第31話 俺の農場

 頭の中がポップコーンになった俺は早速種を植えることにした。米はどうやら、水田ではなく畑で育てられていたようで、麦と同じ栽培方法なのだとか。

 水田にしたほうがいいんじゃないのかなあ……? でも、前世の小学校で実習したくらいしか知らないしな。


「じゃーん! ぼくの実験農場!!」

「ちゃんと、世話するんだぞ、ルオ」

 父が俺の頭を撫でる。

「する! 新しい作物育てるんだ!」

 屋敷の裏庭を広げて実験的な農場を作ってもらった。補助に農業師さんが指導に来てくれるんだそうだ。神業の人だね。土づくりはその人に任せて俺は種まきから参加だ。

 師匠の手が空く時間が増えるんだけど、師匠は父に何か頼まれごとをしているみたいで忙しそうなんだよね。

 河原に石を取りに行くのは暇なドワーフさんとになったし、薬草を取りに行く時は兵士さんたちと一緒になったし、剣の修業はイオと一緒に体力づくりと素振りになって、今は兵士さんたちが順番プラス、ローワンが指導してくれているんだ。

 魔法は母が見てくれている。師匠はポーション作りと座学、結界への魔力供給の時だけになった。ガラス作りは今はストップしている。

 魔物の出現率が増えたのはうちの領もなので、ピリピリしているのもあってなるべく外出は控えるようにと俺とイオは言われている。


 抜けるような青空に覆われて爽やかな風が吹く。そんな、夏の日。

 森が騒がしくなった。

(あるじ、大変! いっぱい、魔物来る!)

「え!?」

 ラヴァの警告が頭に響いたあと、カンカンと半鐘が鳴り響いた。

「ルオ、イオ、中に入りなさい!」

 母が大声で声をかけながら庭で剣を振っていた俺たちにかけよって来る。

「うん」

「??」

 教えてくれていた兵士さんたちが辺りを警戒しつつ俺たちを護衛しつつ、屋敷に入った。兵士さんたちはそのまま屋敷の警護に就いた。


 結界の魔力は十分だっただろうか?


 いっぱいってどの程度なんだろう。遠くから聞こえる喧騒に、みんな無事でいて欲しいと祈った。

 どのくらい時間が経っただろう。イオはすっかり寝入ってしまって、俺もうとうとしていた。


 玄関のほうがうるさくなって、俺は慌てて玄関に行った。

 父、ローワン、師匠が戻ってきた。

 よかった!

 みんな軍服を着ていた。あちこち、すり切れたようになっていて、返り血もあった。

 でも、無事だ。

「父様~師匠~ローワン~」

 俺は泣いて、抱き着いた。

「大丈夫だ。魔物は殆ど討伐した。ひとまずは安心だ」

「そうだ。私たちが、蹴散らしたからね」

「坊ちゃま、失礼します」

 父は優しく声を掛けてくれて、師匠は頭を撫でてくれた。ローワンはハンカチで涙を拭いてくれた。

「よかった~~~!」

 でも、俺は大泣きをして皆を困らせた。

 俺が落ち着いたころ、遅い夕食になった。イオは欠席だった。

「子爵領の方から流れてきたようなんだ。いま、斥候隊を向かわせている」

「何が原因なんでしょうね。この森も魔物は多いけれど、氾濫なんてしたことはないのに」

「間引きを怠ったか」

「それは……」

 また、襲ってくるかもしれないのかな? でも、俺は夕食を食べながら、うとうととしてしまった。


 気が付いたら朝だった。

 朝食を食べに食堂に行ったら師匠がいた。ちょっと眠そう。

「おはよう、ルオ。よく眠れたか?」

「おはよう師匠。たっぷり寝たみたい」

「実はルオに手伝ってもらいたいことがある」

「なに? 僕にできること」

「ポーションをたくさん作って欲しい。実は、魔物との戦いで、かなり使ってしまって備蓄が少なくなっているんだ。あるとないとでは大違いだからな。大変だが、手伝ってもらえるか? 薬草は兵士たちが巡回の時に採ってきてくれることになっている」

「はい! もちろんだよ! みんなのお手伝いができるんだね!」

「今日から頼む。心強いよ、ルオ。ありがとう」

 それからしばらくはポーション作り三昧だった。父はあちこち飛び回っているみたいで、顔を見る機会が少なくなっていた。


 そして一週間も過ぎたころ、隣の子爵領からの難民が村に流れて来た。

 子爵領が魔物によって大変なことになったのだと、知ることになった。

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