第20話
アラームの音で目が覚めた俺は、見慣れない部屋を見渡し、五日前に引っ越したことを思い出す。
まだ、段ボールすべてを片付けることができてなかった。
購入したベッドとテーブルも、まだ届いていない。
契約した部屋がエアコン付きではなかったため、エアコンだけは早急に購入して取り付けてもらった。
エアコンの音だけが聞こえる。
冷蔵庫もなく、朝ご飯を用意することもできない部屋で、一人で出勤準備をして着替えて外に出た。
真新しい鍵で施錠すると、ポケットにしまう。
コンビニでパンを買って、会社に向かった。
実家よりも通勤時間が短くなったことは嬉しい。
駅の改札を通る。
まだ慣れない駅のホームで電車を待っていると「おはよう。一人暮らしはどう?」と夏生からメッセージが入る。
実家暮らしだった俺は、起床し誰とも会話しないまま職場に向かう朝が、一番しっくりこない。
「おはよう。寂しい」と夏生に返した。
明日のために、仕事から帰ったら、段ボールを片付けよう。
漸く土曜にベッドやダイニングテーブルの家具が届く。
そして、家電も。
新しい生活のスタートだった。
翌日。
午前中にベッドとテーブルが届き、組み立てをしてもらい、何もなかった部屋が人が住める部屋に変わった。
午後になり再びインターホンが鳴る。
この時を待っていた。
その人は玄関ドアの鍵を俺が開ける前に、自ら開けて入る。
俺と同じ鍵を手に持った夏生だ。
「俺達の部屋だな」
あの日、イタリアンレストランで、夏生は俺に言った。
「悠生とは暮らせないって伝えた。健と一緒がいい」
それを聞いた俺は「早く食べて帰るよ」と言った。
飛び上がるほど嬉しかった。
「もう嬉しい。じっとしてられない。抱きしめたい」
「大袈裟だな」
夏生は笑った。
「だって、本当に嬉しいんだよ。早く部屋決めて契約しよ。夏生の気が変わらないうちに引っ越そう。家具も家電も買わなくちゃ」
「家電は、今、使ってるのでよくないか?」
「そうだったね。早くしなきゃ」
そこから柴経由で部屋を契約したのは、二週間後だった。
目星をつけていた部屋が、まだ残っていると聞き、すぐ内覧したのだ。
七月初めの入居日は、俺が先に引っ越して、一人暮らしかのような生活を過ごした。
一週間後の今日、夏生がマンションを引き払い、晴れて二人の同棲生活が始まるのだ。
夏生に続き、引越し社のトラックも到着すると、次々と荷物が運ばれ、あっいう間に終わった。
トラックが去ると「疲れた」と言う夏生のためにテーブルで一息つく。
インスタントコーヒーを飲んだ。
購入した長方形のテーブルと椅子の触り心地を確認する夏生に、
「ベッドは見た?」
と新しいダブルベッドがある部屋に連れていく。
間取りは2DKだ。
すぐに寝れる状態のベッドに横になった夏生に「どう?」と訊いた。
「このまま寝ちゃいそう」
それは困るな。
瞼を閉じた夏生の胸に顔を寄せ、服越しに突起を探る。
「寝ちゃう?」
手のひらは、脇腹から下腹部に下がる。
「汗かいてるからやだ」
「臭くないよ。それとも俺が臭いから嫌?」
夏生が横に頸を振る。
服の上から甘噛みした。
そして、動きやすそうな夏生のハーフパンツの裾から手を侵入させる。
俺の腕が入っても余裕があり、ボクサーパンツまで届いた。
俺の腕が這うように動き、膝丈のハーフパンツの中で見えない場所を犯す。
夏生は徐々に興奮していく。
頬が染まり、快感を堪える様子が可愛いて、俺も下腹部が熱くなった。
「可愛いな」
俺の手のひらは、夏生の足の付け根を弄り、大きく成長した形を指先で辿る。
甘噛みも続けた。
「どうする?嫌?」
「…脱がせて」
夏生が腰を上げて、するっと下着ごと下ろす。
胸の周りだけが俺の唾液で濡れたTシャツも脱がした。
指の腹でそっと触れると、夏生の体が小さくびくっと跳ねる。
「エロいな」と思わず口につく。
ジェルを垂すと、もう一度、夏生がびくっと震えた。
「気持ちいい?」
「いい…」
夏生は腰が揺れ出し、眉を寄せ身を捩る。
中にある敏感な場所を指の腹で押すと、夏生の腰がシーツから浮き、右足掻く。
俺もデニムを脱ぎ捨て、夏生の片足を広げた。
「待って」と夏生は言うが、顕になった場所に自身の先端を当て、くぷりと侵入する。
苦しそうなのは飲み込むまでで、根元まで入れると吸い付くように形が馴染む。
もう俺の形になっているんだ。
「夏生、好き」
腰を小刻みに揺する。
気持ち良過ぎだ。
「ずっと一緒だよ」
ゆっくりと腰を引き、柔らかい中を押し広げるように何度も打ちつけた。
半開きになった夏生の唇に唇を重ね、奥を突くたび、夏生が甘い声で鳴く。
「ほら手繋いで。ね」
激しく速く突き上げ、執拗にそこを何度も狙う。
「ああっ」
心臓の音が速く刻み、絶頂が近づく。
同時に果て、失神したかのように脱力した夏生は俺に体をあずける。
顔を覗き込むと、閉じた瞼が開いた。
「好きだよ」
俺が繰り返し言うと、惚けた表情の夏生の額にキスする。
「俺の気持ち伝わってる?」
「うん」
夏生が可愛い。
毎日、朝起きたら夏生がいて、夜も一緒に寝て、今日も明日も、これからずっと続く時間を二人で過ごす。
俺がどれだけ夏生を好きで、独占欲で満ちているか、知ってほしい。
何度でも好きだ、と伝え続ける。
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