第145話 ガラスの軸を作ろう!
休み二日目。
昨日用意したガラス棒はちゃんとできていて、割れもなかった。
「装飾をどうするかなんだよな」
ガラスの軸は本当にいろいろデザインがあって、色々なテクニックを使っていたはずだ。
持ちやすさや重心の置き方とデザインを両立させるのはなかなか難しい。
軸とペン先をちゃんとつけないとすぐに割れてしまうし、それには一気に軸を作ってしまわないといけない。
「まずは思い通りに作れるかってところから検証だな」
(主、いつでも手伝う!)
「ありがとう。とりあえずは見ていてくれる?」
バーナーは魔石を利用したものだ。炎を調節するのに工夫がいる。温度は鑑定で確かめる。
基本となる軸の太さの見本を作る。人によって使いやすい太さが違うから。
太さを変えて三種類ほど作った。本当はもっと人によるだろうけれど、子供用、女性用、男性用でいいかなって思った。
「よし、これでみんなに聞いてみよう!」
ちょうど、お昼の時間だ!
「チャロ! ちょっとこれ、試してみて!」
「はい?」
「字を書く道具にするんだ! どの太さが持ちやすい?」
「ええと……これですかね?」
チャロは真ん中の太さだった。
「ありがとう!」
メモに書きつけていく。
「スピネル!」
「ルオ様、今日はちゃんと出てらしたのですね」
「うぐっ……忙しいところ申し訳ないけど、ちょっと試してもらいたいんだ」
スピネルは一番太いものだった。
「食堂で旦那様がお待ちですよ」
「は~い!」
師匠、俺の行動見張らせてるのかな? まあ、昨日やっちゃったしな。心配かけてるのかなあ?
食堂へ入ると、師匠が待っていた。
「今日はやっと出てきたな。……ん? 手に持っているのは?」
「これね。昨日のペン先をガラスの軸につけたものなんだ。軸は木の軸でも金属でもいいんだけど、やっぱりガラスの軸で作りたいな~って思って。それでね、太さを確認したいから、師匠も試してみて。持ちやすい太さってどれかな?」
ガラスペンを入れていた箱を見せる。師匠は一本一本握って、握り具合を確認してくれた。
「そうだな。一番太いのかな?」
「ありがとう!」
「とりあえず、席に座りなさい。お昼にしよう」
「はい! お腹空いたぁ」
今日のお昼は野菜具沢山のポタージュと、肉のグリルが挟まった丸いバンズのサンドだった。
「美味しい~」
「夕食もちゃんと出てくるんだぞ」
「はい!」
「それで、これはこれで完成なのか?」
「ううん。ちゃんと装飾するよ」
「ガラスの軸を?」
「うん……あ、金と銀のシートが欲しいんだけど」
「金と銀?」
「ガラスに色を付けたいから、めっきする時くらいの箔状のでいいんだ」
こっちで金箔と銀箔とか、言うのかな?
「なるほど、確か鉱物で色がつくとか言っていたな。わかった。手配させよう」
「ありがとう! ごちそうさま!」
「ルオ、おい……待……」
後ろから師匠の声が聞こえたけど、俺は食堂を出て、会う人会う人に手あたり次第試してもらった。ギードとカリーヌにも試してもらった。
俺のお世話してくれる侍女さんにも試してもらった。
真ん中を選ぶ人が女性は多くて男性は一番太いのが多かった。
俺たち子供組は細いのを選んだ。手の小さい女性は細い方がいいみたい。
「うーん、装飾すると重くなるからな……」
色々なデザインを試してみよう!
楽しくなってきた!
……上手くいかない。
バーナーの調節が思い通りにできない。
「はあ」
(主、何悩んでるの?)
「炎の温度をね。上手く操れなくて」
(僕、やるよ? その炎みたいに細く出すんだよね?)
ラヴァはちょこんとバーナーを置いている金属台の上に乗る。
(こうだよね!)
ボオオオとラヴァの口から炎がガスバーナーのように吹きだす。
え、これ、ファイアーブレスなんじゃない?
(主が思い浮かべる温度にするから!)
「うん。わかった」
それから夢中でラヴァと二人で炎と格闘した。
炎に当ててガラスの軸を回して模様を作る。波のような溝ができていく。
ラヴァの操る炎は美しくて、オレンジ色に溶けるガラスが炎を彩る様は、前世での作業でも見なかった光景だった。
「できた……」
ラヴァと二人三脚で作ったガラスの軸は透明な流線模様が軸を彩り、先端はすっと細くなり、丸く収束する。まるで上流でうねる川の流れのようだ。
「ありがとうラヴァ。ラヴァがいないとできなかったよ」
(嬉しい!)
ラヴァがくるくる回る。抱き上げて抱きしめた。
「やっぱりラヴァは僕の相棒だね」
(うん! 相棒!)
出来上がった初のガラスペンは先端を調整して書き味を試した。
「いいんじゃないかな?」
せっかくだからインクも作るとか。羊皮紙用のインクって和紙に馴染まないし、せっかくだからカラーインクとかも作るといいかも。
墨汁も使えるんだから、粘性を増したインクも使えるよね。
粘性……膠かな? スライムゼリーとか?
(主、魔力欲しい)
「じゃあ、戻ろうか? 夕食を取って寝る支度をするから、それまでちょっと待ってね」
ラヴァを肩に乗せて、ガラスペンは徐冷庫に入れる。
明日、師匠に見せよう。
夕食を済ませて部屋に戻った。寝る支度をして、ベッドに潜る。
「ラヴァ、ありがとう。今日はちょっと多めに魔力とっていいからね」
(ありがとう! 主)
「おやすみ、ラヴァ」
(おやすみ! 主!)
俺は幸せな気持ちで眠りに落ちた。
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