すると、渡された服を着た私はいつもと違った風に見える。翼も角も隠しているし、鱗もあまり見えないから本当に人間のような見た目だ。
……っと、ヒビキさんを呼ばなくては。部屋から出て、部屋の外にいたヒビキさんを手招きして呼び寄せる。
「着替え終わった〜?……おぉ!良い感じじゃん!!可愛い!!!」
素直に褒められると少しだけ恥ずかしい気持ちになるが、それ以上に嬉しくなる。そして私を観察していた彼が唐突に私の手を掴んだ。
「じゃ、行こうぜ!」
彼に手を引かれ、そのまま宿屋の外へと飛び出した。そして街の店にある食べ物やアクセサリなどを買ったりして、楽しんだ。
ただ、1つ気になったのはこの街の住民は皆、どこか暗い表情をしているのだ。
いったい何故だろうと考えていると、突然ヒビキさんが声を上げる。
「おっ、居た!」
彼の目線の先には、3人の人間が固まっていた。恐らく彼らがヒビキさんの仲間なのだろう。
「おーい!お前らー!」
そうヒビキさんが声をかけると、彼らもこちらに気がついたのか急ぎ足で向かってくる。……しかし、どこか様子が変だ。何か焦っている感じがする。
「この子が目を覚まし……ん?どうした?お前らそんなに慌てて。」
そして私が感じていた疑問を彼も感じていたようだ。すると、彼の仲間の気弱そうな男の子がとんでもないことを口にする。
「……あ、あのヒビキさんっ!大変です!あと少しでこの街に複数のドラゴンが襲来するそうですっ!!!」
…………………………えっ?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます