第十二話 人は見た目が九割


「そうよね! 小太郎には迷惑もかけるし、恩返しも含めて小太郎をモテモテにプロデュースしてあげる! それに私自身も今後の勉強にもなるしね! 正に一石二鳥!」



「……おーーい」


「うん、我ながらグッドアイデア!」


「グッドアイデアじゃねえ!」


「なによ? 不満なの?」


「不満もくそもあるか! なんでそんな事して貰わなくちゃいけないんだよ! そもそも俺は委員長の事なんて――」


「いい、小太郎?」


 俺の言葉を遮るように、ユメはそう言って視線を俺の目に固定する。



「この際、小太郎が委員長の事を好きじゃ無くても構わないわ」



 ……をい。


「……いきなり前提条件を覆すのか」


「でも、委員長って凄いと思わない? 成績優秀、スポーツ万能、眉目秀麗、人望もあって、性格もよしじゃない?」


「……まあ」


 否定はしないよ、うん。確かに委員長は『無敵艦隊』だしな。


「ゲームとか漫画なら間違いなくメインヒロイン張るじゃない、委員長って。 好感度調整とか物凄く難しくて、その子だけ狙いじゃ絶対落とせない、友達との友情パロメーターを気にしつつ攻略しないと落とせないレベルの美少女だよ?」


「……詳しすぎないか、おい」


 お前、マジでサキュバスなの? 実はギャルゲーオタクとかじゃなくて?


「人間界の事は勉強してるって言ったでしょ?」


「知識が偏り過ぎじゃないか?」


「日本のゲームやアニメはワールドワイドのクオリティだよ? それに、人間界の恋愛を学ぶには疑似恋愛が一番じゃない。よくプレイしたわ」


「そうなの?」


「サキュバスの世界でも日本のゲームとかアニメって凄く高い評価受けてるし」


 ……すげーよ、日本のオタク文化。外国だけでなく、違う世界まで席巻してるよ。 


「とにかく! もしゲームとか漫画なら、委員長って絶対メインヒロインキャラでしょ?」


「……まあ、否定はせん」


「ルート固定シナリオ以外のゲームって、やっぱりメインヒロインが一番落としにくいでしょ? それじゃ、メインヒロインに気にいられる様な『イイ男』になれば後は楽勝じゃない? 最初から難易度マックスクリアすれば後は楽勝、みたいな?」


「一理ある様で無い様な……恋愛はデジタルじゃねえだろ?」


「恋愛はデジタルよ。好きか、嫌いかの『0』か『1』じゃない。ねえ、どうでもいいけど、好きとか嫌いとか最初に言い出したのは誰なのかしら?」


「ギャルゲーの金字塔じゃない事は確かだな」


 良い歌なんだけどな、アレ。


「とにかく、小太郎も努力するのよ。勉強とか、スポーツとか……ファッションとか。委員長云々は置いておいても、その努力は将来絶対小太郎の糧になるわ」


「ファッション、ね……男は中身で勝負じゃないのか?」


「中身……あるの?」


「……」


 言い難い事をズバッと聞きやがる。どうせ俺には中身なんかねえよ!


「『男は中身だ!』って意見自体を否定するつもりはさらさらないけど、『外見は関係ない』って意味じゃないのよ? 外見を上回る中身があれば外見は補えるけど、中身も外見もある方がいいのは当然でしょ?」


 確かに。中身も良くて男前と、中身は良いけど不細工なら前者を取るわな。


「まあそういう訳だから、大船に乗ったつもりでいなさいよ! 心配しないで! 小太郎をモッテモテにしてやんよ!!」


 そう言っていい笑顔で俺の肩をバシバシ叩くユメ。


 そんな事してる暇があるなら、さっさっと『にゃんにゃん』して帰れよ、と思わないでも無いけど、そんなこと言ったら殴られるのは目に見えてるからな。だから、代わりに盛大にため息をついておく事にしよう。


 ……なんか、今日一日でため息の量増えたよな、俺。


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