第15話 王城の前にて

「これは、不味いな……」

「どうされたのですか、カイン様」


 王城近傍へと至った俺たちは、ちまちまとモンスターと下級魔族を殲滅しながら、王城の中へと侵入を試みていた。


 モンスターたちの激しい抵抗。ここのモンスターは簡単に対処できる。しかし、王城の城壁を利用したモンスターたちの反攻に、王城に、なかなか侵入出来ないでいた。


 その抵抗具合に、俺の理解力スキルが反応する。


「これは、可能性なんだが……あっ、ほぼ、確定ってぐらいの確率はあるよ──」


 俺は城壁攻略をいったん中断して、そんな前置きを、レーシュたち三人に告げる。


 わかってますと、真剣な顔で俺の言葉に頷いてくれるレーシュ。

 アルマとセシリーも異存は無さそうだった。


「この抵抗は時間稼ぎだと思うんだ」

「た、(確かに私もそれは感じました。でもそれは魔素の網の反転に必要な時間を稼ぐためとすれば変なことではないのではないですか?)」


 戦闘慣れしているアルマは気づいていたらしい。


「あっ……」


 逆に戦闘経験はそれほどでもないが、反転の儀式の知識があるレーシュは、ここまでの会話で気づいたようだ。


「魔素の網の反転には、どんなに少なくともあと数日はかかるはずです。ということは……」

「そう、反転の起点はすでに王城にはないんだと思う」

「おとりってことですかっ! さすがカイン様。素晴らしい洞察ですねっ」


 大人しく推移を見守っていたセシリーが、大袈裟に誉めてくれる。


「でも、どうしますか? 起点を運んで逃走しているはずの敵を追って、王城をこのままにしておくと……」

「そう、背後をつかれて挟み撃ちに合うかもしれない」

「そう、ですよね……」

「なので疲れるから、あまりやりたくなかったんだけど──」


 そういって、俺は自分の考えを告げる。

 その内容を聞いて、俺のことを心配そうに見つめるレーシュ。

 アルマは、冷静に頷いて肯定してくれる。

 感情表現がオーバー気味のセシリーは、驚いた様子と感嘆した様子が半々ぐらいだ。


 しかし誰からも反対意見は出なかった。


 俺は三人の反応を確認すると、告げる。


「よし、少しだけ時間がかかるから、申し訳ないのだけど、その間護衛をお願いします」

「もちろんです」「ま、(任せてください)」「了解ですっ」


 そういって剣を構えて俺の前に仁王立ちになるアルマ。そっと横に寄り添うレーシュ。

 セシリーも錫杖を振り上げ、元気いっぱいだ。


 その様子に心強さを感じながら、俺は魔法の準備を始める。

 王城ごと、ここら辺一帯を更地にしてしまう魔法を放とうと安物の指輪を光らせ始めた。

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