第六章
第151話 ハンス頑張る
「師匠、とりあえずこのペン先を作るのなら、問題ないから、それからするね」
俺は師匠にハンスの件を相談した。
「わかった。もうしばらくすると、ドワーフの工房から職人が来るから来たらバーナーの調整をしてもらってくれ」
「わかった! あと、目の保護するゴーグルとエプロンは必要かな? 光見てると目が悪くなっちゃうから」
「ああ、そうか。そうだったな。わかった。作っておく」
師匠はやっぱり師匠えもんだね!
一緒に来た父は忙しそうにしていたが、手が空いた時間に話した。
「ルオ、あのペンは素晴らしいな。私はルオのことを誇りに思うぞ」
そう言って頭を撫でてくれた。
すごく嬉しい!
「ルオはいろいろ驚かせてくれるが、お酒にしろ、鏡にしろ、ブローチにしろ、素晴らしい物を作っている。その功績を表立って言えないのを許してくれ。ルヴェール領は豊かになってきた。人も増えた。みんなの顔が明るくなった。ありがとう、ルオ」
「え、ううん! みんなが頑張ってるからだよ! 僕はガラスが作りたかっただけで……」
「そうか。では私も頑張ろう。インクや和紙のことや、売り出し方は任せてくれ」
「はい! お願いします!」
「時間が空いたら、乗馬を見てやろう」
「え、ええ? ブルーはちょっと……」
「ん? 怖いのか?」
「父様以外乗せないって目をしているよ」
「まあ、確かに……」
「それにおっきいから多分乗れても……」
「あ、ああ……いや、ルオは大分、背が伸びたぞ? ん? 髪の色が少し、薄くなってる?」
「髪?」
「ああ、ルオの髪の色が、オレンジっぽい色から……そうだな銀髪に近づいているというか……ルオはオリビンに似ているからオリビンのように銀髪になるかもしれないな。」
「ええ?」
俺は思わず自分の髪を摘まんで見た。母のようなプラチナブロンドに?
「ああっ……気付かなかった!」
確かに色が薄くなっている。
「毎日見てると気付かないこともある。正直、あまり離れてはいたくないんだが、学院の間は仕方ないというか……冬の休みは帰れないが学年の終わりの休みは帰ってこれるだろう?」
「もちろんだよ! あ、みんなの誕生日、一緒に過ごせないなあ……」
「手紙を送ってくれ。楽しみにしている」
「はい! 父様はまだこっちにいるの?」
「ああ。だが、雪が本格的に降る前には帰らないといけないな」
そうか。みんなの誕生日プレゼントを父様が帰る時に預けてしまえばいいんだ!
「帰る時は、早めに教えてね!」
「ああ、わかった」
それから学院で起こった話をしたら父はある程度は聞いていたみたいだけど、ちょっと頭を抱えていた。
不可抗力なものがあるので許してほしいな。
まずはガラス棒のつくり方からかな?
「えーと、ガラスをこういう棒の形に作ります」
炉の中でラヴァが頑張ってる。ほっこりするなあ。
俺は完成品のガラス棒と管ガラスを見せた。
「こっちはペン先や軸にも使う基本のガラス。こっちは瓶のもっと薄い奴。中や表に金や銀の煙を吹き付けて色を付けるのに使うんだ」
そうだ。色を付けたブローチやペンダントもいいかもね。
「一度作るから、あとは実戦で作ってみてね」
俺はガラス棒と管ガラスを作った。
「わかりました! 頑張ります!」
「あんまり無理しないでね? わからないところがあったら聞いてね? 隣にいるから」
なんか、根を詰めて作業しそうな気がする!
「はい!」
それから隣に移ってフューミングのペンダントヘッドやブローチなどを作っていた。
そうしたらガタッて音が聞こえたので、様子を見に炉の部屋に入った。
「ハンス!?」
ハンスが倒れていたので、慌てた。
(主、ガラスの精霊が何かしたみたい)
(ガラスの精霊が?)
ふよふよとハンスの上で回ってすっと隣の部屋に向かった。
まさか、魔力吸い取ったり?
まさかね?
それからカルヴァを通して報告したら師匠がやってきた。
「倒れたんだって?」
「うん」
「……これは身に覚えがあるような症状だな」
師匠がハンスを抱き上げた。
「身に覚え?」
「魔力枯渇だ」
「あのね……ラヴァがね」
「ガラスの精霊が?」
師匠は思わず周りを見たがガラスの精霊は周りにいなかった。
「とにかく、部屋に運ぼう」
「うん」
それから何度か、ハンスは倒れた。
魔力を吸い取ったお詫びなのか、ガラス棒や管ガラスが増えていたりした。
ハンスは首を傾げながら申し訳なさそうにしていた。
心当たりがなさそうなので、俺と師匠はガラスの精霊に直接聞いてみることにした。
(あの人間のまりょくが好ましい感じだったから、ちょっともらったの)
ちょっとか~ハンスは魔力の必要な職業じゃないし、多分平民の平均的な魔力量だと思う。
「あの人はあまり魔力がないんだ。ちょっとでも倒れる。加減してあげてくれないか?」
(わかった)
それから工房でハンスが倒れることはなくなった。
わかってくれたんだと思ったら、ラヴァがこっそり教えてくれた。
夜寝てから吸い取っているって。
契約とかしてないのに、それってよくあることなのだろうか?
ハンスは気付いてないようだから、もう仕方ないけれど。
目に余るようだったら、精霊王様に話すようにラヴァにお願いするしかないかな?
それからハンスがガラス棒と管ガラスが上手くできるようになったので、ペン先を教えることにした。
そして、ドワーフ工房の職人がやってきた。
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