第158話 二人が遊びに来た!
冬休みは毎日ハンスとガラスを作った。色々な技術を伝えブラッシュアップする。
俺がラヴァと一緒に作った最初のガラスペンをハンスは時々見つめている。そうするとガラスの精霊が嬉しそうにハンスの周りを飛び回るのだ。
「絶対気に入られてる」
(主、その通りだよ)
魔力量が基準に達したら絶対契約したいって言いそう。
俺は今ルーンの誕生日プレゼントを作っている。革紐のペンダントだ。
薄い緑色の中に花が浮かぶ小さなガラスのペンダント。
ガラスペンにするつもりだったけど、来年まで待ってて欲しい。
もう十二月も二十日過ぎているので遅くなってしまって申し訳ないけど。
出来上がったら革の袋に入れてしまう。
明日二人が遊びに来るのだ!
翌朝、玄関の前で待っていると馬車がやってきた。師匠の家の家紋が控えめの小さな方の馬車だ。
最初にタビーを拾って次に学院でルーンを拾ってきたはずだ。
馬車が停まって御者が扉を開けた。
二人が降りてきて、俺の前に来る。
「ご招待、ありがとうございます」
「あ、ありがとうございます」
「二人ともいらっしゃい!」
ルーンの視線が師匠に向かっている。そんなびくびくしなくても。前回とは違ってちゃんとした招待なんだし。
「二人ともここは学院じゃないから、気を使わなくていいぞ。ほら、中に入れ」
師匠が笑いながら中に招き入れた。まず応接室へ案内した。
師匠はゆっくりしていけと言って去っていった。
「は~緊張した」
「ルーンはなぜそんなにびくついてるの?」
「ヴァ、ヴァンデラー先生だよ? 畏れ多いし、精霊の気配するし」
「ああ、まあ、ね」
カルヴァは今回姿見せてないものな。でも気配はわかるんだ。
「ルオは慣れすぎて偉大さがわかってないんだな」
「師匠が凄いのはわかるよ? でも、そんなに有名だったの、あとで知ったから……」
「そういうことか~弟子入りしたのって何歳くらい?」
「……五歳だったかな?」
「えっ」
「ええ?」
二人の声がハモった。
「普通、十歳なんじゃねえのか?」
「祝福の儀が終わってからですよね?」
二人に詰め寄られた。なんでなんだろうね? 出会ったから?
そこにワゴンを運んできたカリーヌがにっこり笑う。
「お茶をお持ちしました」
カップに注ぎ分けていくのをぽかんとした顔でタビーとルーンは見ていた。
みんなの前に紅茶のカップを置き、お菓子を盛った皿と取り皿を置いて出ていった。
「なんでデュモン先輩が!?」
ルーンはびっくりしていた。
「主君の若君だから、だろ?」
タビーは知っているけど、まさかお茶を淹れてくれるとは思ってなかったんだろうなあ。
「そうそう、うちに見習いに来てるの。あ、ルヴェールにだよ? ここにいるのは師匠が学院に近いからって住まわせてくれて、見習いのお仕事もしてるせいかな?」
「そうなんだ?」
「カリーヌ先輩はうちの寄り親のデュシス侯爵家の分家だからね」
「ああ、そういう関係なら納得だなあ」
タビーが頷く。
「あ! ルーン、遅れてごめん! これ誕生日プレゼント!」
思い出して、ペンダントが入った革袋を渡す。
「え? あ、ありがとう。開けていい?」
「どうぞ!」
ルーンが開けるところりとペンダントが出てくる。
「すごい! 綺麗!」
「気に入ってくれた?」
「うん! あ、でもこんなの見たことないから……高かった?」
「うーん、それほどでもないかな? 手作りだし」
「手作り」
タビーが突っ込む。
「ほら、これガラスだよ? 僕、ガラス工芸を作るの目指しているし」
「ガラス!?」
ルーンとタビーが同時に言う。どう見てもガラスでしょ?
「こんな透明なガラス……え、なんか花を閉じ込めたみたいな……」
「こ、これ、市場に出したらすごい金額になりそうだぞ?」
そう二人が言ったらバン! と扉が開いた。
「ルオ、ちょっと見せてみなさい」
「え?」
師匠はつかつかと歩いてきてルーンの手元を覗き込んだ。
「そういえば奥様に作っていたな。家族にならと何も言わなかったが……」
「だってペンは禁止だったから……」
師匠は顔に手を当てて唸った。ルーンとタビーはおろおろしている。
「とりあえず二人とも、このことはこの場での秘密で。ルーンには悪いがそれはしばらく誰にも見せないようにお願いしてもいいだろうか?」
「は、はい!」
あれ? これって、俺、やっちゃいました案件なの?
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