第46話 二度と舐めた口利くんじゃねぇぞ その2
変わったといえば、大きな変化がレイナのスマホ内でも起きていた。
「しっかし、デカくなったもんだなマチョル」
ゴブソイルからグランドーガへ神化したマチョルは、人間の大人よりも大きな体躯へと急成長していた。
「あぁん? 舐めた口利いてんじぇねぇぞ」
「は?」
「忘れたのか、オイラは先輩だ。今やグランドーガになったオイラのパワーの前じゃ、てめぇ如き一捻りよ」
どうやらマチョルは、力を得て大いに調子に乗っているみたいだった。
グランドーガになったことで、持っていた棍棒はいつの間にか金棒にグレードアップしているし、パワーもゴブソイルのときとは段違いだろう。調子に乗るのも頷ける。
「また力関係をわからせなきゃいけないのか……」
「お? 神化もしないでオイラに勝てるとでも?」
「ああ、思ってるよ」
俺の言葉に激高すると、マチョルは金棒を振り上げて襲いかかってきた。
「舐めるなよ! 下克上ッス!」
いや、普通に子分口調漏れ出てるって。
「二度と舐めた口利くんじゃねぇぞ」
「ずびばぜんでじた……」
そして、数分後。初めて会ったときと同様に、マチョルはボコボコに腫れ上がった顔で土下座をしていた。
「い、いやぁ、アニキはやっぱり強いッスね」
あれだけ痛い目にあったというのに、懲りずに俺のことをアニキと呼び慕うマチョルのメンタルには感服する。というか、そもそも俺に喧嘩を売るんじゃない。
「武器取られたら俺に勝てないことくらい、いい加減学習しろよ……」
「金棒なら重くて持てないかなーって……」
「そんなもんバフでどうにでもなるだろうが」
本当にこの先大丈夫だろうか。実力的には強くなったはずなのに、不安が拭えない。
レイナのミシカライザーとしての実力は疑う余地もないが、俺達のモンスターとして地力が追い付いていないのだから、気を引き締めなければいけないだろう。
「ったく、しっかりしてくれよな」
マチョルはレイナの使役するモンスターの中でも、攻撃の核となる重要なポジションを担うことになるのだ。もっと自覚を持ってもらいたい。
「そうだ、すっかり忘れてた。これからよろしくな、サンドラ」
土下座しているマチョルに腰掛けながら、横で立ち尽くしていたサンドラに声をかける。
サンドラは竜の特徴を持つ人型のモンスターのため、他種よりも見た目の差異が大きい。この子の場合は小柄な女の子といったところだろうか。
身体の一部は竜鱗で覆われており、髪は伸ばしっぱなしだったからか、前髪で右目が隠れている。あとは背中に翼があるが、今は畳んでいるようだ。
「ひっ! わ、私、精一杯お役に立てるように頑張りますので、これからもご指導ご鞭撻のほど何卒宜しくお願い致します、先輩!」
何故か怯えられながら丁寧に挨拶をされてしまった。
しまった。この子はチャガのところでさんざんバイオレンスな日々を送っていたんだった。ようやく救い出されたと思った矢先に、仲間内で喧嘩しているような奴らに話しかけられたら警戒して当然だ。
「安心してくれ。これはただのじゃれ合いみたいなもんだ」
「いじめっ子はみんなそう言うんスよ」
「お前はちょっと黙ってろ」
余計なことを言いそうになったマチョルを黙らせると、俺は改めてサンドラに向き直った。
「俺達は敵じゃない。これから一緒に戦っていく仲間だ」
「仲、間?」
「ああ、そうだ。主のレイナも君に酷いことはしない、これから一緒に――」
「サンドラー!」
サンドラを安心させようとしていた矢先、俺の言葉を遮ってレイナがこちらに向かって走ってきた。
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