番外編その2:アレン先生の魔法講座
みんなが魔王城に行くこと驚いてらァ。伝えてなかったのが悪かったな。やっぱり報連相は大事だなぁ。まぁ、とはいえもう決定事項だし、今更戻るなんてことはしないがな!
「……まぁ、ヒビキさんのことですし。何か考えがあるんでしょう。」
ユーリくんが俺の事をフォローする。前々から思ってたけど、俺そんな好感度上がるようなことしたっけな?……したようなしてないような。深くは考えないようにしよう。
「それにしても……今から魔王討伐とはヒビキ殿はなかなかに強気なのであるな。」
「ん?いや、魔王討伐はまだせんよ?」
「……む?」
俺の返答にアレンが首を傾げる。
「あ〜、言葉が足らんかったな。今回は魔王城付近に寄るってだけよ。まだ準備も整ってないし、それに個人的にもう1人仲間が欲しいしな。」
「……このパーティーだと不安?」
俺の隣に座ってるミナが上目遣いでそう問いかけてくる。その問いに俺は頭を撫でながら返す。
「俺はこのパーティーでも十分勝てると思うが、勝つならもっと楽に勝ちたいからな。だからあと1人欲しい。不安ってのはないかな。納得した?」
「……うん。」
よしよし。納得いただけたようで何より。
……ちなみに「不安はない」なんて言ったが、魔王の実力が分からない以上、不安要素はかなりあるからな。やはり、タンクを揃えて攻守共に万全にしたいんだよなぁ。この先で良い感じのタンクに出会えたら良いんだけどな。
……とりあえず今は深く考えず、旅を楽しむとしよう。その方が気が楽だ。
そんなこんなでしばらく旅を続けている最中、ふと頭の中に疑問が浮かんだ。
……俺って魔法撃てんのかな?
転生した当初、魔法を撃ってみようとしたけど、全く出来なかったから魔法は使えないもんかと思ってたけど、やり方が間違えてる可能性もあるもんな。魔法のスペシャリストが居ることだし、聞いてみるとするか。
「なぁアレン、俺魔法使えないんだけどさ。魔法ってどうやって使うの?」
「ほう、魔法が使えないのであるか。そういった者は何人もいるが、その多くは使い方を理解していないだけである。吾輩が丁寧に教えよう。」
「お願いしま〜す」
アレン先生によるありがたい魔法講座の始まり始まり〜。ちなみにミナも魔法が使えないから受けるらしい。勉強熱心で関心するね!
「まず魔法というものは2つの要素によって成り立っている。1つ目が【魔力】、2つ目は【イメージ力】だ。」
「せんせぇ〜、イメージ力っでなんで必要なんですか?」
「うむ、良い質問であるな。魔力とイメージは密接に関わっているのである。例えば火の魔法を使おうとしたとして、火がどのようなものでどんな形をしているかをイメージ出来なければ、発動することが出来ないのである。」
なるほど。特定の技名を言えば勝手に発動する形式じゃなく、ちゃんと魔法で出したいものを思い浮かべろってことね。
「……何となく分かったけど、肝心の魔力って何?」
ミナが俺も感じていた疑問をぶつける。
「魔力というのは体の中にある実体のない器に溜まっている魔法を使う際に消費する燃料のようなものだ。」
「……私の体の中に器があるの?そんな感覚はないけど。」
「器は深く知覚しようとしなければ普段は認識出来ない。魔法が使えないものはその器を知覚できていないケースが多い。」
「どうやったら器を知覚できるんだ?」
「直接魔法に当たるなどの方法があるが、今回は手っ取り早い方法を取るとしよう。吾輩が魔力を受け渡すから、どこにどうやって流れ込んでいるかを把握してくれ。それではミナ殿、少し手を出してくれ」
「……はい。」
そう言ってミナが手を差し出すとアレンがその手を重ねるように手をかざした。するとミナの腕に謎の光が巡る。
「……あったかい。」
「ゆっくり深呼吸して、その温かさがどこに向かってるかを意識するのである。」
「……すぅ……はぁ………………だいたい分かったかも。」
「よし、なら馬車の外に出て魔法を撃ってみよう。…………よし、じゃあ水をイメージしてみてくれ。」
「了解」
そう言うとミナは目を瞑り、集中し始める。すると再び腕が発光し、手のひらに水が生成される。……飲み込み早いなぁ。
「……んっ、どう?」
「初めてにしては上出来であるな。そのまま球体に出来るか?」
「……やってみる。」
腕の光が更に輝きを増し、少しづつ水の量が増えていき、形が整っていく。そうして球体状になったところで突然、糸が切れたようにミナが倒れた。
「えっ!?大丈夫かっ!?」
すぐにミナの元に駆け寄るが、どうやら意識はある様子。ただ体が動かないようだ。……もしやこれは……
「魔力切れであるな。器の魔力を全て使ったら、体が動かなくなってしまう。魔法使いとして最も気をつける点であるな。」
「……そう言うのは……先に言って欲しいっ」
「1度経験しておかないと危険であるからな。今後はそうならないように注意を払うのだぞ。」
確かに魔物との戦いで魔力切れになったら、袋叩きにあって即死だもんな。
「ほいじゃ、次俺も試したいんだけどいいか?」
「もちろんである。では手を出してくれ」
「あいあいさー。」
ミナと同じように手を差しだす。そして再度アレンが手をかざす。
……よし、ばっちこい魔力!そして俺は念願の魔法使いになるんだァ!
そう期待しながら目を瞑る。……だが……何かが渡されている感覚が一切しない。ホントに魔力受け渡してんのか?
「……ん?なんも感じないんだけど。どうなってんの?」
「……これは驚いた……こんなことが有り得るのか?……いや、でも現に……」
えっ?なになに?専門家がぶつぶつと呟き始めるの怖いんだけど!?なんか俺の体に異常あるの!?
「……ヒビキ殿、今から貴公に非常にショックなことを言ってしまう可能性があるのだが……大丈夫であるか?」
「……お、おう。」
「……恐らく、ヒビキ殿には器が存在していない。完全に魔力が無い極めて稀有な例だ。」
「……ぇええええええええええっ!?」
うっそぉおんっ!?日本人ボディだからか!?クッソ!ふざけてんじゃねぇぞ!!おかしいだろぉおっ!!!
あまりのショックに膝から崩れ落ちてしまう。さすがにそれはないってぇっ……期待させやがってぇ……あんのっ、クソ天使のせいでっ!
「クソぉおおおおおおおおおおおおっっっ!!!!!!!!」
とある平原に男の悲しい声が響き渡ったとさ。
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