第7話 波動
二体の念話が終わったところで、再び米軍の戦闘機が接近する音が聞こえて来た。
『本当に君たちは学習しない種族なんだな…』イオイラが呟く。
戦闘機から今度は劣化ウラン弾が発射された。劣化ウランの比重は鉄の2.5倍にもなる。質量がある分運動エネルギーも高くなり物理的な貫通力は通常兵器の比ではない。イオイラは弾道に向かって防壁を展開した。
ヒイは琢磨の意識に話しかける。
『まだ我々の意識の融合には欠けがあるようだな。イオイラが展開したのが陰波を使った防壁だ。君たちの科学力ではあれを貫通する事は不可能だろう』
ヒイの言った通り、劣化ウラン弾は自動車が鉄の壁に衝突するかのように、自らの運動エネルギーで防壁を突破すること無く、ぺしゃんこに潰れて爆発した。
『先ほどパイロットは六人殺したので、この二人はこのまま逃そう』そう言ってイオイラは去っていく戦闘機を見送った。そうしてヒイの方を向く。
『あの陰派を使った防壁というのは、我々には破れるのか?』琢磨がヒイに聞く。
『我々のエネルギーは陰派とは真逆の陽波だ。二つはお互いに打ち消し合うので、防壁は意味をなさない』
『それでどうやって彼らと戦うんだ?』
『君たちは他者とどうやって争うんだ。体と体でぶつかり合うのではないのか?』
そう言うや否やヒイはイオイラの元へとかけていくと振り上げた右拳でパンチを繰り出した。イオイラはそれを首を曲げて躱すと、空振りしたヒイの右腕を掴んで背負い投げの様に投げ飛ばした。ヒイの体が宙を舞う。そうして轟音と共に地表面に叩きつけられた。
『肉弾戦となれば融合した人間の持つアビリティが重要になる。私が融合した人間は元空軍パイロットの宇宙飛行士だ。各種格闘術も身に着けている。お前に勝ち目はないだろう』そう言ってイオイラはその表情を変える事の出来ない顔で笑って見せた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます