第3話 クラゲ星人

カイとツバサが夜間のパトロールをしていると、湖に面した駐車場の真ん中にクラゲ星人が二体いるのを発見した。



「おい、お前ら何やってるんだ」


カイが懐中電灯を向けた。



『あ、どうも。僕たちは双子のクラゲ星人。電気クラゲのデンと、毒クラゲのドクです』


『どうも。僕の方がドクだよ』


全く見分けがつかない。



「なるほど。で? 何やってるの?」


カイは質問を続けた。


『僕たちは今、”準”友好型宇宙人じゃないですか。ちゃんと友好型に認定してほしくて、地球人のことをリサーチしてました』


「こんなところで、何をリサーチするの?」


ツバサが言った。



『車内でイチャつくカップルを観察します』


「ただの覗きじゃん!」


カイが言った。



『僕たち半透明なんで、車のガラスにピッタリくっつくくらい近づいて見ても、バレないんだよねー』


「ダメでしょ、人の情事を覗きみちゃ!」


『ただの覗きじゃありません! 学習のためです! わかりました、そんなに言うなら、僕たちの学びの成果を見せて差し上げましょう!』


電気クラゲのデンが、素早く触手を伸ばしてカイの腕を掴み、電気を流した。



「うわっ! 何す……っ!!」


カイは痺れて、動けなくなった。


倒れそうになったのを、デンの触手が優しく支えた。



『ではっ、我々の研究に研究を重ねた技の数々を、とくと味わいたまえ!』


「ツバサ……助けてよ……」


カイはダメ元で言ってみた。



「……ご好意だから、断れない」


やっぱりな!!



ドクがカイの後ろに回って触手を地面に並べ、デンがカイをその上に寝かせた。

デンが、カイの服を脱がして、一本の触手をカイの目の前に差し出した。



『これまで、タコ星人もイカ星人も、カイ君の攻略に失敗しました……。それは、カイ君への歩み寄りがなかったからだと思うんですね』


「今も……無いよね……痺れさせてるし……」


『だから、やはり”触手なら手数とぬるぬるであへあへするだろう”という、傲慢な考えをやめるべきだと思うんです』


「人の話……聞けよ……」


『ですから、ここは、地球人にとって馴染みのある形にすべきだと思うのです』


デンは、そう言い切ると触手の先の形を、人間のような口にした。

口がパカッと開くと、歯も舌もある。



「怖いよっ!」


カイは力一杯叫んだ。



『キスしたり、舐めたり、甘噛みしたり、その他あらゆる口唇を使った行為に適しています』


「ひぃっ!」


カイは慄いた。



『ごめんね、ツバサ君、放置プレイで。まずはカイ君から』


「あ、僕はお構いなく。むしろ、カイがどうやったら気持ち良くなるか、僕も知りたいんで」


「なん……で、1対3なの……」


『なんと! そうでしたか、カイ君は”そんなちまちまとしたプレイやってられっか!4人で楽しもうぜ!”ってことなのですね?』


「ちがう! そういう……意味じゃない……」


『さすがカイ君……それじゃあタコとイカごときに満足しないはずだ……』


ドクがため息をつきながら言った。



『ドク、作戦変更だ! カイ先生に手加減など不要!』


『わかったよ、デン』


そう言ってドクは、カイにぶっすりと針を刺した。



「いってぇっ!!」


『この毒は、メスをその気にさせて、速やかに交尾をするために使います』


もう、ダメじゃん……

そもそも二体いた時点で敵わない。



デンの擬似口唇が動き始め、ドクの触手がカイの頭をなでなでする。

そして、それをジッと見るツバサ。


もう、何コレ。



♢♢♢



カイは、くすんくすんと泣きながら、ドクの膝にすがって泣いていた。

ドクが、よしよし、と頭をなでる。



『いかがでしたか、ツバサ君』


「いや、もう最高でした。カイのあんな姿……。ありがとうございます、動画はバッチリ撮れました」


デンが、ふっふっふっ、と笑った。



『今回、ツバサ君は参加できませんでしたが、多数の異星人交遊の仕方も研究しておきますね』


「はい、よろしくお願いします」



ツバサはカイの元に行き、カイを優しく抱き起こした。


「カイ、一緒に帰ろう」


カイは涙を拭いながらこくん、と頷いた。

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