潮崎①

 もちろん運命などというしょうもないことは思わない。

 しかし、よく会う。正確には会っているとはいえないが。

 通っている塾の帰りでの話だ。僕がドアを開けて外へ出ると、同じくそこに通っているそのコは数メートル先にある塾の自転車置き場にいて、帰っていく。

 さらに、進む方向が一緒で、同様に自転車で来ている僕は、離れてはいるけれどそのコがしばらくの間視界にいて、後をついていっているような状態になってしまう。

 タイミングを合わせようとは全然していない。そんなことをされて喜ぶ人なんていないだろう。できればそのパターンを脱したい。

 だけど、塾を出る直前にまたそうなりそうな気がして、わざわざ引き返してトイレに入ったのに、やっぱりそのコが自転車置き場から帰ろうとしているところに出くわしたなんてこともあった。

 さすがに毎回必ずではないし、ズレが生じることもあるが、先に外に出るのはほぼそのコのほうで、僕がドアを開けたときに自転車置き場にいる頻度が異様に高いのだ。

 きっと、そういう巡り合わせなのだろう。

 そうだ、巡り合わせだ。運命なんて言葉を使うと、赤い糸を意識している感じになる。付き合うどころかお互いのことをほとんど知らず、単にしょっちゅう同じタイミングで、しかもこっちのみが目にするというだけなのに、何か変な妄想をしているヤバい奴のようになってしまう。

 いや、そんな概念よりも、向こうだってこっちの存在にまったく気づいてないってことは多分ないから、このままだと、もしかしたらすでに思ってるかもしれないけれど、僕をタイミングを合わせて見てくる気持ちの悪い男だと判断しかねない。

 どうしようか。もっと注意や工夫をして、絶対に遭遇しないようにするかな。ドアをちょっとだけ開けてそのコの姿があったら、いなくなるまで塾の中にとどまっているくらい、すぐに実行できるわけだし。

 でも面倒だよな。それに、他の生徒や先生に僕がそのコに対して何かしら意識があると気づかれたり、そのコ自体に避けているのがバレて、僕が嫌ってそういうことをしていると思われたら、冷たい態度をとられるかもしれない。そうなったら気分が悪いもんな。

 仕方ない。今のまま、特に何もしないでいいか。

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