第38話 採集と収穫物
久しぶりの森の採集に来た。森の恵みが沢山生っていた。
「いっぱいある~!」
俺はきらきら輝くリンゴに似た実がいっぱい生っている木の前で飛び跳ねた。
「おお、甘くて美味しいと出てるな。採るか?」
「採るよ! もちろん!」
そういえばリンゴはパン種にもお酒にもなるよなあ? これもなるのかな?
「お酒になるよね~?」
「なんだと?」
「あれ? フルーツのお酒ってないの?」
師匠がかっと目を見開いて風魔法で乱獲した。でも、地面には結構実が落ちていたから問題ないかな? 突かれた跡もあったし。
「そういえば師匠、ジャガイモのお酒はどうするの?」
「ほんとは仕込みたいんだが、他の地域では不作が続いてるみたいでなあ。豊作だが、今回きた商隊に売るそうだ。今日積み込んでいるはずだ。種芋分はちゃんと残しているから心配しなくていい」
「そうなんだ」
「野菜類と魔物の肉もマジックバッグを持ってきていて、買いまくっているそうだ」
「うちの冬支度大丈夫?」
「それは抜かりない。稼いだおかげで色々と領地開発に回せる」
「師匠、父様にいいように使われてない? 大丈夫?」
「……まさか、そんな」
「師匠のことだから、対価ちゃんともらってるよね! 大丈夫だね!」
「ああ、大丈夫だ」
俺の頭をぐりぐり揺らしながら視線が泳いでた。大丈夫かなあ、ほんとに。
いろんな恵みを採取後、本来の目的である薬草もたくさん採取した。
「そうだ、師匠、木樽って余ってるの?」
「うん? 木樽は意外と高価だから、そんなに空いてるのはなかったような気がするな」
「え? 蒸留したお酒は木樽に詰めないとダメじゃないの? 来年の仕込みに間に合うの? 木の香りで、お酒の味、違うんでしょ?」
「え? そうなのか?」
「師匠、錬金術師なのに!」
酒造り職人ではないけど、錬金術師と言えば蒸留だ! プロなんだから!
「わ、わかった。いろんな木の素材で樽を作ってもらう。冬の手仕事にはいいだろう」
じいいいっと見つめたら、慌てた風に頷いた。お酒ができても、俺にはまだまだ飲めないんだけど、カルヴァドスができるなら成人後がすっごく楽しみになる。木樽で寝かせた蒸留酒は美味しくなるからね。
森から戻って工房でポーション作りの下準備。もう乾燥した薬草はないから摘んできた薬草を吊るして乾かす。ポーション作りは乾燥してからなので、ガラス作成の下準備もする。焚き木を炉に放り込んで首を傾げる。
「炭って作れないの?」
「炉が必要だからなあ。いい炭は技術がいるし、煙も出るから農地主体のルヴェールには合わないしな。その辺はいろいろ、領主様が考えてるからな。心配するな」
この世界でも煙は問題になるんだな。浄化とか魔法があるのに。俺は頷くと作業を終えた。
「倉庫! 倉庫行かないと! 採集した物はどうするの?」
「わかったわかった。採集した物は倉庫にいったん置いてネリアとローワンに丸投げだな」
「あの実でお酒と、酵母作りたいな~」
「できるのか?」
「やり方自体は知ってるんだけど、道具と体力がないな~」
「ドワーフの酒が好きな皆さんに協力を仰ぐか。明日は収穫祭で村に降りるからな」
「そうしよう! 酵母作りは簡単だから道具が揃えばすぐできるし!」
「酵母は酒の?」
「お酒に使えるけど、パンに使う酵母だよ!」
「パン?」
「いっぱい膨らむ」
「膨らむ」
(膨らむ?)
きょとんとしてオウム返しに呟くラヴァと師匠の表情が同じで吹いた。
倉庫に着いた。木箱の中にいっぱいコーンと米が詰まってた。
「やったああ!」
「このコーンは貴族に受けそうだな」
「受ける?」
「観賞用だ。同じものはなさそうだからな」
皮を試しに何個か剥いて師匠が言う。俺は乾燥度合いを確かめて戻した。
「これは食べるんだよ! でもとりあえずもっと増やしたいから全部種にするんだ」
お酒にもできるなんて言ったら食べる分がなくなりそう。米もお酒にできるからなあ。あれ? お酒の材料ばっかりじゃない?
「そうか。じゃあ、もう少し耕作面積を増やすか」
「うん!」
俺は大満足で頷いた。倉庫の入口付近に採取した果物や野草、キノコなどを木箱に入れて並べた。
「あの実は夕食のデザートに出してもらおうか」
「台所行こう!」
ネリアに実を人数分預けて、俺はウィスキーグラスを取りに部屋に戻った。それをお湯で煮て乾かして、革と紐を用意した。密閉容器がないしコルクもなかった。かわりになるものはそれくらいで。そこに洗ったあの実を切っていれ、クリエイトウォーターで水を注いだ。革で蓋をして紐で縛る。
「できた~」
「これで酵母とやらが?」
「うん。できたら教えるね」
失敗する場合もあるから、よく観察しなきゃだな。
「なるほど、面白い」
師匠、鑑定した? 俺にも鑑定のスキル生えて欲しいなあ。
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