第16話

また時は流れて…


2017年7月6日の昼過ぎであった。


ふさこが通っている中学校の3年生は、夏休み期間を利用して修学旅行に行く予定であった。


クラスの子たちは、各班ごとに分かれてプランニングを立てていた。


行き先は、ロスアンゼルスと沖縄と関西の3方面であった。


ふさこは、プランニングに入らなかった。


教室のすみでひねくれていたふさこは、勝手に教室から出たあとピロティの広場へ行った。


ところ変わって、ピロティの広場にて…


広場のベンチに座っているふさこは、ものすごく怒った表情でつぶやいた。


修学旅行なんか大キライ!!


修学旅行なんか大キライ!!


今のふさこの気持ちは、修学旅行に向いていなかったので修学旅行に行くことをやめることにした。


そのような原因を作ったのは、あきひこであった。


あきひこは、毎晩のように職場の若い従業員さんたちの晩ごはんのお世話をしている…


晩ごはんのお世話と言うのはタテマエで、ホンネは『ノミ・ウツ・カウ』のお世話であった。


若い従業員さんたちがあきひこを慕っている…と言うのもタテマエで、ホンネはあきひこのサイフをアテにしているだけであった。


若い従業員さんたちの甘えが原因で、ふさこの怒りが高まったと言うてもカゴンではない。


ふさこは、あきひこに対するうらみつらみをさらに高めたと同時にあきひこの職場の従業員あまったれどもを殺すことを考え始めた。


またところ変わって、下妻の中心地にある工場の自販機コーナーにて…


自販機コーナーにあきひこと主任の男性がいた。


あきひこは、職場の主任の男性から『今夜も若い従業員さんたちの晩ごはんのお世話をお願いします…』と申し訳ない声で言われたで、ものすごくイヤな表情をしていた。


主任の男性は、ものすごく申し訳ない声であきひこに言うた。


「三河島さん…三河島さんにイヤな思いをさせたことについてはあやまるよぉ…せやけど、若い従業員さんたちは自分たちで料理を作ることができないのだよぉ〜」

「自分たちで料理することができないだと!!」

「三河島さん…このとおりです…」

「もうしわけないと想うのであれば、若い従業員さんたちに結婚相手と出会う機会を与えてください!!」

「分かってるよ…せやけどうちは(お給料が)安いのだよ…」

「安いからなんだと言いたいのですか!?」

「安かったら、お嫁さんをやしなうことができないのだよ〜」

「またそれ…うんざりだ!!」 「三河島さん…」

「なんですか!?」

「この通りでおますさかいに…」

「若い従業員さんたちは、どうして自分たちで料理をしないのですか!?」

「だから、若い従業員さんたちは親御さんから『男子チュウボウに入るべからず…』って厳しく言われているのだよ〜」

「なにを言ってるのか…主任!!」

「なんやねん〜」

「『男子チュウボウに入るべからず』の意味を辞書で調べてください!!」

「分かったよぉ〜」

「あの若造らはどこのどこまで甘えているのか!?…お昼に出されるお弁当に文句ばかり言うてるじゃないか!!…『まずい』『おいしくない』『味がうすい』『きらいな食べ物が多い』『イヤだ!!』『温かい料理が食べたい』…と言うてお弁当を残している…お弁当を食べなければお腹がすくと言うてるのに言う事を聞かない!!…ふざけるな!!」

