第35話 炎上のミシカライザー
「なんだと?」
聞き捨てならなかったのか、へらへらしていたチャガの表情が強ばる。
「グリムゾン、タキビバチ、グリフォイア、カガリ・ビコリ。どれもケイム選手の使役しているモンスターの二番煎じじゃない」
言われてみればそうだ。
グリムゾンはベアルゴン、タキビバチはヴェスピマキナ、グリフォイアはそのまま、カガリ・ビコリはキュー・ビコリ。今のスタメンとは違うが、どれも当時使役していたモンスターと元を辿れば同じモンスターである。
「全部火属性に統一して神化させたのは、育成が楽だから。ケイム選手みたいにバランス良く育てられなかったのが透けて見えるわ」
「んだとてめぇ!」
挑発的なレイナの言葉にチャガの怒号が飛ぶ。
「魔力も禄に足りない神童崩れがわかったようなこと言ってんじゃねぇぞ!」
「大言壮語も甚だしいって言ってるだけよ。バーカ!」
「ちょ、レイナ。落ち着いて!」
どうやらレイナもチャガも著しく煽り耐性が低いようだ。間に入るアビィの胃が心配である。
「レイナも必要以上に煽らない! チャガ選手は訓練場の申請してないんだから大人しく外に出てて!」
睨み合い火花を散らし合う二人の間に、アビィが物理的に割り込む。
「チッ……外でやると炎上するから訓練場やれって言われてたが、まあいいか」
興ざめした様子でチャガは去っていく。本当に迷惑な奴である。
「……炎上か」
「アビィさん?」
アビィはチャガの言葉が引っかかったようで、顎に手を当てて考え込んでいる。
「あの噂、本当なのかな」
「噂ってなんですか?」
首を傾げるレイナに、アビィは表情を曇らせて答える。
「チャガ選手がモンスターを虐待してるって噂だよ。前にSNSにチャガ選手が使役しているモンスターで一体のモンスターを攻撃している様子が動画で上がったことがあったの」
「ひっどい! 石版管理局は何も言わなかったんですか!?」
「チャガ選手曰く、あくまでもトレーニングの一環で厳しく育成している様子が勘違いされたってことで片付いたんだ。むしろ、無断で動画を撮られてネットにアップされたってことで、チャガ選手が動画投稿主訴えたくらいだよ」
最近は有名人の不祥事はすぐに暴露される時代だ。
俺はその辺は気をつけていたから不祥事なんて起きることもなかったが、俺のトレーニングの様子も知られていたら炎上していたかもしれない。
レイナはチャガのことを俺の足下にも及ばないなんて言っていたが、実際のところそこまで差はないようにも思える。
「虐待に間違われるほどのトレーニングって……」
カスレア如きを助けるために上空バンジーを決めたレイナからすれば、チャガのやっていることは許されることではないのかもしれない。
いや、そもそも賭けで使役モンスター全部失うレイナも大概だとは思うが。
「チャガ選手のあの様子だと、広いスペースがある場所でやりそうだよね……」
アビィは複雑そうな表情を浮かべていたが、仕切り直すように頭を振って笑顔を浮かべた。
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