第6話 ダンジョンの中へ
「あったな」
探していたダンジョンを前にして、俺は左右を見る。
──確かに遠くに離れないように二人に言ったけど。こういうつもりじゃは、ないんだが……
俺の左右にぴたりとくっつくように立つ、レーシュと、アルマ。
流石に二人ともそれぞれの武器を軽く構えて警戒の態勢だ。しかし俺にくっついた体勢で、満足に武器を扱えるのかという疑問はわく。
──いや、この二人ならやりかねない。身体操作スキルをもつアルマは、戦闘中は特に常人離れした体捌きしてるし。レーシュも、曲芸射ちみたいなことも出来るみたいだからな……
俺は二人に何と告げるか迷う。俺自身も魔法の行使には大袈裟な動作は必要がないので、戦いにくいから離れて、と言うのも変だろう。
「……二人とも、ダンジョンの経験はどれぐらいある?」
「お恥ずかしながら、ほとんどありません」
「じ、(地元に、ダンジョンがあったので、子供の頃から潜ってました)」
澄まし顔で告げるアルマ。レーシュは少し悔しそうだ。
「なるほど。じゃあ、レーシュには軽くレクチャーしといた方がいいね」
俺がレーシュの方を向いてそう言うと、レーシュはぱっと顔をほころばせた後、逆に澄まし顔になる。
反対側ではアルマが、まるで絶望する出来事があったかのようにポカンと口を開けてこちらを見ている。
──アルマがくるくる表情が変わるのはもとからだったみたいだけど、レーシュもなんだか王宮に居たときより生き生きしてるよな。アルマの影響かね。
良いこと、だよなと思いながら、俺はレーシュにダンジョン内での立ち回りについて軽くレクチャーするのだった。
◇◆
「そうそう、この調子でいこう」
ダンジョン内での数度の戦闘を終えた俺は、レーシュとアルマの二人に声をかける。
ダンジョンは標準的な洞窟型で、現れるのもグレーウルフか、時たまその上位個体のブラックウルフがちらほら。
初心者向けダンジョンとしては異常事態といえるモンスターの強さだった。確かに、突然ブラックウルフに襲われたなら、俺たちが探索をしているような冒険者パーティーであれば負けてしまう可能性は高い。
しかし、俺たち三人には、ブラックウルフぐらいなら危なげなく倒せていた。
──このまま、順調だといいんだけど。
何匹目かの倒したブラックウルフの魔石を回収したときだった。
それがフラグだった訳ではないだろうが、アルマが短く告げる。
「か、(カイン、あれを)」
「──ああ。確かにパールから聞いていた方たちと、身なりが一致するな」
ダンジョンの床に横たわる、人間の亡骸。モンスターに荒らされているそれを手早く確認する。
「……一人、少ないようですよ」
「お、ほ、こ(奥に、逃げた形跡があります、ほら。ここ)」
俺たちは顔を見合わせると、互いに軽く頷く。アルマの示す形成を追ってさらにダンジョンの奥へと踏み出すのだった。
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