第4話 エリア51
「人類の80%を殺すというのはどういう意味だ!?」マークはエリックに問いただす。
「マルコ、残念だが言葉の通りだよ。この地球の文明を継続していくには人類は数が増えすぎてしまった。これでは来たるべき日の前に滅んでしまいかねない。そうならないように私達が調整する必要があるのだ」
「私達?」いつもとは違うエリックの口調にマークは戸惑っていた。
「俺は月面で彼らの意識と出会ってしまったんだ。2600万年周期で太陽に接近する太陽の二連星であるネメシス。その衛星であるニビルの知的生命体の脅威に対抗するために彼らは作られたんだ。そうして彼らは人間の肉体や精神と融合しなければ起動できない」続けて語るその口調は以前のエリックの物に戻っていた。
そこにヘリの方からマークの元へとやってきたケブィン大佐が言った。
「NASAに確認が取れた。昨日月面の洞窟に入ったきりエリック大尉は行方不明だそうだ」マークは一瞬大佐の方を見てから視線をエリックへと戻す。
「誰を殺して、誰を残すのかの選択はしない。完全にランダムに殺戮は開始される。しかし24時間の猶予はもらった。マルコ、君は家族を連れて逃げるがいい。できれば俺の家族も一緒に連れていって欲しい。これはやっと彼との間で取り交わした譲歩なんだよ」
「マーク、離れるんだ!間もなく空軍の戦闘機がやって来る!!」大佐が話を遮る。
マークはまだエリックに聞きたい事が山ほどあったが、大佐に促されてヘリへと乗り込む。その場を離れるマークと大佐を載せたヘリは三機の戦闘機とすれ違った。戦闘機からは数発のミサイルが人型に向かって放たれた。大きい爆発音があたりに響き渡る。マークは直接先ほどのエリックがいたあたりをヘリの窓越しに見てみるが、砂煙の他は何も見えない。しばらくして監視衛星からの画像がヘリのモニターに映し出された。
徐々に茶色の土煙が風に飛ばされていくと、画面の中央には傷ひとつない先ほどの人型が映っていた。マークは何となくそんな予感がしていたが、それは…エリックは全くの無傷だった。戦闘機は引き返して第二波目の攻撃に入る。しかし軍人であればそれが全く無意味な事は分かるはずだ。もっと強力な兵器を使わない限りいくら同じ攻撃を繰り返しても意味はない。
しかし状況は悪い方に動く。エリックは人類の80%を全くランダムに殺すと言っていた。今は24時間の猶予を我々に与えているだけだ。そこに攻撃を繰り返ししかけるのだから結果は分かっている。
その人型は傍らに落ちていた大き目の石をいくつか拾い上げると…いや、身長が3mもあるので石に見えるが、通常の人間からすればそれは岩と表現した方がいいのかもしれない…それを複数拾い上げて大きく振りかぶり、第二派のミサイルに向かって投擲する。岩は見事ミサイルに命中して空中で爆発した。
監視衛星からの画像は、ミサイルの行方を追う為にだいぶ引いた絵面になっていたが、爆発のあとその人型の姿は映像から消えていた。さらにひいた画面になった時には、戦闘機三機は地面に墜落して煙を上げていた。衛星画像なので音は伝わっては来なかったが、ヘリの飛行する轟音の中でもその爆発音は遅れてかすかに聞こえてきた。
監視衛星からの画像がまた人型を捉えた。しかし人型はカメラの方を向いたかと思えば、画像は一瞬揺らいだ後にブラックアウトした。
無線連絡を受けてヘリの操縦士が叫ぶ。
「監視衛星が破壊されたそうです」
「一瞬で大気圏外にある衛星を破壊したというのか…」
ケヴィン大佐の言葉に、マークは嫌な汗が背中に流れるのを感じ取っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます