第50話 祝福の儀
父があちこちを飛び回り、母が服飾工房のため、カリーヌとダンジョンに潜り、ギードはいろんな補佐をやらされて、大変そうだ。ちなみにギードも潜っている。
あまりにダンジョンに行くので、ダンジョンの前に町ができた。
父が母を心配したからだと思う。
冒険者メインにその関係の商店、宿屋、冒険者ギルドを誘致。薬師ギルドも師匠のつてで来てもらった。さすが師匠。そこも建築ラッシュで、建築工房が大忙しだった。最初に母の滞在する別宅を作ったのだから母の服飾に対する熱意は凄かった。
俺もダンジョンに行きたいなあ。でも、まだ十歳にならないからと止められた。
人手不足は人手不足なんだけど、祝福の儀で判明している職業をもとに父が十~十二歳までの子供たちに希望を聞いて仕事を振り分けたそうだ。
大抵は工房関係の見習いとして働きながら、教会で文字計算を習っている。
これからは文字計算を習得してから祝福の儀になる計算だから、もっと早く仕事を覚えられるかもしれない。
やっぱりメモ取るのは大事だよ。
王都で一回スラム近くで移民の募集をかけた。それで大人がやってきた。悪意を持った大人は結界に弾かれるし、教会の祭司様が何やら自白とかそれ系のスキルで罪を暴いてしまうので、やってきた人たちは潔白で、働き者だろうということだった。
ルヴェールの元からの村には移住者はもう受け入れずに、ソア子爵の廃村の方に移住してもらっているそうだ。
工房村は大事な産業の村なので、精霊教会を作って結界を張ってある。村の祭司さんが呼び寄せた人が祭司を務めている。
工房村は何とか形になってきたようで、ハンスと一緒に俺もガラス工房の建物ができた時、見に行った。
「すごいな~」
俺は炉を見たり、作業場を見たり、うろうろした。
ガラスはできた後急激に冷ますと割れちゃうので、その温度変化を管理するいわゆる徐冷庫も設備にあった。窯と繋がっていて、窯の温度を利用する仕組みになっている。俺の工房ではラヴァと師匠に頑張ってもらってた。吹きガラスの設備は追加すればできそうな気がする。
「動かすのはいつなの?」
「本格的に動かすのは材料の量次第になりますね。それと、鏡はヴァンデラー師が当面作るということなので、そのガラスを作るまでが仕事になるでしょうか。あとは研究になります」
俺が聞くとすらすら答えてくれた! すごいな~
ハンスの後ろに十~十三歳くらいの男の子が二人いる。どうやらガラス職人見習いだそうだ!
弟子としてハンスが育て、今後のガラス工房を支えていくことになる。
二人の職業は職人で、これからの研鑽でスキルが生えるだろうということだった。
ファンタジーだなあ。
ガラス工房の炉の試運転をするのに立ち会って、そのガラスをガラス細工を作るのに使わせてもらった。細工をするのに当たって、赤いガラスにしたかったので、河原の石から師匠に金を探してもらった。ほんの少量でよかった。でもこれって王水で溶かさないといけないんだけど、師匠がまたファンタジー解決策で解決してくれた。
「溶解」
炉の中で融けた金とガラスが混じって溶け合って赤くなる。
「師匠すごい!」
「おう、凄いんだよ。敬え!」
「うん!」
俺は師匠を拝んだ。
融けたガラスを鉄棒で玉にして掬い上げる。今回は少量でいいのだ。それを別の鉄棒で弄って形を整える。それを炉の前の鉄板の上でやるのだ。
少し冷めたところで細部に細工を入れる。鉄棒から切り離して今度はピンセットなどで細かい細工を入れ、アイスピックのような工具で模様を入れて、完成。
「できた!」
赤いガラスのサラマンダーだ。顔を少し上げて、身体としっぽは歩いてるように見えるようにした。炎のもやを形にするのが、少し苦労したけど。
「これは、ラヴァか?」
「そう、ラヴァ」
(これ、僕?)
