津島①
今日も、何もない、しょうもない一日が終わった。
さあ、帰るぞ。この地獄の館から脱出するのだ。別に外の世界にオアシスがあるわけではないが、ここよりはましだ。
「アハハハハハ」
!
大丈夫。オレのことを笑ったんじゃない。
毎度のことだが焦るなよ。ゆっくりと。早く家に帰りたがっていると思われるようなみっともない姿はさらすな。もう今日の苦役はすべて終わって解放されたんだ。オレは自由だ。もっとリラックスしろ。
そうだ。時間が来たから普通に、ただ帰るんだという平然とした態度で。
いい調子だぞ。もう少しで着く階段を下りて、廊下をちょっと歩けば、すぐに下駄箱だ。
「な? キモいだろ?」
なっ!
左斜め前から聞こえた声のほうにチラッと目をやると、よくは知らないが顔は知っている、いかにも性根が腐った感じの二年の男二人が、こっちを見ながらニヤニヤしていた。
……動揺するな。オレなのか? 被害妄想ではなく、オレのことを話して笑っていたのか?
「ププププププ」
間違いない。こっちに見せつけるように笑いやがった!
待て。いいじゃないか、別に。頭の悪い、かわいそうな奴らには、何でも好きにやらせてやれ。
そう、そうだ。堂々としてればいい。オレはあんな奴らよりは劣っていない。自信を持て。
……くそっ!
くそ! くそ! くそっ! てめえら、何なんだ! どこの誰なんだ! なんでてめえらみたいな奴らに馬鹿にされなきゃならねえんだ! オレが何をしたんだ! 何がキモいだろだ!
今日も腹の立つことばかりだった! あいつら、クラスのボケカス野郎どももニタニタ笑って、ここの学校を爆破するとネットに書かれたいたずらを、絶対に津島の仕業だと思ったと、休み時間に大声でほざきやがって! もうとっくの昔に逮捕されて、誰もが忘れかけてたようなことを、わざわざ持ちだしてコケにしやがってよ!
ふざけんな、タコッ! 全員まとめて地獄に堕ちろ! 苦しめ! くたばれ! くそーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!
「やあ」
わっ!
びっくりした。速足で校門を出て、すぐのところで、急に目の前に現れた。
そいつ、代々木拓実が。
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