第9話:奴隷少女は何を見る? 後編
復讐を決意した私達は山へと入り、私の故郷である村の近くまで来ていた。
見張りがいるので、見つかったらめんどくさい。
「それじゃ、俺らは手助けはするけど、殺すのは全部ミナに任せるよ。それでいいよね?」
「……うん。」
「それじゃあ、支援魔法かけますね。【付与・強化&俊敏】」
ユーリから支援魔法をもらう。
俊敏性と攻撃力が跳ね上がるのを感じる。
……前々から思ってたけどやっぱりこの魔法、規格外な気がする。
「ほいじゃ、行くか。俺とりあえず見張り潰してくるわ。ちょっと待っててね。」
そういうと男は凄まじい速度で見張りの側まで近寄り、騒がれないように一瞬で気絶させる。
男がこっちに来るように手招きしたのでなるべく音を立てないようになおかつ迅速に合流する。地面には見張りをしていた奴が倒れている。
「殺してはないからコイツはミナが好きなようにしな。ほいじゃ、俺の仕事はだいたい終わり!あとはミナが頑張るんだぞ!」
「分かった。」
……決意を固めて、私は床で倒れてる同族の心臓をナイフで突き刺した。
「ガァアアッッ!?」
「……うるさい」
ナイフによる痛みで気絶から目が覚めたのか、叫び声を上げ始める。
耳障りなので首にナイフを刺して喉を潰す。
「……カヒュッ……」
そのままなるべく苦しむように放置する。出血死はかなり苦痛を伴うらしいから、声も出せず、神にでも祈りながら死ねばいい。
……これで1人目。まだまだ沢山いる。
見張りは片付けたので難なく村の中に入ることが出来る。もう夜遅いから全員寝静まっていることだろう。
1軒ずつ丁寧に訪問する。
中に入ると安らかな顔で眠っている村人がいた。幸せな夢でも見ているのだろうか。
その顔が私の憎悪を更に掻き立てる。なのでなるべく苦しむように殺していく。
中には私がこの村から出ていったあとに生まれたであろう赤子もいたが関係なく殺す。
……やるなら徹底的にしなければならない。
そうしてほぼ全ての村人を狩り尽くし、最後の一人となった。
残されたのはここより少し離れた屋敷に住んでいるこの村の村長だ。
あいつさえ殺せば私の復讐は終わりを迎える。
そして屋敷へとたどり着いたが、何か違和感を感じる。
昔の記憶と変わらず、ただ多少デカい建物というだけだ。
私の中の獣が警戒せよと告げる。
周囲を見渡すと、闇夜の中にキラリと光るものが目に入った。
私はその場から急いで飛び退く。
私がいた場所を見つめると矢が突き刺さっていた。
「……チッ……避けたか。さすがは悪魔、一筋縄ではいかないようだな。」
暗闇の中から苛立ちを含んだ声とともに弓矢を携えた茶髪の獣人が現れる。
やつが最後の標的にしてこの村の長【ダラオス】
「……私は悪魔なんかじゃない。」
「どの口がいう。村の連中を皆殺しにしたくせによ。お前は紛れもなく悪逆非道の悪魔なんだよ。」
そう言うとダラオスが腰にある鞘から剣を抜き、こちらに急接近してくる。
私はそれを二本の短剣で受け止める。金属音が周囲に響き渡る。
肉体が強化されているから簡単に押し返せると思ったが、ダラオスの力は想定よりもずっと強く、徐々に押されだす。
「くっ!」
「力で俺に適うわけねぇだろ!昔に俺に半殺しにされたの忘れたわけじゃないだろ?今なら、あの時みたいに泣きながら謝罪でもしたら、両脚切断くらいで許してやるぜ?」
グラオスは更に剣を押し込む。早く何とかしないとこのままだと押し切られてしまう。
と剣に意識が向いていた隙を突かれ、腹部に蹴りを叩き込まれる。
「かはッ!?」
そのままあまりの衝撃に剣を落としてしまう。そのままもう一撃蹴りを叩き込まれ、後ろに吹っ飛ばされる。
「……ぉぇっ……はぁはぁ……っ……」
「これで分かったか?お前の力じゃどうやっても俺には勝てねぇんだよ。昔の数倍強くなったところで雑魚は雑魚なんだよ。」
そのままジリジリと距離をつめられる。そして私のそばに近寄ると首を掴み、私のことを持ち上げた。
「……がっ、ぐっ……はな、せっ……」
「あぁ?離してくださいだろうが。口の利き方がなってねぇな。……にしてもお前、悪くねぇ体してるじゃねぇか。お前に子を産ませ続けて減った分増やすのも良さそうだなぁ!」
グラオスが下卑た目付きで私の体を見つめる。
何とか逃れようと必死に動くが首を絞められて思うように動けない。
脳に酸素が送られず、段々と意識も朦朧とし始める。
……私……このまま……死ぬの……かな?
