第31話 情報
「なんのことか、私、わからないですー……って言っても誤魔化せないみたいですね……?」
そういって幼女の姿をした預言者が手を組み上目遣いで見つめてくる。
「まあ、さすがにそんな演技じゃね。いくらなんでも、誤魔化せないと思うよ?」
理解力スキルが告げる内容がなくても、さすがにその、あざと過ぎる仕草で騙される人はいないだろうなと思いながら俺は返事をする。
「はぁ、仕方ありません。せっかく色々と、うまくいっていたんですけどね」
「で、君は、魔族なのか?」
俺のその質問に、戸惑った表情を浮かべていたレーシュたち三人が、一気に臨戦態勢にかわる。当然それも理解力スキルによる知見たった。
「そこまでわかってしまうんですね。本当にカイン、あなたの代償スキルは厄介ですよ」
やれやれと首を横に振る幼女の姿をした魔族。どうやら向こうも俺のスキルについての知識があるようだ。
「代償スキル持ちが二人に、聖女の因子が一人。もう一人は国の中枢で働けるほどの女傑。まるで伝説の勇者パーティーのようではありませんか」
そういって俺たち始まりの火種のメンバーを一人一人指差していく魔族の幼女。
「なんだい、魔族の方は魔王でも復活したのかな?」
俺は冗談めかして鎌をかけてみる。
「もちろん、そんなことはありませんよ? だから私の可愛さに免じてここは見逃してくれませんかね?」
再びあざとい仕草をする魔族の幼女。今回はその真意はスキルも教えてくれない。ただ、逃がすなという知見だけが伝わってくる。
「──残念だけど、それは出来ないみたいだ」
「それもカイン、あなたの代償スキルですか」
「そうだね。でも、良かったらもう少しおしゃべりを続けるぐらいなら構わないよ」
「何か、会話することでも?」
「そうだねー。どうして俺たちがビヨンド王国で行ったことを吹聴したのかな?」
俺は唯一よくわからなかった事を尋ねてみる。魔族がわざわざそんなことを吹聴する理由が見当もつかなかったのだ。
「それは、わからないんですね。なるほどなるほど。いえいえ、とても有意義な会話でした」
「あらら、もう良いんだ?」
何か質問したことで相手に情報を与えてしまったようだ。たぶん、俺の理解力スキルについて何かを調べていたとみて、多分間違いないだろう。
「はい、目的は達しましたから。あとはこの命を、もやしつくすだけです。アレス神より加護を賜りし十三の使徒の十。
名乗りを上げた次の瞬間、幼女の体が火を纏う。それは、単なる発火ではなかった。
「フレイム!」
レーシュがその姿を見て叫ぶ。それは、非常に厄介な、炎系のモンスターの総称だった。
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