第12話 王都へと至り
「すっかり、変わり果ててるな……「種火」からの、「複製」っと」
ビヨンド王国の王都のすぐそばまで来ていた俺たち。王都はすっかり様変わりしていた。遠目に見える、荒れ果てた建物の残骸に、そこかしこにたむろするモンスターたち。
ちょうどいまも、行く手を阻むグレーウルフたちを俺が焼き払ったところだった。
モンスターは基本的には見つけたら倒しておくのが無難だと俺は思っている。やり過ごすのも出来るだろうけど、そのせいで被害が増えたら目覚めが悪いので。
「カイン様、あまりご無理なさらないでください。お体が持たないですよ」
「心配してくれてありがとう、レーシュ。気をつけるよ」
レーシュは付き合いが長いだけあって、俺の魔法の使い方とか苦手なところとかをよく知っていた。
魔法を使うと、主に精神的に疲れることとか。
──最初にレーシュに俺の欠点がばれたのって、確か事務仕事が立て込んでて、数日王宮で泊まり込んで働いていた時だっけ……
「あの広範囲に広がった無数のモンスターが、一瞬でしたっ。カイン様、すごいですっ。あっ、第二波、きましたっ」
俺がそんな転移してきたばかりの昔のことを思い出していると、セシリーから声がかかる。
セシリーは若いのに、冒険者としてなかなか有能だった。自分の役割の把握が速いし、視野も広い。
回復師として後方支援に慣れているのだろう。いまも誰よりも速く声を出していた。
「わ、(私が出ます。カインは少し休んで)」
飛び出すように駆け出したアルマ。それを援護するように、レーシュが矢を放つ。
戦闘のグレーウルフの片方の眼球を正確に射抜くレーシュの矢。
出鼻を挫かれたグレーウルフを、アルマが危なげなく、次々に屠っていく。
「ふぅ(ふぅ、片付きましたよ、カイン)」
全てのグレーウルフを片付けたところで、俺の方へと戻ってくるアルマ。
──アルマって、ちょっと犬っぽいところあるよね。こうやって誉められに戻って来るところとか。
「ご苦労様。よくやったね」
無言のアルマ。しかし、にやけそうになる顔を必死に抑制しているのは一目瞭然だった。
まるで、見えない尻尾をブンブンと振るっているかのような幻覚すら見えてくる。
「カイン様、いきましょう」
「そうですっ! さ、はやくはやくっ」
俺がアルマと話しているとレーシュが割り込むように入ってきて、腕を引っ張られる。
さらに、セシリーが俺の背中を押す。
そうして追いたてられるようにして、俺たちは王都へと立ち入ったのだった。
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