第11話

「カナタって、呼んで」


そう紡ぐと、山崎はあたしの右手首を掴んだ。


「行きましょう、カナタ」


そのまま連れられて、あたし達はあの公園へ向かった。


公園の茂みには、誰かの秘密基地になりそうな、隠れスペースがある。


そこで二人、座り込んだ。


「大丈夫だと言いたいけど、きっと、カナタは大丈夫じゃない」


山崎は、あたしを慰めたりなんかしなくて、ジュースと真反対だった。


ジュースが知らない人になって、喧嘩――いじめは加速して。


「なんで、あたしの味方をしてくれるの?」


もしかして、こんなあたしの事が好きなの?なら、あたしも山崎の事が――


「あんなのは、許せないから」


山崎は、真剣な声色で言った。


「いじめなんてしていい事じゃない。見過ごせるものじゃない」


ボロボロになっていくカナタが、消えそうだから。山崎はそうとだけ言った。


期待した自分が恥ずかしくなった。


「いじめられてる子は、きっと他にもいる。でも、なんであたしなの?」


好きって、一言でも聞けたら安心なのに。山崎が他の人にもこんな感じなのは嫌。


「カナタしか、知らないから」


やっぱり好かれてなんか居なくて、それが少し寂しい。


「あの駄菓子屋に、いたんでしょう?あの人と話すのは、楽しかったですか?」


思い出すのはジュースの香水の匂い。甘い桃みたいな香りで、すごく好きだった。


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