「そうだよ」
(嬉しい!!)
ラヴァが肩から、まだ熱いそのガラス細工に飛び込んだ。え? 飛び込んだ?
そうして、ガラス細工がみるみるうちに変化を遂げた。
(やってしまったわね。精霊が受肉したわ)
カルヴァが呆れたように言う。
「受肉」
(現身を持ったってこと。いまのラヴァは誰にでも見えるし、物も食べられるし、声も出るわよ)
師匠が顔を手で覆った。
ガラス細工がトカゲになってしまった。いやサラマンダー?
赤い艶々した鱗に細身のしっぽ。つぶらな赤い目。
「主!」
俺に向かって飛び込んできた。ぺろりと頬を舐める舌触りは、生物のそれだった。身体はほんのり暖かい。
「ラヴァ」
俺は困惑して、置いてけぼりになって目を丸くしているハンスと見習いの二人にどう説明しようか、師匠に救いを求めたのだった。
「……ルオだから仕方がない。うん。立ち直った」
師匠はそう呟くと、とりあえず見なかったことにしてくれと、三人にお願いして、魔法契約で縛った。
「魔法契約書の代金はいただくからな」
守銭奴!
それから、ビールの蒸留酒、シードルの蒸留酒、ジャガイモのお酒の蒸留酒ができた。酒精霊カルヴァのごり押しで作ったお酒は精霊教会で、神様に捧げた。
これから熟成させていくけれど、出来上がった最初の蒸留酒をお神酒にした。
『ありがとう』
精霊王様がお礼を言ってくれて、師匠とドワーフさんたちは感動していた。
俺も早くお酒飲めるようになりたい! 最も俺が大人になった頃に出来上がるのかもしれないけどね。
シードルも出来た時に教会にお供えして、好評だった。ビールは収穫祭に出されてエールの美味しいのとして領民に認識されたようだ。
「師匠はどこを目指しているの? 酒蔵の経営者?」
師匠のお仕事がお酒関係であたふたしていた時につい聞いてしまったら、遠い目をしていた。
そしてあっという間に一年が過ぎて本日、十歳になりました!
「お待ちしてました。フルオライト様」
教会の祭司様が出迎えてくれた。家族みんなで来ている。俺が一人、祭司様の傍に行き、祝福の儀を行う。個人情報なので特別な部屋でするそうだ。ラヴァは師匠が預かった。
入った部屋は水の入った大きな器があった。部屋の壁は精霊の姿絵。正面には精霊教会のシンボルの丸い輪。
「この水鏡に手を差し入れて祈ってください。職業をお与えください、と」
(精霊王様、僕はどんな職業なの? 錬金術師か、ガラス職人がいいのかなあと思う)
『ふふ、では錬金術師だね。いろいろできるようスキルもいっぱいあると思うよ』
(ん??)
「これは……」
祭司様が驚いて水鏡を凝視してる。驚くはずだ。俺の身体が光ってる! そして水鏡に文字が浮かんでまるで……ステータス表?
「こちらが写しでございます。人に見られないように封じます。家に帰ってからお一人で見てくださいね」
祭司様が俺の身体の光が収まった後、紐でくくられた紙を渡してくれた。
「あれ? 声高に言うとかじゃないの?」
「あれは光神教のやり方です。本来は精霊王様や神の御導きの証、本人の資質の現れでそれをどう生かすか、公表するかは本人次第です」
「そうなんだ。貴族が待ち構えていきなり連れて行かれるって聞いてたから。違ったのか」
「記録はしてご領主様には報告しますが、本来はそれもいらないのですよ。ですからご家族に教えるかどうかはフルオライト様のお気持ち次第ですよ」
そうして、俺は教会を後にした。
水鏡に浮かんだ俺の職業は『錬金術師』そしてユニークスキル『アーティスト』『精霊眼』スキル『鑑定』『インベントリ』他スキル沢山。魔法属性『全属性』それと『芸工神の加護』、『精霊王の加護』、『火の精霊の加護』、称号『
転生特典ですか? 神様。
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