第2話 イカ星人

人気のない公園で、イカ星人がぬるっと地味に出てきた。


「うわ! びっくりした! なんで探索機が反応しないんだよ!」


カイが叫んだ。



「もう、友好型宇宙人が確定してるからじゃない?」


そういえば、そうだった。

国が定める宇宙人区分と、取り扱いが改訂されたばかりだった。




『コンバンハ、お二人とも。ワタシはタコ星人の友人デス。彼から、お二人に会ったらゼヒと、頼まれゴトをされていマス』


「頼まれごと?」


カイがそう言った瞬間に、イカ星人の触手が伸びて、カイが後ろ手に縛られる。



「おい! どこが友好型だよ!」


『タコ星人から、”カイ君を気持ち良くさせられなくて、後悔している”と』


「いや! いいよ! 俺は!」


イカ星人の触手がスルスルと服の中に入ってくる。



「ツバサ! 助けて!」


「……カイにも……もっとタコさんとイカさんと、仲良くなってほしいな……」


ツバサはもじもじしながら言った。



「お前っ!!」


『アンマリ叫ぶと、ご近所さんが迷惑シマス』


イカ星人の触手で、口が塞がれる。


うにょうにょと服の中で触手が動くが、気持ち良くはない。




「……イカさん……カイは、意外とロマンチックなんで、触っただけだと気持ち良くならないんだと思います」


『そうなノカ。地球人ハ複雑ですネ』


ツバサがカイに近づいて、口元の触手を外した。



「ツバサ……わかってくれて良かったよ、俺こんな触手で勝手に体を触られるなんて嫌だ……」


カイは涙目で言った。



「……やっぱり……ハジメテは、地球人同士がいいよね……」


ツバサが潤んだ目で、上目遣いに言う。



「え? 言葉通りならそうだけど……」


ツバサがカイの頭に手を回して、唇に吸い付いた。



「んがっ! あ! ちょっ……!!」


そういう意味?!



『そうでしタカ。墨ません、地球人の気持ちガわかってナクテ。ア、よかったらラ、この”100%天然〜全ての生命は海から生まれた〜母なる海からの贈り物スーパーぬるぬるローション”使ってください。』


「……カイにとっては、僕じゃ物足りないかもしれないけど、がんばるね♡」



♢♢♢



カイはしくしくと泣きながら、公園の木の根本で体育座りをしていた。


「……やっぱり、僕なんかじゃダメだったんだ……」


ツバサはしょんぼりして言った。



『そんなコトありまセン。カイ君も気持ち良くアエイデマシタよ。まあ、ご近所迷惑にならないヨウニ、私の触手を口にツッコんでいましタが』


「でも……ほら、落ち込んでる……」


『初体験が、相手が親友デ、場所が野外デ、宇宙人同席だったノガ、ショックだったダケで、ツバサ君とは気持ち良かっタと思いますヨ。自分を責めナイデください』


イカ星人が触手でツバサの頭をなでた。




ツバサはカイのところに行った。


「ごめんね、カイ。心の準備が追いつかないままヤッちゃって……」


「いや……準備ができたらいいかっていうと、そんなんじゃなくて……」



『もしカシて! カイ君は、自分が攻めキャラだと思ってイタノデハ??』


「ああ! じゃあショックだね!」


「ちがう! そんな話じゃないよ!」


イカ星人はツバサの服を器用に脱がして半裸にすると、そこかしこに触手を這わせた。



「ふあっ♡ やだ、カイの前で……♡ 恥ずかしいよ……♡」


ツバサは触手の感触に身悶えしている。



『カイ君がイメージしてタ、ツバサ君は、こういう感じですよネ?』


「してないよ! イメージ! もう俺帰る!」


カイが立ち上がろうとすると、イカ星人の触手が足を掴む。



『ツバサ君が、一人ジャかわいそうデハありまセンカ』


「知らない! 二人で楽しくヤッてろよ!」


「僕もまだ、初体験は未経験なの……」


「え?! じゃあ、よくそんな状況で俺にはしたよね?! あのタコは??」


「タコさんの時は、先っちょだけだし、ヤッたうちには入らないよ……」


「知らないよそんなの! もう放して!」



『毒を喰わらバ皿マデ』


「僕だって、ハジメテは地球人……いや、カイがいいよ……」


「やだ! もう帰して! お願いだから!!」



♢♢♢



カイは、木にしがみついて、しくしくと泣いていた。


『”口では嫌と言っておきながら、体は正直よのぅ”プレイ……楽しいですね……』


「うん……カイが、そんな特殊プレイの達人だなんて知らなかった……」


「ちがっ……俺は……本当に嫌なのっ……」


カイはうえーん、と泣いた。


結局、なんだかんだで抵抗するカイに、「ほら、こうするだけだから」と、ツバサが再びしてあげることになったのだ。



「……泣いてるカイが可愛い……」


『カイ君は真性の受けデ、ツバサ君はSなんデス』


「泣いてるカイを見てると、慰めてあげなきゃ!と思って、ムラムラする……」


『Sは、サイコパスのSデスね』


徐々に夜が明けようとしていた。

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