第81話 冬の日課
師匠にも父と同じようにラッピングしてプレゼント。
師匠は和紙を張りつけているところとか、金箔や、絵の具の部分に着目した。
「なるほど、ちゃんと錬金術が身に付いてきているようで安心したよ。だがちょっと危ない成分が入ってるな。植物系ではだめだったのか?」
「材料採りに行く時間なかったからダンジョンで採ってきてもらった石から採ったんだよ」
「まあ、仕方ないか。冬だし、魔法特訓中だし。絵具に興味があるなら色々と採取の幅を広げよう。ダンジョンにもそろそろ行ってもいいかもしれないな。剣術も、魔法もある程度できるようになったし、貴族学院へ行く前に少しレベルを上げておきたい」
「? どうして?」
「合同演習というのがあって、厄介なんだよ」
「厄介」
「学院の入学試験が近くなったらいろいろ説明する」
「はい」
「このコメの酒、器の量産がまだできないから、あるだけハンスの作った瓶に移して保管することになった。一部は献上品にして【精霊の祝福の酒】として、精霊教会で祝福をいただいた証明を出してもらって貴族向けに売り出すことにした」
「え、そうなの?」
「吹雪の中、祭司様が『天啓がありました~!』とか言ってやってきたんだ。精霊王様が『便宜を図ってあげてね。美味しいお酒だから』って言ったそうだ」
(めちゃくちゃ気に入ってたわよ! 水の精霊にもいい仕事したって褒めてたわよ! だから水の精霊は快く頼みを引き受けてくれるそうだから、何かある時はお願いするといいわよ)
「そっか、嬉しいな」
「よかったな。ルオ。ありがとうな、カルヴァ」
(ふふん! あの新しいお酒はすっごく美味しいわ! いろいろ可能性があるわよ! ただ、品質が保てないから、一回湯煎して冷やした方がいいわね。ちょっと味わいが変わるけど、それも美味しいはずよ!)
あ、火入れのことかな?
(そうすれば品質が落ちたり、匂いがするってことはなくなるわ。あのまま保存できればいいけれど、そのインベントリやマジックバッグはそうそうないんでしょう?)
「マジックバッグは素材さえあれば俺が作れるが……」
師匠が俺を見る。なんだろう?
「その辺は製造量が安定してからだな。当主様とコメの作付やらなんやら、相談しないといけないし。ルオ、他人事のような顔しているが、将来、お前がやるべき仕事だからな?」
「はい」
うう、藪蛇。将来かあ。やっぱり嫡子として色々領政にも関わらないといけないってことだよね。ガラス工芸作家に挑戦するには引退してからになっちゃうのかな?
そして、母監修のもと、魔法の特訓中。
「魔法制御は合格点ね。火魔法も上達したわね。今度は雪、氷系の魔法を覚えましょうか? 大丈夫。属性がなくともある程度はできるようになるのよ?」
そうして母は、見本を見せてくれた。もしかして、母の得意属性って風、水、氷じゃないの?
「やってみなさい」
「はい」
見本があったのでイメージしやすかった。
「いいわね! 一から魔力で作るのもいいけれど、こうした環境を利用すると、魔力の節約になるの」
雪が降っていて、周りは雪原のようになっている状況を指して母は言った。
なるほど、水魔法の水は周りにある空気中の水を利用するから消えないんだな。
精霊がいるけれど、物質法則はあるってところかな?
「はい、母様!」
にこにこ顔で頷く母の肌が艶々だ。
「母様、最近綺麗になってない?」
「あら、ありがとう。嬉しいわ。なんだか最近肌の調子がいいの。冬は割と肌が乾燥してたんだけど、この冬はそうでもないの」
「甘酒飲んでるせいかな?」
母は甘酒を気に入って毎晩いっぱい飲んでるそう。生姜も少し入れてぽかぽかになると言っていた。
「体があったまって冷えが改善されて、よく眠れるようになったせいかしら? 前は足が冷えてなかなか眠れなかったのよ」
「エリックに感謝しなくちゃね!」
「そうね。さあ、もう一度ブリザードよ!」
「はい!」
ちなみに家族全員艶々だ。前世でも甘酒は身体によかったからね。生姜もね。
お砂糖なしでも甘い甘酒は作れるはずだけど、そこは師匠に相談だ。
甘酒の件は師匠とカルヴァにぶん投げ、俺は毎日の日課を熟すのみ。
除雪がすんだらイオとウォルトがやってきて、一緒に剣術の稽古。
才能がないみたいな俺だけど、貴族学院でそれなりにやっていける腕前にはなってるらしい。
もうすぐ七歳のイオの剣の振りは凄いことになっているから、これが才能の差というものだろう。
風がイオにまとわりつくのもいつものことだ。
そうだ! 指揮棒みたいな杖を作るのはどうだろう。魔法使いといえば杖だ! 魔力伝導率のいい素材で杖を作って指向性を持たせたらサンドブラストも簡単にできるかも!
魔法使いといえば三角帽子に箒に杖にローブ。
神器を揃えて挑戦するのだ。
コンと頭に衝撃が来た。
「手が止まってますよ。もっと気を入れて稽古をしましょう」
「兄様、サボりはダメ」
イオに怒られた!
「はい!」
それからちゃんと稽古した。
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