そう思ったその瞬間、何かが飛来し、グラオスの頭部に直撃した。
「がっ!?……っ!なんだっ!?」
それにより私を掴んでいる手が緩んだので、私は思い切りグラオスの手に噛みつき、手の肉を喰いちぎる。
「がぁぁぁああっ!?」
グラオスが悲鳴を上げがら、私を投げ飛ばす。私は咄嗟に受け身を取り、体制と呼吸を整える。
「クソッ……なんだっ!何をしやがったッ!?」
……確証は無いけど多分、あれは……
「【付与・強化】」
暗闇から聞き馴染みのある声が聞こえる。
私はそれを聞き、笑みをこぼす。
「他に誰か隠れてやがるなっ!?出てこい!卑怯者がっ!!」
「よそ見してていいの?」
グラオスが周囲に気を取られてるうちに、落とした短剣を拾い上げ、そのまま急接近する。そしてグラオスに向かって斜めに斬り下ろすが、予想通り受け止められる。
「……ハッ、お前バカだな?俺に力比べを挑むなんて、さっき俺が言ったことをもう忘れたか?なら何度でも言ってやるよ!お前の力じゃどうやっても俺には勝てねぇんだよ!!」
「……私の力なら、でしょ?」
「あっ?お前何言って……っ!?」
私の剣が徐々にグラオスの剣を押し込み始める。先程とは逆の状況だ。
「お前っ……力が増してっ!?」
「……これは私だけの力じゃない。……くたばれ」
私はそのまま剣を振り抜き、グラオスの体を斬り裂いた。
「ガハッ!?ッ!!」
血が噴き出し、地面が赤で染まる。だがその状況になっても、反撃しようと殴りかかってくる。だから丁寧に腕と足を斬り裂いて、地面に突っ伏させる。
そしてその状態のグラオスの頭に剣を突き立てる。
「…………これで終わり。」
「ま、待でッ!待っでぐださいっ!許してくださいっ!!謝りますっ!だから助けてくだざいっ!!」
死にかけのグラオスが発したのは聞くに堪えない言葉。どれほど許しを乞いても、無様に泣いても私の決意はゆるぐことはない。
「……お前は助けを求めた私を1回でも助けたことがあったか?」
「……待っ!」
今までの事を思い出す。とても長い長い地獄だった。
……それも全てこれで終わり。
私は躊躇うことなく脳に剣を突き刺した。
グラオスは刺した瞬間はジタバタ動いていたが、しばらく経つとピクリとも動かなくなった。
「終わったようだな。」
私がグラオスを殺し終えると、物陰から2人ほど出てきた。ユーリ。それとヒビキ……いや。
ここまで私を導いてくれた人。
私を絶望から救いあげてくれた人。
私に復讐の機会を与えてくれた人。
私の……ご主人様。
「……帰ろっか。」
「……うん。」
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ってな感じだったな。いやぁ、なかなかに大変だったな。まぁ、これでミナとも仲良くなれたし、今回の旅は成功だったと言えるだろう。
「……ぅ」
そんな感じで1人で物思いにふけっていると、馬車の中で眠っていたミナが何やら寝言を言っているので耳をすましてみる。
「……ご主人様……ありがとう……」
「……どういたしまして」
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