第3話

「みーちゃんってさ、ちょっと強引なとこあるよね」


「え、みーちゃんも来るの?」





ハッと目を覚ます。いつの間にか寝てたみたいだ。


「2:03」と表示されたスマートフォン。


深夜二時に目が覚めても、やることなんてない。


目を擦って、夜空でも見てみようかと体を起こす。


なんだか、小さな人影が見えた。目を擦って、よく見てみる。


誰だ、その顔は。


暗闇に目が慣れて見えてきたのは、本当に知らない人。


赤色のランドセルの肩紐を握りしめて、睨んでくる。


アシンメトリーの前髪、赤と黄の変なパーカー。


小学生か?なんでここに。


「なに、睨んできてんのよ」


幽霊だかなんだか知らないけど、邪魔しないで欲しかった。


小学生如きが、私の気持ちなんて分かるわけないし。


先程よりも強くこちらを睨んでくるけど、何も口にしない。


「僕、早くおうち帰りなよ。怒られるよ」


きっとまた夢か何かを見ているんだろうと、布団を退かして起き上がった。


「うっせえゴミ女、あと女だわ!」


まさに、小学生。三年生くらいだろうか、小さな手で必死に中指を突き立てている。


ゴミ女、ねえ。


伸びをすると、そいつは居心地が悪くなったの、かランドセルを下ろした。


「あんた誰なの?人の病室に勝手に入っちゃダメだよ」


そいつの肩をちょいと押してやると、案外華奢みたいで、少しよろけた。


「ア、アタシはあんたの知り合いだよ、追い出すんじゃねえ」


慣れていないのか、口調が固まっていない。


記憶障害、だからかな。全く身に覚えもない。


「あっそう。てか、どうでもいいから帰ってくんね?」


窓越しに見る夜空と深呼吸。顔も見ずにそう投げかけた。


「は、はぁ?お前も暇なんだろ、スズヤマミズキ!」


なんだか少し照れくさそうに言って、そいつはベッド脇の椅子に腰かけた。


「何様だよ、あんた。てか誰?」


少女にそう聞くと、少し悩んだ後にこう答えた。


「アタシの名前は夜空カナタ。全部話すから、早く寝やがれゴミ女!」


「はいはい、いいから早く帰ってよ」


仕方なくベッドに寝ると、カナタはなんだか嬉しそうな顔をした。


「まずは、アタシの自己紹介から」

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