第二章

第26話 魔界のダンジョン

 今朝のブリーフィングで興味深い話がギルマスからもたらされた。


 ダンジョンというのは、基本的に魔界には発現しない……らしい。

 それが、どうやら初めて魔界にダンジョンが発現したらしいという未確認な情報だった。


 何でもダンジョンというのは、魔界から漏れでた『闇の魔素』が凝縮していって核になり、そこを起点として発現するらしい。つまり、より濃い魔素が常態化している魔界にその核が形成される訳がない……という事らしい。

 いや、異世界人のオレにはまるで意味が判らないのだが。


 部長会議(各部門の長も参加した少し大掛かりなブリーフィング)に掛けるかとの声もあったが、もう少し情報を収集しようという話になった。

 そこで、ギルマスと共にマータが暫く冒険者ギルドに出向する事になった。

 魔族との交流は今後の課題でもあった。冒険者ギルドを拠点に少し手を伸ばしてみるのも良いかも知れない。



 そんな訳でマータが不在となったので彼女が担当していた『新人の訓練』をオレが見る事になった。

 竜騎隊の拡充、更にダンジョンのパーティメンバー(つまり冒険者)の拡充、この辺りが当面の課題である。

 そこで『情報大臣(いや、仮にだが)』としてイクイクを連れて訓練場に遣ってきた。

 訓練場と言っても、まあ竜騎隊の竜舎前の広場にそれっぽくオブジェというか弾除けの岩などを配置した間に合わせだ(笑)。


 そして、タダノ・ヒメノ屋敷の新人の最初の業務は『訓練の標的』となる事である。

 ただし、当然だが女性であるからして、頭部(いや、顔面)の防具は最強度の防護魔法を附与されたフルフェイスの『兜』を用意されている。

 しかし、『本気の標的』足らんが為に痛覚は残されている。

 そして、これまた当然な事であるが『標的』である新人には反撃の権利が保障されている。

 更にここ数日の『標的』が、レベル685のギルマスだった事は、アタックメンバーにとってアンラックだったのか? いや、3分も掛からずに10人全員が倒されるという貴重な体験ができて〝幸いだった〟とも言えるのではないか(笑)。


 つまり、今日からは『標的』はギルマスではない。

 本日のアタックメンバーは冒険者が3人、守衛が2人、竜騎士が2人、メイドが3人の10人だ。その、微妙にヤル気が見え隠れする10人の相手は……

 シルク・ラク(例のビキニアーマーだ)、キクル・クル(控えめなローブだ)、ミク・マルク(メイド長だ)の3人だ(いや、既に『標的』足るべき新人ではないのであるが(笑))。

 中々良さげな選抜だなあと(イクイクが選抜したらしいので)本人を見ると、まるで見当違いな話が返ってきた。

「最近、メイド長の機嫌が悪いにょ!」

 既に戦闘が開始された訓練場とイクイクの顔を交互に見遣って話を続ける。

「原因は?」


「夜のローテの不満にょ(笑)」


(あ、訊かない方が良かった話題だ(汗))

 基本的に「ヒメ+チンチン」と「マータ+イクイク+チチ」のローテは週1で固定。残りの5日を10人ずつで廻していた頃は良かった(笑)。しかし、現在180人を超えているからして、10人ずつでも3週に1度が妥当なトコロである。

「トノが〝マグロ〟なのが不満だそうにょ(笑)」

(オレに死ねと?)

「なら、イクイクとメイド長を交換するかにょ?」

 イクイクの口真似で言ってみる。

「無理っ!」

 速攻で拒否られた。


 尤も、メイド長はご母堂さまの〝お渡り〟に警護の名目で付いてきて、素知らぬ顔で〝お流れを〟とか言って交じってくるのだが?

 まあ、けしからんので一度〝例の魔道具〟で、ひい、ひい、言わせてやったのであるが。



 処で『新人の訓練』だが『標的』側が押し気味だ。

 本日の戦闘の形式は攻撃魔法なし(防御魔法はOK)の木剣による打ち合いだ。

 ラクには得意の剣撃である。しかも、背後から慣れ親しんだクルの防御魔法が飛んでくる。この二人のタッグは新人とは言え一日の長があった。

 一方、メイド長は確か攻撃魔法の遣い手だった筈だが(それを封印されて)、自身の身体に硬化魔法を掛けて果敢に木剣を振り回していた。いや、意外と太刀筋が決まっている。まあ、考えてみれば『第七皇女殿下』の専属メイドであってみれば〝お側衆〟としての戦闘訓練も受けていたのだろう。


 まず、メイドが3人が、次いで冒険者が3人が潰された。

 残った4人の内、戦闘力の一番強そうな竜騎士がメイド長を押さえつつ、残りの3人でラク・クルのコンビを潰しに掛かった。

 というより、クルをまず潰す作戦だったようだ。2メートル超えの体格の良い守衛に脳天をかち割られて(いや、最強度の防護魔法を附与されたフルフェイスの『兜』だから『痛覚』だけだが)クルがダウンした。

 そのまま3人掛かりでラクを潰しに掛かった。ただし、ラクも守衛1人と竜騎士1人を潰した処で力尽きた。

 残りは2メートル超えの体格の良い守衛+戦闘力MAXの竜騎士 VS メイド長である。勝負は決したかに思えた。

 しかし、竜騎士と木剣で鍔迫つばぜり合いをしていたメイド長の背後から切りつけた守衛に思いあがりがあった。

 鍔迫つばぜり合いをしていた木剣に瞬時に硬化魔法を掛けて相手を跳ね飛ばし、そのまま木剣を退いて柄で背後に迫った守衛の鳩尾みぞおちを突いたのだ。

 身体を〝くの字〟にして膝をついた守衛を木剣を握り直して潰したメイド長が最後の1人になった竜騎士に迫る。そのスピードが半端ない。硬化魔法だけでなく俊足魔法も掛けていたのだろう。

(多分、攻撃系ではないのでOKだろう? いや、攻撃系か?)

