第8話

「田中あかねって、いたでしょ?あの子さ、嫌味ばっかなの」


そう言ってやると、ジュースは悲しそうな顔をした。うまいなあ、同情してもらってる気になる。


「そうなんだ……やっぱり、許せない?」


ジュースはあたしの目線に合わせて、ゆっくり聞いた。


当たり前――いや、全然?許せるから。


「許せる、よ」


本当はあたしも、ちょっと怖いんだ。


「そうなんだ。そのくらいの辛さってこと?」


ジュースは、なんだか嬉しそうだった。でも、こんな気持ちなのに、そんなこと言われるとちょっと。


その程度だなんて言わないでよ。あたしだって、家でも学校でも独りだし、ここくらいしか居場所が――


「そんなこと、言わないでよ……」


そう零して、並んだキャンディを睨んだ。


喧嘩、って言ったけど、気づいてるんだよ。多分あれはさ、いじめってやつだよ。


でも、でも!ずっと辛い訳じゃないの。たまに嫌われてるんだなって思うだけで。


学校だって行けるよ、通学路で話しかけられたりは怖いけど。


あたし、できるよ。

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