若林②
「それだったら、二組の青山さんが詳しく知ってるよ」
さよちゃんは言った。
「青山さんとはそんなにしゃべるような仲じゃない?」
「うん、まあ、それはひとまずいいとして、詳しく知ってるってどういうこと? その人が言いだして始めたんじゃなくて?」
「そう。じゃなくて、なんか他の学校の人から勧められたらしいんだ」
「勧められた?」
「うん。ある日突然うちの学校にやってきて、『学校が良くなると思いますから試してみてはいかかでしょう?』って感じで。たしか、生徒会に最初勧めたんだ」
「何なの? それ。どういうこと?」
「私に言われても困るけど、とにかくそういうことみたいだよ。知りたいなら、青山さんから詳しい話を訊いてあげようか?」
「あー、いいよ、自分で訊くから。ありがとね」
青山さんとは知り合いという関係じゃないが、真面目で親切な人であることは耳にして知っていた。休み時間に廊下で見つけ、近づいて尋ねると、唐突なのに噂通り優しく教えてくれた。
「そうなんだ。別の中学の人がいきなりうちの生徒会室を訪れてきて、その人の学校の生徒会の活動の一環で、他校の支援をするっていうので、うちの執行部に勧めたらしいの。それに対してうちの役員の人たちは、突然そんなことを言われてもという気持ちもあったし、実際にそうだったらしいけど、今他に取り組んでいることがあって忙しいって口にしたんだって。そしたら、生徒会でなくても、校内で他にやってくれそうな人や組織に任せたらどうですかって言って、よかったらどうぞって、勧めた内容が書かれたものをくれて帰っていったみたいだよ。で、そういう話の展開になるってわかっていたように、実行する人や組織の候補も記されていて、保健委員会が含まれていたこともあって、生徒会役員で仲がいいコにその話を聞いて、書かれたのを見せてもらって、面白いかもって思った私が委員会で提案して、やる運びになったんだ」
……へー。
「じゃあ、保健委員がやってるやつは全部、そのとき持ち込まれたアイデアってことなの?」
「いや、丸々採用したのもあるけど、私たちが考えたものもあるよ。そもそもその人が渡して教えてくれたのは主に、心を中心とした健康の情報と、それを生徒みんなにどう浸透させるかという方法論なんだ。人間は極端に言うと感情がすべてで、だからいかに気持ちを良くできるかが重要で、それと真面目なちゃんとした内容をどうしたら融合させられるか、それにはまず取り組みを行う自分たちが楽しめるようにしたほうがいいだろう、とかね。それから例として具体的にやることも書いてあるんだけど」
はー。すごく頭のいい人なのか。
「その別の学校の人って、性格とかどんな感じだったかっていうのは聞いた? あと、一人っぽいけど、男なの? 女なの?」
「一人で、男だって。いきなり訪ねてきてそんな話をするくらいだから礼儀正しくはしてたけど、社交的じゃなさそうな、近寄りがたい雰囲気の人だったって」
「ふーん」
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