「三河島さん…若い従業員さんたちは悪気があって三河島さんのサイフをあてにしているわけじゃないのだよ…」

「悪気がなかったら何だよ!!」

「若い従業員さんたちは三河島さんのことを慕っているのだよ…下妻ここには友人知人がひとりもいないのでさびしいんだよ…この通り…」


あきひこは男性主任から言われた言葉に対して、しぶしぶとショウダクした。


男性主任さんはヘラヘラとした表情で『おおきに…ほな今夜もよろしゅうたのんまっせ…』と言うた後、自販機コーナーをあとにした。


その日の夜7時過ぎであった。


ところ変わって、関東鉄道常総線の下妻駅の商店街の裏手の酒場街の露地にあるマージャン屋にて…


店内には、あきひこと20代の男性従業員さん4人がいた。


若い従業員さんたち4人は、あきひこのお金を利用してかけマージャンを楽しんでいた。


大量にたばこを吸って、アルコール類をガバガバのんで、脂っこい丼物や天津飯やあんかけ麺などを食べながら『リーチ』だの『ロン』だの『ポン』などと叫んでいた。


あきひこは、よりするどい目つきで4人の従業員さんたちをみつめた。


20代の男性従業員さん4人は、最初のうちは楽しいと思っていた…


しかし、日をおうごとに負い目を感じるようになった。


若い従業員さんたちは『このままだと、おれたちはダメになってしまう…』と危機感をつのらせた。


この時、従業員さんたちのひとりが泣きそうな声で言うた。


「なあ…」

「何や…」

「オレ…帰りたいよぅ〜」

「何だよオメー…せっかく三河島さんがぼくたちのお世話をしてくださっているのだぞ!!どうしてつらい表情で言うのだよ!!」

「オメーは、このままでいいのかよ!?」

「なんだよ急に!!」

「オメー!!このままだとおれたちはダメになるのだぞ!!」

「分かってるよ!!そんなことはいいからマージャンを楽しめよ!!」

「なんだよテメー!!」

「なんで急に怒るのだよ!?」

「怒りたくもなるわ!!」

「なんやコラ!!」


4人の従業員さんたちは、酔った勢いで大ゲンカを起した。


それから7時間後の深夜1時過ぎであった。


ところ変わって、タクシーの車中にて…


後ろの席に、メンバーで1番若い男性従業員さんのAさんが乗っていた。


Aさんは、シートの上に横になった状態で寝ていた。


車内に、Aさんのイビキが響いた。


タクシーは、小貝川の河川敷の公園に到着した。


Aさんの家は、河川敷の公園から歩いて7分のところにある。


Aさんは河川敷の公園から歩いて帰る予定であったが、まだ寝ていた。


運転手さんは、ものすごく困った声で言うた。


「お客さん…お客さん起きてください…ここから歩いて帰るのでしょ…」

「眠い…」

「お客さん!!タクシーは寝台特急ブルートレインじゃありませんよ!!」

「グーーーーーーーーーーーーーッ!!グーーーーーーーーーーーーーッ!!グーーーーーーーーーーーーーッ!!グーーーーーーーーーーーーーッ!!グーーーーーーーーーーーーーッ!!グーーーーーーーーーーーーーッ!!グーーーーーーーーーーーーーッ!!」


Aさんは、ものすごく強烈なイビキをかきながら寝ていた。


思い切りブチ切れた運転手さんは、Aさんを公園のベンチの上に寝かせたあとAさんのご家族に電話した。


Aさんの帰りを待っている母親は、韓流ドラマのDVDを見ながら脂ぎったデリバリーピザをさかなにアサヒカクテルパートナーのスクリュードライバーをのんでいた。


家の電話の着信音が鳴り響いた。


それなのに、Aさんの母親は電話に出なかった。


タクシーの運転手さんは、Aさんを置き去りにした後、タクシーに乗ってどこかへ逃げた。


恐ろしい悲劇は、それから数分後に発生した。


大きなイビキをかいてベンチでごろ寝をしているAさんの前に、白のブラウスとマゼンタとシルバーのチェックのスカートのふさこがやって来た。


ふさこは、ものすごく怒り狂ってた表情でAさんをにらみつけた。


それから1分後であった。


ふさこは、刃渡りのするどいナイフでAさんののど元をりつけて殺した。


それから5時間後であった。


河川敷の公園に、地区の住民のみなさまがやって来た。


住民のみなさまは、ラジオ体操を始める準備をしていた。


その時に、30代の奥さまがより強烈な叫び声をあげた。


「ギャァァァァァァァァァァァァ!!ギャァァァァァァァァァァァァ!!」


この時、ベンチの上で寝ていたAさんが刃渡りのするどいナイフでズタズタにり裂かれて殺されていたのを見た。


(ウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウー!!)


それから20分後であった。


茨城県警けんけいのパトカー10台がけたたましいサイレンを鳴らしながら現場にやって来た。


ケーサツは、Aさんの家に電話をかけたが電話に出なかった。


この時、Aさんの母親はイビキをかきながら寝ていたので電話の着信音に気がつかなかった。


Aさんが死亡した知らせを家族が受けたのは、それから20時間後だった。


Aさんの家族たちは『知らない…』と言うてるので話にならない。


どうなってるのだ一体(ブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツ…)

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