第14話

コウスケが奈美に対してストーカー〜レイプ殺人を犯した事件は、被疑者死亡で横浜地検ちけんに送検する形で終えた。


その一方で美香子が命を絶った翌日以降、両親はより激しいイライラをつのらせた。


両親は、多香子に対してオムコさんをもらうと強要した。


しかし、多香子がかたくなになったので話し合いができなくなった。


多香子に老後の楽しみをうばわれるのがイヤな両親は、多香子に対してあつかましく言うた。


『あせりなさい!!』

『おとーさんとおかーさんは時間がないのよ!!』

『おとーさんとおかーさんの老後の楽しみをうばわないでよ!!』

『誰でもいいからオムコさんを家に入れてよ!!』

『高収入のオムコさんをもらえ!!』


……………


多香子の両親は、多香子に対して強要しつづけた。


これに対して、多香子は激しく反発した。


多香子の両親は、ひどく困り果てた。


時は流れて…


2017年1月12日の午後3時過ぎであった。


場所は、鶴見にある工場の配送センターにて…


多香子の父親は、自販機コーナーで永富ながとみさんの奥さまと話しをしていた。


多香子の父親は、この最近うっかりミスや凡ミスばかりを繰り返していたので思うように働くことができなかった。


加えて、多香子に老後の楽しみをうばわれるかもしれないと思うようになったのでなお悪い…


多香子の父親は、永富ながとみさんの奥さまに対して『多香子が両親の思いに答えない…』と言うたあといじけた。


永富ながとみさんの奥さまは、多香子の父親に対してこう言うた。


「困ったわね…お話はよく分かりましたが…ちょっと、理解できない部分があるので一言だけよろしいでしょうか?」

「ワシに対して意見する気か!?」

「あの…多香子ちゃんがご両親の思いに答えないと言いましたが…あなたがおっしゃる両親の思いとはなんでしょうか?」

「だから、多香子が親元から離れたらいいのです!!」

「あなたは、多香子さんを家から追い出すのですか?」

「そうですよ!!」


永富ながとみさんの奥さまは、困った声で言うた。


「それなら、多香子ちゃんの言い分を一度聞いた上でハンダンした方がいいのではないでしょうか?」

「多香子の言い分を聞けだと!!」

「どうしてそんなに怒るのよ?」

「多香子の言い分は甘えだ!!」

「どうして決めつけるのよ?」

「親の言い分が最優先だ!!ワシは老後の楽しみをうばわれるのはイヤだ!!」


永富ながとみさんの奥さまは、あきれた声で多香子の父親に言うた。


「老後の楽しみをうばわれるのはイヤだって…それはどう言う事ですか?」

「イヤだと言うたらイヤだ!!」

「分かりました…お父さまがそこまでおっしゃるのであればうちはどうすることもできませんわ…話しを変えるけど、お父さまがおっしゃる老後の楽しみと言うのはなんでしょうか?…その前におたずねしますが…お父さまは、多香子ちゃんにどんな人生を望んでいたのですか?」


多香子の父親は、怒った声で『結婚して子を産んでほしかった…それしかない!!』と言うたあと悲しげな声で言うた。


「ワシは…オムコさんと酒がのみたいん…オムコさんにワシのぐちを聞いてほしい…ワシは…孫に『ジイジ』…と呼ばれたい…それがワシの楽しみじゃ…」


永富ながとみさんの奥さまは、困った声で言うた。


「お気持ちはよく分かりますが…あなた方の一方的な思いだけでは、多香子ちゃんの結婚は実現できないのですよ~」

「そんなことは分かってる!!」

「でしたら、多香子ちゃんの言い分を…」

「なんで多香子の言い分を聞くのですか!?」

「多香子ちゃんがどんな生き方を望んでいるのかを聞くためよ~」

「多香子は甘えているのだよ!!」

「お父さま。」

「なんだ!!」

「お父さまが一方的に多香子ちゃんを押さえつけたら、そのうち家族関係が壊れるわよ…お父さま、美香子ちゃんがリスカで命を絶った事件をもう一度思い出してください…リスカした原因がなんであるのかと言う事がまだ分からないみたいね…あなたがお見合いの席で大酒をのんだ…酔った勢いで失言を発した…あげくの果てに、お見合い相手に暴力をふるった…その挙げ句にお見合いが壊れた…お父さまがアレコレと文句言い続けた結果、仮出所中の前科持ちの男がムコに入った…と言う事でしょ…」


永富ながとみさんの奥さまは、おそまつな色の封筒を差し出しながら言うた。


「これ、お父さまにお渡しします…多香子ちゃんのお見合い相手の写真です…相手はまた前科持ちの男よ…」


その後、奥さまは多香子の父親の前を立ち去った。


多香子は、永富ながとみさんの奥さまの紹介で下妻市本城町しもづまほんじょうで暮らしている奥さまの知人のご夫婦の遠い親類の家の夫婦のひとり息子さん(58歳・配送業勤務)と強制的にお見合いして、結婚することになった。


多香子の再婚相手の男性には、14歳の中学二年生の長女がいた。


カノジョは、実の母親を父親から受けたDVが原因で亡したので、母親がいない子供であった。


お見合い相手は、前妻に対するDVで裁判所から執行猶予8年つきの有罪判決を下されていた。


お見合い相手の執行猶予の期間は、2018年3月に明ける…


執行猶予期間内に心の底から反省をしているので、多香子と再婚する…と言う事である。


2017年3月10日に、多香子はお見合い相手の男性と再婚したあと下妻へ移った。


多香子の両親は、老後の楽しみを送ることができると喜んだ。


めでたしめでたし…


…………


…と思ったら大きな間違いであった。


これより、恐ろしい悲劇の第三の幕があがった。

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