第39話

 忙しい日々があっという間に過ぎ去り、決戦の日がやってきた。


 修理に二日。対エルラーザ用に艤装と改造に四日。補給に一日。それらを三人(とはいっても工作型甲殻兵を六体は使用けどね)で仕上げられたのが今でも不思議でならないわ。


 船橋組も朝から晩まで仮想訓練の繰り返し。気絶嘔吐も繰り返したそーよ。


 半日爆睡してから六騎団を空戦使用にしている鋼騎を見たあとにラ・シィルフィー号の飛行試験。不備なところを改善して寝たら約束の日になっていた。


 ラ・シィルフィー号の部屋の床で目覚め、中央甲板に出ると、まだ世界は闇に包まれていた。


「……暁に輝く星は一条のみ……」


 秘密基地の中心にある船渠池に浮かぶラ・シィルフィー号から天に輝くエルラーザを感慨げに見てたら知らずに声に出していた。


〈……二つは輝かない……〉


 いつの間にか現れた銀騎が同じ気持ちを呟いた。


「皆は?」


〈六騎団は"部屋"で待機。天女たちは着替え中です〉


「うん」


 返事して船橋へと上がった。


 船長席に座り瞑想していると、昇降路から防護服の後継着──『飛翔服』を身に纏った天女たちが上がってきた。


 シズミルの母親で、技導師でもあるグレーチェン・ローダーの実験室で発見(ここを探検していた蒼騎とセルレインがね。まったくなにやってんだか)し、その性能の良さに採用することにしたんだってさ。


 瞑想したままそれぞれの気配を感じる。


「船橋、配置完了です」


 副長のルミアンが全員が座ったことを確認して報告の声をあげた。


「支援船橋も配置良いよ!」


 支援船橋と繋がる伝声管からシズミルの声が届いた。


「ドゥ・シャトゥーも用意良いよ」


 第一格納庫に繋がる伝声管からパルアの声も届いた。


〈六騎団、配置完了です〉


 六騎団の団長たる銀騎から思念波が届いた。


 報告を受け、瞑想から目覚める。


「ラ・シィルフィー号、始動」


「ラ・シィルフィー号、始動します!」


 第一、第二魔力炉が目覚め、天に輝くエルラーザのように強く輝き出した。


「ドゥ・シャトゥー、用意」


「ドゥ・シャトゥー、始動開始。魔力連結路良し」


「第一、第二ともに異常なし。飛行式組、風進機にも異常なし。全て順調だよっ!」


「各浮標からの映像に船光なし。波穏やかにて空漆黒です」


 各自担当を次々とこなして行く。気絶嘔吐を繰り返しただけあるわね。


「ラ・シィルフィー号、発進準備完了です!」


「では、決戦の空へ!」


「ラ・シィルフィー号、発進します!」


 折り畳んだ翼を羽ばたかせるように、ラ・シィルフィー号は聖なる空へと舞い上がった。

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