第15話:竜の娘は戦わない
カチカチボディの角と翼生えた赤髪の少女をゲットしました。運がいいですねぇ。やっぱり俺の能力は主人公補正で間違いなさそうですなぁ。
とりあえず気絶してるからさっさとベッドで寝かせた方がいい。どうにかして馬車に乗せて、そのまま街へと向かう。
「……ふむ、これは竜であるな。中々に珍しい。」
魔法を使い、少女の容態を確認していたアレンが少女の種族を特定する。なるほど、竜ね。この世界の竜って人間に化けられるのか。日本での価値観があるから、擬人化は違和感なく受け入れられるな。
「り、竜っ!?」
おっと、驚いている異世界人が1人。ユーリくんはこういうのに耐性がないのかな?まぁ、確かに竜って恐ろしいものってイメージもあるしなぁ。
「竜って言っても今は人の姿してるから怖くもないだろ。むしろ可愛くない?」
「確かにそうかもですね!」
受け入れ早いな。その適応能力の高さには感心しちゃうよ。
「……ねぇ、ご主人様。私とこの子どっちが可愛い?」
……その質問を男にぶつけるのは悩みすぎて頭がパンクするからやめて欲しい。どっちも好きな場合のどっちの方がいい?は答えるのが難しいんだ。まぁ、とはいえ今は仲間になった月日と単純に俺が竜より猫の方が好きなのでミナの方が好きということになるかな。
「…………ミナかな。」
「……なんか間がなかった?」
「気のせいだ。よし!そろそろ街着くぞぉ!!」
最後の街【アルカナ】に到着!ここに来るまで結構短いようで長かったなぁ。俺にチート能力があればもっと早く来れてたんだろうけど。
思っていた通り、あまり繁栄している感じでは無さそうだ。住民の顔は明るさがあまりないし、いくつかの建物が修繕中になっている。魔王の侵略を防ぎはしてるが、被害は大きいんだろうな。
ってか、周り見てる場合じゃねぇや。さっさと宿屋見つけねば。ユーリくん達にはこの街の情報収集するように伝え、俺はドラゴン娘をおんぶして宿屋を探しに街の中を歩き回る。さっきから背中に鱗の硬いのとは別に柔らかい物が当たる。お姫様抱っこよりおんぶ選んだのは正解だったな。
そうこうしている内に宿屋を見つけたので、そそくさと中に入り、ベッドに寝かせる。これで一安心だな。
……情報収集は任せたし、やることがないな。……まぁ、気長に待つか。
それから1時間後のこと。
「……んっ……ぅ……?……ここはっ?」
おっ?目を覚ましたっぽいな。じゃあここからは恋愛シミュレーションのお時間だ。この仲間に引き入れるって流れも成功すれば今回で最後。気を引き締めていきましょうかね。
まずは挨拶から。この時、警戒させないようにある程度距離を取って、優しくゆっくり話しかけるのが大切です。焦らせると話がしづらくなるからね。
「……貴方は?」
警戒してる様子は薄く、比較的落ち着いてるな。これなら話しやすそうだ。
拙者はヒビキというものでござんすよ。
俺が名乗ったんだからそっちの名前も教えてもらうぜぇ。
「……私の名前は【フィレス】です……。あのヒビキさん、1つ伺いたいのですが、なぜ私はベッドの上にいるのでしょうか?」
問いかけられたので、起こったことを説明する。すると、顔を俯かせ、悲壮な雰囲気を漂わせ始める。何か地雷踏んだか?
「……申し訳ありません……貴方とお仲間に迷惑をかけてしまったようで。」
あぁ、そんな事か。そういうのは全く気にしてないし、申し訳ないと思ってるなら後で迷惑かけた分、取り返してもらうから問題ないさ!と若干内容を濁しながら伝える。
「……私は何をすればいいのでしょうか。」
「俺の仲間になってほしいんだ。」
ストレートに希望を伝える。これで堕ちれば楽に済むんだが、どうだろうか。
「…………すいません。お誘いは嬉しいのですが…………その要求は断らせてもらいます。」
……おっとぉ……過去最大の強敵来たな?
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「……んっ……ぅ?……ここはっ?」
目が覚めると私は見知らぬ場所に居た。……とりあえず状況を整理するために辺りを見回してみると、少し離れた位置に茶髪で優しそうな顔をした男がこちらを見つめていた。
「おはよう。調子はどうかな?」
突然話しかけられたので、ビックリしてしまうが、私の体の事を気遣っている言葉だったので、特に警戒を抱くことはなかった。
「……大丈夫です。……貴方は?」
「俺のことが知りたい?なら教えてやろう。俺の名前は【ヒビキ】。普通の冒険者だ。」
冒険者……聞いたことがある。私たちのような魔物を討伐する者たち。だが目の前の男は魔物を倒せるような雰囲気はしていない。むしろ私に対して友好的な感じがする。そんなことを考えていると、彼が口を開いた。
「俺だけ名乗るってのは割に合わないからさ、君の名前も教えてよ。」
「……私の名前は【フィレス】です……。あのヒビキさん、1つ伺いたいのですが、なぜ私はベッドの上にいるのでしょうか?」
「何か君が空から落ちてきて、ボロボロだったから俺の仲間が君の傷を治して、放置する訳にもいかなかったから、ここまで運んできた。って訳。簡潔に説明したけど分かったかな?」
それを聞き、私は申し訳なさから顔を俯かせてしまう。
「……申し訳ありません……貴方とお仲間に迷惑をかけてしまったようで。」
「そんなこと別に気にしなくていいよ?俺らだって善意で助けたんだから。まぁ、納得できないようなら君にお願いしたいことがあるんだよね。」
……お願い?よく分からないが、助けてもらったのに何も返せないのは心にモヤモヤが残ってしまう。私に出来る範囲内でなら協力したい。
「……私は何をすればいいのでしょうか。」
男はニヤリと笑い、私に向かってこう言い放った。
「俺の仲間になってほしいんだ。」
男の要求は一見、軽く見えるが彼の仲間になるということは私も冒険者になるということ。そしてそれは他の魔物を殺すことに繋がる。……それは私の信念に背くことになる。父の命令と全く同じことをすることになってしまう。
だからこそ、私はその要求を飲むことは出来ない。
「…………すいません。お誘いは嬉しいのですが…………その要求は断らせてもらいます。」
私は誰も殺したくないのだ。
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