 イクイクを、ちら、見ると『バツ印』をだしていた。アウト、だったようである。

 そして、いつチェンジしたのか彼女のエプロンドレスが超ミニ仕様になっている。こんな魔法があるのかと呆れたが、確かにスピードを重視するなら通常の長いスカートは邪魔になるだろう。

 こんな、二癖も三癖もあるメイド長の相手としては『戦闘力の一番強そうな竜騎士』といえど相手にならなかったのであるが。


 あっさり最後の1人を切り伏せたメイド長が、オレの前に膝を折り、木剣の向きを変えて差しだした。まるで、聖騎士の所作を見るが如し(笑)。

 つまり、露骨にご褒美を気満々に見えた。

 木剣を受け取り(こんな所作だよなあ、と思いながら)剣先でメイド長の肩を二度叩いて、彼女の手を取り立たせた。

 手を恋人繋ぎにしてやるとメイド長が頬を染める(こいつめ、可愛いじゃないか(笑))。

 しかし、反則を含むスタンドプレイには、きっちり、が必要だろう。

「イクイクや、メイド長を〝仕置き部屋〟に連行するのでそっちの腕も拘束するように」

「了解にょ(笑)……ひい、ひい、言わせるにょ♡」

「な、な、何故でございますぅ?……『戦闘訓練』の勝者はご褒美を戴ける筈ではございませんか?」

 左腕を拘束したイクイクが笑いながら言った。

「自分の胸に訊いてみるにょ(笑)」


「ひい、ひい、言わせる……って、、かな?」

「ギルマスさまが泣いて許しを請うていらした……?」

「恐ろしや(笑)」

「莫迦ね、ラクは……ギルマスさまは、実は喜んでいらしたのよ♡」

「いや、そんなはず……」

「これだから、お子ちゃまは(笑)」

「な、なんだよぉ……ちょっとばかし先に彼氏ができて、ぱこ、ぱこ、を経験したからってぇ!」

「言い方(笑)……だから『お子ちゃま』だって言うのよっ!……メイド長さまだって、嫌がってるフリだから、本心では期待してるのよ♡」


(聞こえてるんだが(笑))


「そうなのか?……ミクメイド長?」

 わざと名前で呼んでやる。

 恋人繋ぎの手が微妙に震えたのだったが(笑)。



 そのまま3人でオレの部屋まで(念の為に書き添えておくと〝仕置き部屋〟などは無い(笑))遣ってくると、何故か『猫耳』のポプルル(『厨房担当長』)とナコチ(『掃除・洗濯担当長』)が待って(?)いた。

 そして、2人はお尻を向けると、


   ズンチャチャ、ズンチャ、

       えいっ、えいっ、えいっ

   ズンチャチャ、ズンチャ、

       はいっ、はいっ、はいっ


 あの尻振りダンスを披露してみせたのだった。

(何故だ? どうした?)

 首を捻るオレにイクイクが耳打ちしてきた。

「構って欲しいにょ♡」

 確かに、この屋敷に参加した時の約束通り(というか、公言通り)2人は〝裸エプロン〟で仕事をこなしている。それは彼女たち2人だけだ。

 同じ厨房担当・掃除洗濯担当のメイドたちは、肌色のタンクトップに同色のショートパンツにエプロン着用という〝ズル仕様〟だ。

 そうであれば〝健気仕様〟の2人にもっと構ってやるべきだった。彼女たちの柔尻を触ってやり、揉んでやるべきだった。

 オレはメイド長の拘束をイクイクに任せて2人を抱き寄せた。

 そのまま、両手で2人の柔尻を揉みしだく。勿論、尻だけでなく尻の谷間にも指を差し込み丹念に弄ってやった。

 やがて、とろん、とした顔のナコチが目を瞑って唇を突きだしてきたので、尻を揉みながら唇も奪い口腔もまさぐり倒す。

 当然のようにポプルルもオレの服の袖を引いてオネダリしてくる。イクイクに先に部屋に入るように指示してこっちも、たっぷり、可愛がってやった。

「明日の朝、2人で部屋においで♡」

 そう言って2人を返したオレは部屋で待つメイド長の折檻を遂行したのだった。

 ついでに愉しそうにメイド長を拘束していたイクイクにも〝魔道具電マ〟の洗礼を喰らわせたのだった(笑)。



 この後、何故かショートパンツをズラして履いているメイドが増えた。

 通りすがりに柔尻を触ってやると「や~ん、お殿さまのエッチぃ♡」などと桃色の声をあげたりするのだが……良く判らない(笑)。

 まあ、当初の5人のメイド以降『第七皇女殿下屋敷』から続々とメイドが遣ってくるのだが、何故か全員20歳はたち前の未経験の美少女ばかりなので柔尻も、ぷり、ぷりん、しているし文句はまるでないのであるが(笑)。


 劃してタダノ・ヒメノ屋敷は今日も明日も、並べて事もなし…………に、思えたのだが。


          *


 数日後 ――

 朝の定例ブリーフィング中に門番が駆け込んできたのだった。

 門前に高位と思える魔族の美女が現れ、家長に取次を求めてきたのだった。


 オレはマータとイクイクを伴って屋敷の門へ急いだのだった。

 ヒメとチンチンと大奥さまは地下シェルターに避難して戴いた。



            【つづく】

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