第8話:奴隷少女は何を見る? 前編
「ヒビキさーん!ただい、ま……えっ?……そ、その子誰ですかっ!?」
ミナで遊んでいると、街を彷徨ってたユーリくんがようやく帰ってきたようだ。
あ〜、めんどくさい。でもちゃんと説明しないとだしな。
ということでミナを見て動揺しているユーリくんに大体の経緯を説明した。
俺の説明でだいたい理解はしたようだが、怪訝な目でミナのことを見つめている。
何やらユーリくんが言いたいことがあるようなので耳を貸すと黒髪黒目は悪魔の生まれ変わりとか、不吉なんじゃないかという奴隷商と同じようなことを言い始めた。
ユーリくんでも知ってるってことはそれがこの世界の一般常識なんだな。
まぁ、俺はそんなのどうでもいいけど。
俺の判断基準は使えるかどうか、ポテンシャルがどれほどあるかを評価してるから色の違いとかは大して気にしない!という考えをユーリくんに力説したら納得してくれたようだ。
納得出来ずに仲間内で険悪なムードが流れても困るからね。
やはり仲良くするのが大事よ。
さてさて、新しい仲間も手に入れたし、旅でもして仲を深めますかね。実際
……こういう奴隷の子は悲惨な過去を抱えてることが多く、少しでも優しくするとコロッと堕ちるというのが定番だ。
ということでなるべく優しく接しながら、この世界を見せてあげよう。
というわけで早速ミナとユーリくんを強制的に馬車にぶち込む。
さてさて、何十日いや何百日かかるか分かんないけどミナを陥落し、俺の優秀な駒とする旅の始まりだぁ!結果はCMの後━━━
━━━━━はいはい、ごきげんよう。
そんなこんなで世界を巡っておよそ半年間ほど旅をしてきたぜ。
とりあえず関係は良好になったのかどうかって話をしましょうか。
結論から言うとですね。
……めっちゃ懐きました!もう最初とは比べ物にならないくらい。今も俺の膝の上で寝てるくらいだし。
いやぁ、想定より時間かかったけど最良の結果掴めたし満足よ。
せっかくだし、俺たちがどんな旅をしてきたのか改めて振り返るか。
確か最初は………………
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「ヒビキさーん!ただい、ま……えっ?……そ、その子誰ですかっ!?」
……誰だこいつは?またよく分からないのが現れた。
「おかえりユーリくん。どう?王都は楽しめた?」
「え?は、はい。見たことないものがいっぱいあって楽しかったですけど……って話逸らさないでくださいよっ!その子は誰なんですか!?」
「あ〜、じゃあちょっと説明するからそっちで話そっか。」
男がユーリと呼ばれた少年のそばへと近寄り何やら喋り始めた。小声なのであまり聞き取れないが端々で私の名前が聞こえるから多分私について話しているのだろう。
暫く経つと話し終えたのか、男がこちらへと近寄って来て衝撃の一言を言い放った。
「今から旅行に行くぞ!」
「…………は?」
言われたことが理解出来ず、固まっているとそのまま体を担がれて、馬車に乗せられた。
「……どこに行くの?」
さすがに説明が欲しいので、男に問いかける。
「目的地は特に決まってない!ただ世界を巡る!でもなんで旅に出るのかはちゃんと理由があるぞ。」
「どんな理由なんですか?」
少年が男に対して疑問を投げかける。私も気になっていたことなので、耳を傾ける。
「ミナと仲良くなるため。」
その言葉を聞き、私は酷く混乱した。
……意味がわからない。
私と……奴隷と仲良くなってなんの意味があるのか。男の思惑が全く分からない。
「意味がわからないって顔してんな。なんでそんなことをする必要があるのか、何か裏があるんじゃないか?って思ってるだろ?」
「っ!?」
心を読まれたのかと思うくらいに正確に私の心情を読み取られ、思わず体を強ばらせてしまう。
そんな私を前に男は更に言葉を続ける。
「そんな深読みすんな。俺はバカだからそんなこと考えられねぇよ!仲間だからただ仲良くしたい。そこに大した理由はいらないんだよ。覚えとけ。」
そう言うと男は私の頭を撫でてきた。
……男の言葉を信じることは出来ないけど、どうせ逃げられないんだし、色々考える方がめんどくさい。
それから長い旅が始まった。
世界各地を巡り、色んな街を訪れた。様々な人と出会い、色んな経験をした。
ダンジョンと呼ばれるものに入って魔物と遭遇した時にはここで死ぬのかとも思ったが、少年の支援魔法のおかげで私でもいとも簡単に魔物を倒すことが出来た。
その後、私には二振りの短剣が買い与えられ、更に魔物を倒しやすくなった。
そしてダンジョンに潜る以外にも、各地の食べ物やその土地ならではの商品を買うなどして旅は続いて行った。
そして旅を始めてからそろそろ1年を迎えようとしていた頃、私は二度と来ないだろうと思っていたところに偶然にも来てしまった。
【クベル山】……私の故郷がある山。スルーしようかと思ったが、私の異変を察知したのか男が話しかけてきた。
「なんか表情暗いな。どうした?」
「……なんでもない。」
「はいダウト!さすがに嘘ってわかるよ。もう1年も一緒にいるんだしな。」
「……嘘って分かるなら聞かないで。」
「確かに仲間とはいえ聞かれたくないこともあるだろうな。でもさ、ミナ。お前未練抱えてる顔してるぜ?本当にそれは無視していいことなのか?」
「…………」
「それでお前は幸せになれるのか?」
「……分かった。……話す。」
そうして私は故郷であったこと全てを話した。生まれてからずっと軽蔑され、迫害されて生きてきたあの地獄の日々のことを。
「そんなことがあったんですか……なんて酷い……」
「……だからここには行きたくない。」
「最悪な目にあったんだな。行きたくない理由はだいたいわかった。……それを踏まえた上でもう一度聞く!それでお前は幸せになれるのか?」
「……え?」
私の言葉に男は再度疑問をぶつけてきた。
「両親は殺した。でも、まだ両親を殺しただけだろ?まだお前を虐めたやつはいっぱい残ってんじゃん。そいつらのことを見逃して、たった2人殺しただけで満足してるのか?」
「まぁ、要するに何が言いたいのかと言うとだな。
……復讐、し足りないんじゃないの?」
「ちょっとヒビキさんっ!?それはさすがにっ!」
「ユーリくんはちょっと静かにしてなさい。
これは思っている以上に大事なことなんだ。
……それでミナ。お前はどうしたい?
……心残りあるんだろ?自分を痛めつけたヤツらに復讐したい。そういう気持ちがあるんだろ?」
「俺はそういう気持ちを尊重してやりたい。復讐はダメとかいう言葉が世にはびこってるがあんなものはただの綺麗事だ。そんなの被害者が報われない。俺は綺麗事よりも本音が聞きたい。」
「……私は」
思い返されるあの最悪の日々。決して消えることの無い、私の地獄。……私を地獄に落としたヤツらがのうのうと生きてる。そんなの考えるだけで吐き気がする。ずっと心残りだった。……ずっと復讐したかった。
「復讐……したい。私はアイツらを殺したいっ!」
「よし決まりだぁ!村を滅ぼすとしようか!」
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